【指導者の挑戦】もめてます。来季の編成に対して新しい育成部長の唐突なアイディアで現場の指導者が混乱中
▼ 新シーズンは大丈夫?
シーズンが終わることは、新しいシーズンの始まりでもある。
僕が監督を務めるSVホッホドルフU15セカンドチームは様々な難局をみんなの力で乗り越えて、無事にシーズンを戦いきることができた。戦績的にはなかなかに厳しい数字が残ったけど、考えさせられることが多々あった事実から、ものすごくたくさんのことを実体験で学べた貴重な機会だったと思っている。
今季についての振り返りは次回のコラムでじっくりと取り上げるとして、今回は来季クラブ内の指導者陣容に関して、過去最大級にもめたことを書こうと思う。
グラスルーツクラブは基本的にボランティアが中心。お金は発生しない。僕ももらっていない。でもそれは《お金をもらわなくても何の問題もない》ということではなく、《お金に代わる大事なものをえることができる》から成立する関係性だ。
大好きなサッカーを通じて、子供たちの成長と向き合い、いい時期もよくない時期もともに過ごし、互いに影響を及ぼし合いながら、つながり合いを深いところで感じいる。
負けた時の悔しさも、うまくいかないときのもどかしさも、手ごたえをつかんだときの喜びも、勝った時のうれしさも、自分一人では得ることができない大きな感情の爆発が生まれるからサッカーは素晴らしい。
そういったスタンスで僕は育成指導者を24年間やり続けているわけだけど、ちょっと今回は初めて「ここで監督やるの辞めようかな」と思うシーンがあった。それも一度ではなく何度も。
▼ 育成部長交替で不穏な空気
今年の3月に育成部長が変わった。以前の育成部長は本職が学校の先生ということもあり、教育的なアプローチを大事にするし、オーガナイズが丁寧だし、対話を重視するし、クラブとしての成長を考える人だった。
僕にも「自分達のクラブでも一貫したコンセプトが必要だから助けてほしい」とメッセージが来て、プロジェクトチームを作って、ああでもないこうでもないとディスカッションを何度もした。
ただ本職に加えて育成部長としてもフル稼働して、U19で監督をして、審判もしてだから、さすがに疲労がたまってしまった。自分が動くことでクラブがうまくいくならといろんなことを兼任しすぎていた。その働きぶりは僕らもよくわかっているから、心からの《お疲れ様》を彼には送ったものだ。
さて、新育成部長に30代前半の若い指導者が立候補し、総会で承認された。で、端的に言うとこの新しい育成部長と僕が合わない。
就任後しばらくして指導者メッセージグループにこんな連絡がきた。
「来季からは飛び級を基本的に禁止にする。各学年でチームを作ること。以上。ディスカッションをするつもりはない」
僕らはざわついた。というのも、それではうまくいかないところがたくさんあるからだ。各学年にそれなりの人数がいて、それなりに経験のある指導者がいて、それなりにまとまりを作り上げることができるなら、機能もするだろう。
でも僕らは小さな街クラブだ。各学年の人数もクオリティもやる気だって全然違う。トレセンに選出される子どもたちがたくさんいる学年があれば、そこまで突出した子はいなくてもサッカー大好きな子がたくさんいる学年もある。
特にU12/U13チームはこの《指令》に戸惑っていた。U13年代はたくさんいるけど、そこまでサッカーがうまい子が多いわけではない。逆にU12世代は人数はそこまで多くないが皆優れた資質を持っている子たち。加えてその下のU11世代にもタレント性を感じさせる子たちがちらほらいる。
レベルの合わないリーグで試合をして大敗続き・大勝続きになるのは、フェアな環境という点でも、子供たちの成長を考えるうえでも最適なやり方だとは思えない。
さらにU12/U13総監督の息子は本来U11。U12/U13年代に指導者をやる人がいないから、息子とともに上の学年に上がることで対応していた。
前述したように街クラブではボランティア指導者が中心なので、質も量もばらばらだ。みんな自分の仕事がありながら、週に2回のトレーニングと週末の1試合に参加できる時間を作っている。それでも彼らがやるのは一つに息子と一緒の時間を過ごすためだろうし、そしてサッカーを通じて社会性を感じ、仲間意識を感じ、一緒に戦う素晴らしさを感じられるからだ。
U12/U13監督とコーチはもう数シーズンにもわたって、子どもたちと向き合い、いろんなイベントをして、子供たちが成長するためにを考えて取り組んできている。その中で最適なチーム分けをして、それぞれが試合にできるようにと熟考してきている。
そうした指導者の意向を省みずに、突然《上意下達》で来られたらさすがに困る。
ここは数多くに指導者が猛反発したことで、しぶしぶ了承を得ることができたが、「いや、サッカー協会がそうして欲しいといってきているんだよ」というのを理由にされるとさすがにこちらも納得ができない。モデルケースと現場とは違うのだ。
現場を知らずにモデルを取り込むことなどできない。
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