【現地取材】クラブの英雄が伝説となった日。ニルス・ペーターセンがホーム最終戦で歴史に名を刻んだ
▼ 数々の別れと出会いの舞台
ホーム最終戦は、大きなイベントだ。
シーズンを振り返りつつ、偉業を成し遂げた選手が紹介され、表彰され、そしてこの日で最後となる人と別れる場でもある。
堂安律がプレーするフライブルクでは33節ヴォルフスブルク戦前にいくつかのセレモニーが行われていた。最初に紹介されたのはスタジアムスピーカーのクラウス・ケーン。
1988年以来、実に606試合ものフライブルクの一戦でスタジアムの雰囲気を盛り上げるために声を張り上げてきた。彼の声はスタジアムに欠かせないものだった。それがあってのスタジアムというほど密接な結びつきがある。彼の声はいくつもの感動的な試合と結びついてファン心に残っているのだ。
それだけにファンからは温かい拍手と大歓声が送られていた。
DFB杯決勝戦で惜しくも敗れたものの見事な準優勝を果たした女子チームは選手だけではなく、監督、コーチ、スタッフ全員がスタジアムに招待され、ファンと一緒に喜び合っていた。その中には日本人アスレティックトレーナーでアシスタントコーチも兼任している重村優輝さんの姿も。
スタジアムではSCフライブルク女子トップチームでアスレチックトレーナー兼アシスタントコーチの重村優輝さん(@YShigemu )とも会えました。
先日女子はドイツカップ決勝で惜しくも準優勝🥈ここにもすごい日本人はいます! pic.twitter.com/ctHvsQV8jX
— 吉之伴@🇩🇪サッカー指導者/サッカーライター (@kichinosuken) May 19, 2023
セレモニーはさらに続く。次は今季通算300試合出場を達成した選手への記念品贈呈だ。チリアコ・へーフラーとキャプテンのクリスティアン・ギュンターの2人が笑顔で写真に納まっていた。
その様子を少し離れたところから優しいまなざしで見つめる人がいる。クリスティアン・シュトライヒ監督だ。近くにいたカメラマンがそんなシュトライヒを抜こうとすると、シュトライヒは黙ってその先へ向けて指を伸ばす。そこにあるのは明確なメッセージ。
「カメラに収めるべきは私ではない。へーフラーであり、ギュンターなんだ」、と。
セレモニーはさらに続く。いよいよこの日のメインキャストの登場だ。
今季限りで引退を表明している2選手にスポットライトが当たる。ヨナタン・シュミート、ニルス・ペーターセンの名前がアナウンスされると、スタジアムは割れんばかりの拍手と歓声で包み込まれた。
シュミートはU19からセカンドチーム経由でトップデビューを果たし、フライブルクでリーグ200試合以上に出場し、ブンデスリーガ通算で299試合出場だ。最終節フランクフルト戦で起用されると300試合達成となる。その貢献は計り知れない。
そしてペーターセンだ。
ファンからの愛され方が半端ない。別次元の愛され方をしている。メンバー発表の時にほかの選手、スタッフはコール&レスポンスで終わるが、ペーターセンの時だけ「フースバルゴット!(サッカーの神!)」と叫ばれる。
なぜ、ペーターセンだけがサッカー神なのか。
そこにはクラブとファンと選手と深く結びついた歴史と絆がそこにあった。
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