中野吉之伴フッスバルラボ

【キチ日記】大忙しの4月。引っ越しに取材行脚にサッカーにトレーニング

▼ シーズンラストスパート

4月は大変だった。

まずは急遽引っ越しを余儀なくされたこと。幸いにも大家さんから2件隣のアパートを斡旋してもらえたので、部屋探しの面倒さはなかったのは本当に良かった。とはいえ、4人家族の荷物を整理し、持ちだし、また備え付けるのは本当に骨の折れる作業。

昨日無事に旧居の最終チェックを終え、カギを返し、新居での新生活がスタートした。

5月1日はメーデーで祝日。一日家族でゆっくりとしたいところだが、今日、明日で出張に。

各国リーグ戦、カップ戦は佳境を迎え、優勝争いから残留/昇格争い、さらにはヨーロッパカンファレンスリーグ(UCL)、ヨーロッパリーグ(EL)、チャンピオンズリーグ(CL)も準決勝と、過密日程+濃厚対戦の連続でどんどんスケジュールが進んでいく。

昨日のCLバイエルン対レアル・マドリードもできたらもちろん取材に行きたかったが、部屋の明け渡し日となれば、そちらを優先しないわけにはいかない。ただ今日のドルトムント対パリの取材申請は無事に下りた。ドルトムントはメディアキャパが意外に多くはないので、こうしたトップゲームになると外国メディアは足を切られることも少なくはない。素直にうれしい。

ドルトムントにとってCL準決勝は決勝進出を果たした13年以来。いろんな角度から注目点があるとは思うのだが、いかんせん日本メディアには需要がないのが本当に残念。

日本メディアに、というよりは、海外サッカーの現地詳細情報への需要がないとみられているのが本当のところなのだろう。

ただ需要がないというのをどのようにとらえるのかということも今後もっと考えられるべきことだろうとは思う。PV数ですべてを評価されるのだとすると、そりゃ欧州サッカーはコンテンツとして日本人全てが諸手をあげて歓迎するものではない。どんなに頑張ってもPV数が爆発的にとれるなんてことはない。

日本人選手を取り扱うとしても、毎回毎回だれもが涙する記事なんてかけるわけがないのだ。

長谷部誠選手の現役引退表明記者会見のナンバー記事が多くの方に読んでもらえたのはとてもうれしいし、自分自身も渾身の記事を書くことができたと思っている。

でもあの記事が生まれたのは僕があの会見場に足を運んで、長谷部選手にドイツ語で質問をしたからだけではなく、何度も何度も足を運んで、コンタクトを取って、取材をして、試合を見て、選手と話をして、記者やクラブスタッフとコミュニケーションをとってという積み重ねがあったからだという事実を知ってもらいたいし、それをやり続けるためにはそれなりのサポートがなければできないというところをどうにかしなければならない。

だから欧州サッカーを取り扱う記事にに関しても、「もっと深いところの記事を読みたい」「現地の生の声を聞きたい」という人にとってはドンピシャなはずなのだから、そうしたクリティカルヒット値もどうにかデータ化してもらいたいものだ。

サッカーでもボール保持率やボール成功率、ボールタッチ数やダッシュ数といったデータは一側面しか表していない漠然なものとなりつつあり、どのゾーンでどの時間帯でどんな状況でどんなプレーが行われたかを明確にしたデータが現場では有効活用されつつある。

ボールに触れていなくても試合に影響を与えるプレーの価値を数字化されたものだって生まれてきている。

メディア業界でもそうしたより具体的なデータを基にした展開が生まれてほしいと願うばかり。

それでいうとボランティア指導者の取り組むに関しても、より明確な精査システムがあったら、お互いにとってプラスになるのかなと思ったりもした。

例えばドイツだと育成年代におけるほぼすべての指導者がボランティアでやっているわけだけど、恩恵が全くないわけではなく、年間指導に有した時間に応じてクラブから寄付証明書を出してもらえ、それをもって確定申告で税金控除をすることができる。年間でマックス3000ユーロ分の控除ができるのでだいぶ税金を抑えることができるし、場合によっては還付金も発生する。

加えて《がんばっている》か《がんばっていない》かだけではなくて、より具体的に指導者として何ができていて、何をもう少し大事にした方がいいのか、とか、これだけのことをやっているんだからお金ではないにしても、何らかのサポートを受けられるようにするとかを考えることだって必要ではないかな、と。

