中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】物価上昇が子どもの生活にも波及、止まらないインフレの話

こんにちは!ドイツの日常コラム・ゆきラボです。

ドイツでは物価の上昇が続いています。2000年代初めからドイツに住み始めて、長期的に物価が上がってくることは既に経験済みなのですが、短期間に複数回値段がはね上がる現在のようなインフレは経験したことがありません。1リットル入り1本1ユーロ前後だった食用油が、この1年の間に1.5ユーロになり、2ユーロになり、2.5ユーロになり……という感じで、どこまで上がるのか分からないので、とにかく怖い、不安、という気持ちになります。心の中で、すずさん(こうの史代『この世界の片隅に』)が広島弁で叫んでいる気がします。

「これでも安うしとる 今のうちに買わんとまだ高うなるで」

「いまにお砂糖が百五十円くらいになって キャラメルや何か百円でも買えんくなって
靴下だって三足買うたら千円にもなる時代が来やせんかね…
そ そんとな国で生きてけるんかね?」

先日、次男のサッカークラブが室内ミニサッカー大会に参加して見事優勝しました。それはとてもめでたいのですが、観戦に行けなかった私が会場の様子を聞くと「売店がめっちゃ高くなってた……」とのこと。

フライドポテトは主食です

アマチュアスポーツクラブ主催の大会で、定番のお楽しみといえば試合の合間に売店で買うおやつ。体育館に付属しているキッチンを使って、チームの保護者が交代で店番をし、手作りのホットドッグやケーキ、サンドイッチやフライドポテトなどを提供します。こういうドイツのバザー文化についてはここでも何回かご紹介してきた通りです。

作るのも売るのもボランティアだし、店舗の賃料や光熱費が発生するわけでもないし、みんな多少なりともこうした経験があるとはいえ、所詮は素人のやることです。収益は上げたいけれど商売ではない。ですから、こういう場で提供されるものは、一般的な相場よりずっと安いのが普通です。街中の屋台でフライドポテトを買ったら4~5ユーロくらいするけれど、サッカー大会の売店なら2~3ユーロもあれば買える、というのがこれまでのお財布感覚でした。

公立の体育館には普通キッチンがついていて、フライドポテトや焼きソーセージくらいは普通に作れる、というドイツの「普通感覚」がよく考えるとすごいのですが

とはいえ、なにしろ体育館での大会開催がコロナ以来3年ぶりです。物価も上がっていて予算が読めないし、お昼に集合して夕方までかかる大会ではお腹も空くだろうと思って、少し多めにおやつ代を渡して正解でした。フライドポテトが4ユーロ、飲み物が2.5ユーロだったそうで、親からもらったおこづかいが足りなくなる子が何人かおり、足りない分は次男はじめ出せる子何人かで出してあげたそうです。

困っている仲間を自然に助けられる関係性があるというのは頼もしい話ですが、コロナ前だったら5ユーロも渡せばよかったのにな、それでフライドポテトと飲み物が普通に買えたのにな……と思うと何とも世知辛いです。ちなみに5ユーロは今のレートだと700円ですが、一番額の小さい紙幣が5ユーロなので、日本の500円ワンコインくらいの感覚です。ワンコインではちょっとした軽食を買うのも難しくなった、と言えば、このインフレ度合いが伝わるでしょうか……

後半は、このインフレが学校給食にも波及してきています、という話を書きます。

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