中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】「教育熱心」ってどういうこと?前編

こんにちは!
ドイツの日常コラム「ゆきラボ」では、9月に入ってからは日本滞在を振り返りつつ、ドイツでの日常をお届けしています。

先週の記事はこちら。休みといえば休む、とはいえ、休んでばかりでいいのかな?という思いはドイツの親にもある、という夏休み事情をお伝えしました。

【ゆきラボ】夏休み、休んでばかりでいいの?ドイツの親だって悩んでる

日本で子どもを持つ友人と話していると、夏休みの過ごし方以外にも、必然的にドイツと日本の教育事情の違いや、学校システムの違いについても話すことになります。小学校は4年生までで終わるところが多く、そのあとは小学校の成績に応じて進路が決まるんだよ、ということを話すと、たいてい「小学校、短いんだね」「その年齢でもう進路を意識しないといけないの?大変だね」というリアクションが帰ってきます。

イメージ https://www.photo-ac.com/

小学校のあとは成績に応じて、大学進学を目指す8年制または9年制の「ギムナジウム」に行くか、職業訓練を受けて資格を取得し、早くに社会人として自立することを目指す「レアルシューレ」「ヴェルクレアルシューレ」に進学する……ともう少し踏み込んで説明すると、「それならギムナジウムを目指して小学校のうちから教育熱が過熱するんじゃないの?塾に通わせたりして、大変なんじゃない?」と質問されました。

結論から言うと、答えは「そんなことはない、というか日本の教育熱とドイツの教育熱は方向性がだいぶ違うと思う」です。少なくとも、幼少期から進路を意識して子どもを教育したり、進学を見据えて家庭学習や校外活動に力を入れるケースは、基本的にないと言っていいと思います。もちろんドイツにだって、子どもが良い成績を取ることや、高学歴を得ることを望んでいる家庭はたくさんありますが、日本や韓国や中国などでイメージされるような「教育熱心な親」と、ドイツの「教育熱心な親」の姿はずいぶん違います。

まず先ほどの「ギムナジウム」ですが、ギムナジウムに進学できるかどうかの判断材料になる小学校からの推薦状は、相対評価ではなく絶対評価で出されます。ある小学校で、その年の卒業生が100人いたとして、100人全員がギムナジウム進学相当の学力があると判断されれば、100人全員がギムナジウムの推薦状を受け取ることができます。ということは競争がありません。人より良い成績を取るための勉強、競争で勝ち残るための勉強は、基本的にはしなくてよいことになります。(公立普通科の場合です。音楽科や美術科や外国語科など一部特別コースや、私立校の場合は少々事情が違うようなので、ここでは割愛します)

ではその「ギムナジウム進学相当の学力」とはどのくらいか、というと、普通の小4レベルの国語(ドイツ語)と算数の学力があればOK。公立の小学校で習っていることが一通りできれば大丈夫なんです。昨今のギムナジウムでは、クラスメイトとのグループワークや、自ら課題を設定して学ぶ姿勢が重視されているので、単純な成績の良し悪しだけでなく探求心や向学心があること、標準的なコミュニケーション能力があることなども加味されていますが、ものすごく勉強ができる優秀な一部の子だけがギムナジウムに行くわけでは決してありません。

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そもそも「ギムナジウム進学相当」の推薦状も、判断材料の一つであって、推薦状がなくても、本人や親の強い希望があればギムナジウムに入学することはできます。ギムナジウムの定員枠も固定されていないので、日本の公立の中学校と同じように、学区内で小学校の過程を終了した子どもには全員入学資格があるといっても過言ではありません。というわけで、ギムナジウムに入学するためだけに塾通いをする必要もなければ、ドイツにはそもそも学習塾というもの自体がほとんどないのです。

ギムナジウムは入学することよりも、そこで学び続けて卒業試験の「アビトゥア」に合格することのほうがはるかに大変なので、入ることだけを目指して努力することにはそれほど意味がないとも言えますし、その点はドイツの大学とも共通していると思います。

ギムナジウムに入学するためだけにがんばる必要はないとはいえ、もちろんドイツにも「教育熱心な親」はたくさんいます。では、そういう熱心な親は何のために、何を目指して、どんな努力をしているのか?という話は、来週のコラムで続けて書きたいと思います。コラム後半では「確かにそれも『教育熱心』なのかもしれないが、しかし」と思ってしまった、日本でのエピソードを書きます。

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