【育成論】チームプレーに求められる《忠実さ》ってなんだ?チームのためにプレーする意味を正しく解釈したい
▼ 忠実さってなんだろう?
かつてヴォルフスブルクをリーグ優勝に導いたフェリックス・マガトが、冗談っぽく「11人の日本人選手が欲しい」と言ったことがあった。
絶対王者のバイエルン・ミュンヘンを2冠に導くなど、指導者として多くのタイトルを獲得したマガトだが、《鬼軍曹》と恐れられるほど選手を極限まで追い込むトレーニングを行うことが少なくなかった。
それこそ厳しさに反発するスター選手と何度も衝突してきたマガトにとって、長谷部誠や内田篤人といった選手がみせていた、文句を言わず、黙々と努力をしてくれる規律遵守の姿勢は、何物にも代えがたいものだったに違いない。
「勤勉」「真面目」「規律を守る」「チームプレー」
いまやマガトだけでなく、多くの指揮官がそうした日本人が持つ特性を高く評価している。そしてブンデスリーガだけではなく世界的な傾向としても、一昔前と比べてチーム戦術はより緻密なものとなり、中盤や攻撃の選手であっても守備の約束事に対して忠実にプレーすることは常識となっている。
でも《忠実さ》ってなんだろう?
どう《忠実》であることが求められているのだろう?
サッカーというスポーツではチームの約束を遵守するだけだと《パーツ》としての存在を超えることはできない。監督の言うとおりにプレーすることだけが、選手の評価に直結するわけではないのだ。
例えば、FWの選手が監督の指示通りに動いて守備に走り回り、味方選手のためにスペースを作り続けても、その中でゴールに直結する動き、ゴールへ向かおうとする動き、ゴールを生み出そうとする動きができなければ、どうしてもチーム内での優先順位は下回ってしまう。
攻撃的な選手として《ゴールを狙う動きにチャレンジする》のは指揮官が口にしなくともみんなすること、として了解されている。監督が守備のことを口うるさくたくさん言ったからといって、それが「ゴールを狙ってはいけない」とか、「チャンスでチャレンジしてはならない」なんてことにはならない。
ピッチ上に入る攻撃的な選手でゴールを狙おうという欲を持っていない選手などいるはずもないというのがその前提にあるからだ。
それがあったうえでその《ゴールへの欲》と《チームを助けるためのプレー》のバランス感覚を高めていくことが必要になるし、いつ、どこで、どんなプレーを優先すべきかの状況認知能力がなければならない。
欧州で出場機会を得続けている日本人選手はそこがうまくできている。
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