▼ 5月の取材予定

見に行きたい試合がいろんなところで行われていて、どこに、いつ、どのように行くべきかのプランニングになかなかに時間を取られる。

ドイツ国内だと

・レバークーゼンの無敗記録がどこまで続くのか?
・伊藤洋輝と原口元気のシュツットガルトはバイエルンを抜いて2位浮上できるのか?
・クリスティアン・シュトライヒ政権が終焉を迎えるフライブルクと堂安律の最後の戦いぶりは?
・長谷部誠の現役ラストマッチはどうなるのか?
・ボーフム浅野拓磨は今季もラストで爆発するのか?
・残留争いに落ち込んでいる板倉滉/福田師恩のボルシアMGは大丈夫か?
・田中碧、アペルカンプ真大、内野貴史のデュッセルドルフは昇格できるのか?
・昇格チャンスが大きいキールの町野修斗はどこできっかけをつかんだのか?
・シャルケは無事2部残留を果たせるのか?
・ハノーファーでレギュラーとして活躍する室屋成はなぜ今もドイツでプレーするのか?
・ビーレフェルトは2年連続降格を阻止できるのか?
・ドイツカップ決勝進出ながら3部降格の危機と戦うイザースラウテルンは生き残れるのか?

といったところがここから数週間で気になるテーマ。全部やるには多すぎるけども…、それでも可能な限り取材に足を運んで、記事化していきたいものだ。

加えて周辺諸国にも興味深い試合が目白押し。

こちらは絞れるだけ絞らないと金銭的に持たない。なんせ1€=170円の時代だ。

自分のスケジュールとにらめっこして、優先順位を考慮しながらシントトロイデン、セルヴェット、グラスホッパー取材にはいけたらと思っている。

特に《岡崎慎司の現役ラストマッチ》は絶対にいかなければならない。

フランクフルト長谷部誠の引退記者会見があまりにも素晴らしかったのは言うまでもないけど、岡崎のこれまでの選手キャリアの輝かしさとそれをなしえるために乗り越えた苦難の数々、引退するその日まで戦い続け、引退後も戦い続けるサッカーとの向き合い方は後進にどれだけ多くの大切なヒントとなることか。

岡崎の一挙手一投足、一言一句に全神経を集中させるつもりだけど、シントトロイデンにはもちろんほかにも話を聞きたい選手がいる。

・伊藤遼太郎は日本代表後のシーズンで何をつかんだのか?
・鈴木彩艶が自身の課題とどのように向き合っているのか?
・出場機会が多くはない中で小川諒也はどのような日々を過ごしていたのか?
・藤田譲瑠チマと山本理人はパリ五輪出場までどのような取り組みをしようとしているのか?

限られた取材時間にはなるだろうが、可能な限り話を聞きたいところだ。

スイス組の常本佳吾と西村拓真には先月初めて取材することができた。「ジュネーブにも来てくださいよ」と西村に言ってもらえたので、今月20日のヤングボーイズとの試合に行こうかと思案中。加えてセルヴェットはスイスカップ決勝にも進出しているので、こちらも大注目だ。

国内カップ戦の決勝は海外メディアの取材申請があまり通りにくいところはあるのだが、トライはしてみる。

あとはグラスホッパーの瀬戸歩夢。川辺駿がスタンダールへ移籍し、原輝綺が日本へと戻り、唯一の日本人選手として奮闘しているが、今季はチームとしても瀬戸本人としても苦労しているようだ。苦しい時こそ学ぶことは多いはず。だからこそ、《どのように今季をとらえているのか》という話を聞きに行きたい。

オーストリアの二田理央のもとにも行きたいし、モラス雅輝ともディスカッションしたいし、ザルツブルクのU18で監督を務める宮沢悠生の雄姿もみたい。

さらにはベルギーで活躍する川辺、町田浩樹(サンジロワーズ)、渡辺剛(ヘント)らも気になるし、オランダ組もたくさんいる。フェイエノールトの上田綺世にも、NECの小川航基にも、AZの菅原由勢にもいろんな話が聞きたい。

時間的に限りがあるし、6月にはドイツで欧州選手権も開かれる。こちらは取材申請はしてあるが、果たして無事に下りるのかどうか。ドキドキが続く。様々な悩ましい取捨選択を前に、断捨離の難しさをかみしめながら、新緑の5月を駆け抜けたい。

さて、次ページでは4月の取材を写真とともに振り返る。現場の雰囲気を感じていただきたい。

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