【ゆきラボ】隣り合わせたご婦人から急な頼み事/後半は次男と24時間走に出た話
こんにちは!ドイツの日常コラム「ゆきラボ」です。
基本は自転車生活の私ですが、かさばる荷物が多かったある日、たまたまトラムで移動していると、隣に年配の女性が座りました。イライラした様子で、電話で何事か話しています。ドイツでは公共交通機関の中での電話は許容範囲。高速鉄道ICEなど一部では通話禁止車両もありますが、たいていはみんなマナーモードにもせず、普通に電話をかけ、電話に出ています。
イメージ https://www.photo-ac.com/
というわけで、おばあちゃんのことは特に気にせず、自分のスマホに目を落としていると、突然ぬっと目の前に紙が差し出されました。
「ごめんなさい、今日メガネ忘れちゃったの。ちょっとここの数字読んでくれる?」
私「えええ?」
「ここ、ここ。この左上の数字。なんて書いてあるのかしら」
私「ええーーーーと、〇〇〇〇〇ー〇〇〇〇ですね」
「えっ、なあに?もう一回言ってくださる?」
私「〇〇〇〇〇ー〇〇〇〇(ゆっくり大き目の声で読む)」
「〇〇〇〇〇ー〇〇〇〇(さらにゆっくり大声でおばあちゃん復唱)それからねえ、あと生年月日。どこかに書いてあるはずなんだけど、どこかしら」
書類の内容からすると、電話の相手は保険会社で、おばあちゃんは何かの手続きをしているところらしいのですが、契約者番号だの生年月日だの、個人情報が丸見えだし、周囲の人にも丸聞こえです……おばあちゃん、そういう大事な電話はトラムの中ではかけないほうが……
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と思っていると、今度はスマホの画面が差し出されました。
「もう、話の途中で切れちゃった!ねえ、今話してた番号にもう1回かけるのって、どこを押したらいいのかしら?あなた、かけ直してくれる?」
ええええええ……と思いましたが乗りかかった舟です。リダイヤルを探してポチっと押しました。が、話し中で繋がらないようです。
「最近はなんでもこうなのよねえ。電話が全然つながらないし、つながっても自動音声で、まず何番を押せとかなんとか、人のいるところに繋がるまで延々待たされるし」
「あー、それはわかります。手続きでもなんでもオンラインでやれっていうけど、本当に困ってるときにちゃんと助けてもらえるまで、すごく時間かかるんですよね」
荷物を送りたいのにスマホのアプリから荷物ステーションを使う方法がわからず、有人の営業所を探して車で走り回ったという年配の人の話を聞きました
以前コラムでも書きましたが、社会の様々な場面でオンライン化・無人化・自動化が進み、ある面では私たちもその便利さにあずかっている一方で、不便になった面も、サービスの質が落ちたと感じる面も確実に出てきています。現役で働いている世代の私ですら不便を感じるのですから、高齢の方にとってはなおのことでしょう。
自分自身についてはある程度アップデートして、変化に対応していけるようにしたいと思う一方で、本来はデジタルの世界の用語である「アップデート」という用語が生身の人間にも適用され、変化できることを当たり前に求められるのも、よく考えてみればどうなんだろうな……と思います。人手を借りることを煩雑だとか効率が悪いと思う人もいれば、人が応対してくれることで得られる信頼感を求めている人もいます。合理化という名前のもと、「困ったら誰かが助けてくれる」という心の拠り所みたいなものがコストとしてとらえられ、バサバサと切り捨てられていくように感じるこの風潮が、正直ちょっと不安な今日この頃です。
そんな世知辛い世の中ですが、コラム後半は、欧州選手権の裏で次男と参加した、とあるスポーツイベントをご紹介します。
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