中野吉之伴フッスバルラボ

【指導論】指導者に必要な要素を長谷部誠のコメントから考察してみる

※ フットボリスタより加筆・修正して転載

▼ 39歳となった長谷部

フランクフルトの元日本代表キャプテン長谷部誠はどこでもいつでも頼りになる男だ。選手としての存在価値は変わらず高い。

15節終了時で4位につけているフランクフルトだが、序盤は調子が悪かった。オリバー・グラスナー監督は4バックシステムを採用しようとしていたが、攻守のバランスが改善されず、失点を重ねる試合が続いてしまう。

だが長谷部をスタメンで起用し、3バックへ変更すると突如チームは安定感を取り戻し、リーグでもCLでも勝てるようになってきた。今月39歳ながら、ピッチに立つといまだトップレベルのパフォーマンスを披露しているから驚きだ。

それだけに昨年秋のCLトットナムとのアウェー戦で膝の靱帯を損傷し、離脱しなければならなかったことを残念がる地元記者やファンは数知れず。そして長谷部離脱後もグラスナー監督が3バックを基本軸とし、チームの戦い方が成熟して生きているのは興味深い現象ではないだろうか。

そうした選手としてだけではなく、引退後の指導者への道も長谷部が視野に入れているのは周知の事実だろう。

1昨年からドイツサッカー協会(DFB)がセカンドキャリアを考える現役プロ選手のためのプロジェクト《パスウェイプログラム》の一環として行われたDFB公認B級ライセンスに参加し、無事合格している。

《選手と指導者は違う》ということはよく言われるし、耳にするが、「長谷部には指導者としての確かな資質がある」というドイツ人関係者は非常に多い。それこそ元フランクフルト監督アディ・ヒュッターが「長谷部は優れた指導者になれる」と太鼓判を押していたのを思い出す。

では長谷部のどういうところに指導者としての資質があるのだろうか。長谷部自身が記者会見で話していた言葉を取り上げながら、その可能性について考察してみたい。

長谷部「(指導者講習会で)育成についてとか、いろんなことを学んでいる。僕にとってとても大事なことです。時々時間があるときにフランクフルトの育成アカデミーへ足を運んでトレーニングをしたり、トレーニングを見学したりしています。指導者は選手と違うというのには、もう気づいている。ライセンスにしても道のりは長い。今のところは引退後もドイツに残るつもりので、監督ライセンスはドイツで取ることを考えている」

「選手と指導者」とは何が違うのだろうか。指導者養成プログラムの中には定期的にU15やU16といったチームで指導実践をすることが含まれているが、そこで長谷部は何を見て、どんなところに難しさを感じているのだろう?

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