中野吉之伴フッスバルラボ

【指導論】選手起用/交代を決断する20の理由。サッカー監督がやらなきゃいけないことっていろいろある

▼ サッカー監督の仕事ってなんだろう?

タールワールドカップもいよいよ残すところ3位決定戦と決勝戦のみ。クロアチア代表とモロッコ代表、そしてアルゼンチン代表とフランス代表がそれぞれ最終決戦に挑むわけだが、彼らがどのようにここまで駆け上がってきたかを考えるうえで、やはり監督の確かな仕事ぶりを取り上げないわけにはいかない。

ドイツにおける日本人指導者の大先輩である湯浅健二さんの名著「サッカー監督の仕事」では、監督とはどのような役割を担い、どのようにチームを導く存在であるべきなのかが、湯浅さんらしいエネルギッシュかつ論理的な文章でまとめられている。

それこそ、2001年にドイツに渡った僕は、この本をバイブルに何度も読みこんだものだ。今もその内容は色あせないし、非常に本質的な視点を学ぶことができる。

時代は変わり、監督が果たす役割が変わってくるのは確かだ。1人ですべてを切り盛りする時代は終わった。コーチングスタッフ、テクニカルスタッフ、アナライズスタッフなど様々な人員をマネージメントし、チームとして同じ目標に向けてまとめ上げる手腕が欠かせない。

今大会、素晴らしい試合の数々で世界のサッカーファンを魅了しているモロッコ代表も、クロアチア代表も、アルゼンチン代表も、そろって口にするのが「僕達はただのチームじゃない。僕らは《ファミリー》なんだ」という言葉。

今大会のフランス代表ももちろんまとまりがあるけど、でもこの3か国から感じさせるつながりの深さは素晴らしいと思われる。

チームビルディング的にみると、チームというのは「プレッシャーやストレスに襲われる状況においても、自分たち共通の目的のためにそれぞれが自分の力を最大限発揮することができ、他人任せではなく、それぞれが自主的にチームのための責任を担う」ことができる状態を表す。

モロッコ、クロアチア、アルゼンチンがそうしたチームの状態になっているのは一目瞭然だし、自主的に責任を担うだけではなく、自分から進んで限界まで走り、仲間のために戦い、懸命に支え合える関係性が築かれている。

まさにファミリーだ。

そこで今回は、2012年国際コーチ会議でFIFAテクニカル分析スタッフチーフだったアンディ・ロクスブルクの講義から、プロ監督の役割、監督に求められる要素をまとめてみたいと思う。

▼ 指導者の役割

今日のサッカーでは監督が公の場で批判の矢面に立ったり、厳しい試合のあとでも明確なコメントを求められたりする。日本にまさかの逆転負けを喫した直後のテレビインタビューで元ドイツ代表キャプテンのバスティアン・シュバインシュタイガーから、ドイツ代表監督ハンシィ・フリックが、「なぜ、日本のシステム変更に対応できなかったのか」「なぜ、初歩的な守備のミスが出てしまったのか」という点を指摘されたのは記憶に新しい。

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