中野吉之伴フッスバルラボ

【グラスルーツ】なぜドイツのアマチュアクラブではほとんど会費がかからないのに運営することができるのだろう?クラブの具体的な経営の実情をご紹介

▼ ドイツのクラブはなぜお金がかからない?

スポーツをするにはとにかくお金がかかる。

そんなイメージが日本には強いのではないかと思う。子供がサッカーを始めてクラブに入団したかと思ったら、入会費、年会費、月謝のほか、協会への選手登録料とやらが集金され、ユニフォームやジャージ、ボールといった備品を購入しなければならなかったり、「もっとうまくなりたい」からとスクール通いが入ってきたり、年に何度か合宿や遠征が組み込まれ、気が付くと年に一体いくら必要なのやら、という状態になっているお宅も少なからずあるだろう。

日本という国のスポーツ環境、社会からの理解、行政からのサポート、学校との兼ね合いなど様々な状況と要因がある中で生まれているのが、いまの日本で見られる光景だ。

指導者やクラブサイドからの「よりよいものを提供したい!」という意思でさえ、そのままでは形になりにくく、続けていくためには、それなりの収入を確保できるやり方を見いだせないと、消えていかざるをえないというジレンマ。やるせなさを感じている人だってたくさんいる。

一方で、僕が長く暮らすドイツでは、サッカーをはじめとするスポーツはほとんどお金がかからないで楽しむことができる。その違いは果たしてどこから来るのだろうか?

最初の僕のツイッターへの反応の多くは、「なんでそんな低額で大丈夫なの?」「それでどうやって運営できるの?」というものが多かったが、僕も渡独当初は不思議で仕方がなかった。いや、今でも驚きにたえない。

息子たちは天然芝と人工芝のグラウンドで週に2回練習と週末に試合ができて、クラブハウスがあって、控室では温水シャワーが使えて、クラブハウスに隣接したレストランではビールを飲んだり、食事ができて、それでいて年会費100ユーロもせずに、サッカーを楽しむことができているのだから。

そこで今回はドイツの一般的なグラスルーツのサッカークラブがどのような運営・経営をしているのか、具体的な数字を出しながら、ドイツの実情をご紹介したい。

決して「日本の環境はだからダメなんだ!」とかいう意図ではまったくなく、ドイツではクラブが地域の中で確かな存在として認められており、そんなクラブが社会の中でどのような立ち位置を勝ち取って、どのような経営が行われているのかを知ることで、日本のスポーツ環境の改善へのヒントもあるのではと思うのだ。

▼ SVホッホドルフの場合

SVホッホドルフはスポーツクラブなので、サッカーだけではなく、小さな子供向けの体操教室や女子バレーボールチームもある。会員は全部で約700人。そして40%にあたる200人強がU19までの育成選手。

この育成選手の数がクラブの経営対策として非常に重要な要素の一つとなる。「クラブとしてどのようにお金を集めるのか」という点で、抱えている育成選手の数に応じて、市町村から補助金が入る仕組みがあるのだ。

ホッホドルフもフライブルク市から年間で約1万ユーロ(日本円で145万円相当)の補助金が振り込まれているという。

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