中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】日本代表決勝トーナメント進出の裏で、合宿に行っていた次男の話

こんにちは。今週のゆきラボも、グループステージ最終戦から少しタイミングをずらして週末の更新となります。

日本がスペインに勝利し、1位でグループE通過を決めた日、6年生の次男は合宿で山小屋に行っていました。サッカーの合宿ではなく全校の学級委員が集まる合宿です。ドイツの学校では学級委員に選ばれると合宿があるのか???ということに私はまずびっくりしたのですが、他校に通う友人のお子さんたちに聞いてみると「うちもある」「うちの学校は年2回合宿がある」「合宿の他に月1でミーティングもあるよ」などなど、決して珍しいことではないようです。合宿、どんなことをするんだろう?と気になったので、今回のゆきラボはその合宿レポートをお届けします。

合宿先は標高1200m以上の山の中。すでに雪が積もっていたそうです

合宿は水曜日の午後、学校の授業が終わった後に出発し、金曜日の午後に帰宅するという2泊3日のスケジュールでした。ドイツ対コスタリカ、日本対スペインの試合が行われたのは木曜日のドイツ時間20時からだったので、まずはその話から。

ここフッスバルラボでも何回かドイツ式の「合宿」の話を取り上げていますが、朝から晩までぎゅう詰めのハードスケジュールということは、どんな分野の合宿でも(特に子どもの場合は)基本的にはありません。自由時間やレクリエーションの時間が設けられているのが普通です。12月8日木曜日も、予定されていたスケジュールは全て終わっていたので

次男「試合は観たい子みんなで集まって観たよ」とのこと。

私「雰囲気は?」

次男「なんか……みんなすごーく静かに観てた。終わったらみんな下向いてた」

私「それは想像つくな……日本がグループ突破したことについては?」

次男「あ、俺、いちいちみんなに『俺、日本人なんだ』って自己紹介してない。みんなも「何人?」とかいちいち聞かない

 

イメージ https://www.photo-ac.com/

そうなんです。多国籍化、多民族化が進んでいるここヨーロッパでは、我が家の息子たちのように、見た目はいわゆる“ヨーロッパ人”ではなくても、ここで生まれ育ったという人も多く、しかもその割合は増えていくばかり。そのことは欧州各国代表の顔ぶれや名前を見ても歴然としていますよね。人の外見から判断して安直に「あなたは何人?どこ出身?」と聞くのはかなり無礼で差別的なことだという認識が広まっています。

少し前には、長年故エリザベス女王の侍女を務めた人物が、英国生まれの英国人である黒人女性に「あなたは『本当は』どこから来たの?」と繰り返し質問し続けたことが差別的行為に当たるとして解雇されるという事件もありました(ニュースソース:AFP通信)。

もし相手の出身を聞きたければ「差し支えなければ、どこの国出身か聞いてもいいでしょうか?」と一言断りを入れてからその話題に踏み込むのが最低限のマナーだとされています。

話を合宿とサッカー観戦に戻します。

次男「何人かの子には『どこの国から来たのか聞いてもいい?』『日本から来たなら、日本が勝ったことをどう思った?嬉しい?』ってまず聞かれた。『嬉しいし、日本を応援してる』って言ったら『そうか、それなら決勝トーナメント出場おめでとう』って言われた」

配慮というか、想像力の行き届いた会話だなあ……と、私はこのやりとりにまず感動してしまいました。人の外見と国籍とアイデンティティがこちらの想定通りではない人はたくさんいるんだよということを肌感覚で理解している人。生まれた国、両親のルーツのある国、今住んでいる国、国際大会で応援したい国は人によって違うかもしれないということに、ちゃんと考えを到らせて相手に確認してから「日本グループステージ突破おめでとう」と言える人。本当の意味で多様性のある社会を担っていくのは、こういう子たちなんだと思いましたし、またそうであってほしいと強く願いもしたエピソードでした。

さて、サッカー観戦以外のことは何をしたのか?という話です。

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