【きちルポ】クリスティアン・シュトライヒ②プロ選手が驚愕するほど厳格で、氷解するほど柔和。口癖の《サッカーをしよう》が意味することとは?
▼ 厳しくも暖かい指導者
SCフライブルク一筋だったクリスティアン・シュトライヒが今季限りでクラブを去ることになった。
ジャーナリストとしていろんな話を聞いてきた僕だが、それ以前にSCフライブルクの育成アカデミーでの研修で、元日本代表FW矢野貴章選手の通訳で、そしてA級/プロコーチライセンス所得者対象の指導者講習会で出会うことができた。さらに僕も毎年参席いている国際コーチ会議にゲスト講師として登壇したこともある。
あれは14年ブラジルの地でドイツ代表が4度目の優勝を果たした後のことだった。ドイツ中がその熱狂に浮かれていたころ、壇上でシュトライヒが「大切なのは今なんだ。『すごかったね』で終わるのではなく、明日のために成長しなければならないんだ。若い選手たちへのサポートをより良くするために自問自答していかないと」と謙虚に自分たちを見つめなおすことの大事さをアピールしていたことを思い出す。
事実、その後ドイツがぬかるみにはまり込んだしまったことを考えると、この言葉の重さがより鮮明に感じられるではないか。
シュトライヒの人柄についてはいろんな人から話を聞く。指導者仲間で元1.FCケルン育成統括部長を務めたことがあるクラウス・パプストがこんな話をしてくれたことがある。
パプスト「この前フライブルクでプレーするルーカス・キューブラーと電話で話をしたんだ。キューブラーはケルンにいた選手だからよく知っているんだ。『シュトライヒってどんな監督?』というのを聞いてみたんだ。
『たぶん普通の人では想像できないくらいの要求を選手にしてくるんだ。それを毎回のトレーニングで。絶対に妥協がない。だからうまくいっているんだと思う』
そんな風に言っていたんだ。プロの選手にそこまで言わせられる指導者はそうはいない。まさに尊敬すべき指導者だ」
パプストの談話にもあるようにシュトライヒの要求は非常にプロフェッショナルだ。日本代表FW堂安律もことあるごとにそのことを口にしている。とても厳しい。さぼることを一切許さない。一つできてもそれで満足させずに、すぐ次へのアクションに移ることを求め続ける。
でもとても人情味のある御仁なのだ。交代で下がってきた選手を抱き寄せる。言葉をかけることを忘れない。試合に出られない選手にも熱く励まし続ける。
試合に出られないことに納得する選手はいない。それでもフライブルクではその不満を口にしたり、チームの雰囲気を害したりする選手はいない。ここでの取り組みが自身の成長にどれだけプラスになるかみんなわかっているからだ。だから選手は監督の声にいつでも耳を傾ける。だからどんどんチームが成長していく。それがクリスティアン・シュトライヒという監督の素晴らしさだ。
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