長崎サッカーマガジン「ViSta」

【アカデミーレポート】名門復活?新生?国見の全国出場に思うこと

昔のスポーツ後進県と言われていた長崎で、彼らの活躍がどれほどまばゆかったことか。彼らが高校三冠を達成した日の夕方、体調不良で寝込んでいた私は長崎新聞の号外をもらいに長崎駅へ出かけ、家族に呆れられながら号外を読んだものである。それから2年後に自作した拡張性と基本スペックの高さにこだわったPCには、「平山(相太)君」と名前をつけた。

当時、何をやっても中途半端だった自分のような人間に、大きな影響を与えてくれたのが国見のサッカーだった。その国見が久しぶりに全国の舞台に戻ることになった。

髪形は丸刈りではなく少し伸びた。長いボールと走力中心だったスタイルは、個のスキルを生かしたポゼッション中心となった。常に絶対的な存在感を放っていた監督が先頭を切って進んでいくのではなく、コーチたちと連携して指導していくのが今のスタイルだ。お馴染みだったユニフォーム・・青と黄色の縦縞は(あの細さの縦縞は大商大OBのみという不文律があるため)少し太目になった。(国見には大商大出身のコーチがいるので、何とかなるかもしれないが・・)

3年前までコーチで、その前は国見の監督だったこともある小嶺栄二さんは、「あの(全盛期の)国見のサッカーは、小嶺(忠敏)先生のスタイルだった。そこを勘違いしてはいけない。先生がいなくなった今、新しい国見のスタイルを作り出さねばならない」と語っていた。その後を継いだ木藤健太監督も「昔の国見はすごかったけれど、それはそれ。自分たちは新しい国見を作っている感じです。だから、名門復活という感じではなく、新生国見ですね」と語っていた。

そのとおりである。

圧倒的な実績を残した小嶺先生の作ったものから、新しい流れを作るために彼らは悩み、苦しみ、試行錯誤を繰り返してきたのだ。彼らの作り上げた『新生』は彼らの努力そのものである

3年前の選手権県予選決勝戦で、小嶺忠敏監督率いる長崎総大附属に敗れたとき、すでに病のために酸素ボンベを持ち歩いていた小嶺栄二コーチは、「どうすれば、勝てるのか」と呟いた。その1週間後に亡くなった小嶺栄二のぶんまで、木藤健太監督とコーチ陣はその問いに悩み、試行錯誤し、ときに弱気になり、ときに希望を持って3年間、答えを積み上げてきた。

「1年生から3年生まで声をかけて集めて来た子たちなんで、これで選手権に出場できなかったら、俺、責任を取って辞めますよ」

今年、会うたびに冗談ぽく・・しかし本気で国見の田上渉コーチはそう言っていた。もともと田上コーチは国見での同級生だった小嶺栄二コーチが病で長くないと知り、「栄二を助けたい」と、V・ファーレン長崎を退職直後に国見の指導に入った身である。今年の決勝戦を戦うとき、3年前と同じ結果は絶対に繰り返したくはなかったろう。

国見のコーチ陣はサッカーに対して恐ろしく真面目だ。そういう人間を意識して集めたと木藤監督が話していたことがある。だからこそ、公立校のサッカー部でありながら、ライセンス持ちのコーチが多く集まるのだろう。彼らは決して好待遇の商売としてやっていない。ボランティアと言っていいほどの条件で、溢れるほどの情熱をささげ続けた結果が今の国見であり、今回の結果なのだ。

そんな彼らだからこそ、決勝戦後のスタンドから国見の部員たちは「オ・バ・ラ(小原勇人)」、「テ・ヅ・カ(手塚昌希)」とコーチの名前をコールしたのだろう。

昔のように全国へ出場するのが当たり前ではなくなった。
それでも、負けて立ち上がることは忘れなかった。

昔のように「負けるはずがない」という強者のメンタルはなくなった。
そのかわり「絶対に勝ちたい」というチャレンジャーのメンタルを手に入れた。

おそらく、全国の舞台に立つ彼らは、昔の生徒たちより何倍も緊張するだろう。きっとコーチ陣も監督も関係者もみんな緊張するだろう。優勝が毎回のノルマだった当時と異なり、「まずは1勝」が最初の目標だろう。やはり、昔の国見とは違うのだ。

昔と違い、来年も彼らが必ず選手権に出られるかはわからない。何しろ、創成館はもはや押しも押されもせぬ県の強者だ。長崎日大も好タレントが多い。長崎総大附属もリベンジを狙っているだろう。新鋭の九州文化はますます力をつけてくるだろうし、鎮西も佐世保実業も手ごわく、南山も海星もいる。それらの学校も国見に負けず劣らず魅力的で可能性を秘めている。

だからこそ、今回の選手権というチャンスを存分に味わってきてほしいものである。

ただ・・、

それでも・・、

やはり・・、

われわれにとって国見は国見である。

『新生だ』とわかっていても全国に立つ国見に「おかえり」と言いたい人は多いだろう。強い国見の記憶が勝手に脳内で再生される人も多いだろう。そんな気分にさせてくれるのが青と黄色の縦縞なのだ。

昔のような絶対強者じゃなくても、

縦縞が少し太くても、

丸刈り頭じゃなくても、

それはずっと変わらないことなのだ。

reported by 藤原裕久

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