中野吉之伴フッスバルラボ

【きちルポ】僕らはだれもが心に闇を持っている。黙とうからいろいろ考えた世界との向き合い方

目次—
➟黙とうから考える
「人間ってなんだろう?」

➟ポジティブなことだけが人間性ではない
➟心の闇とどうやって向き合う?
歴史的なものすべてがいい訳ではない

▼ 黙とうから考える「人間ってなんだろう?」

日本での約1か月間の生活を経てドイツへ無事戻ってきた僕は、9月2日と3日にそれぞれハイデンハイムとシュツットガルトの取材に足を運んでいた。久しぶりのブンデス取材だ。

7月に2部リーグの取材は何試合かいったが、8月開幕の1部はこの試合が初めて。最寄駅から熱々の盛り上がりを見せるファンの様子にこっちもワクワクしてくる。

試合前のスタジアムに漂うざわざわする感じが好き。「絶対にこの試合に勝つぞ!」と気合入りまくっているファンがいれば、仲間とビールを飲みながらこの場にいられることを楽しんでいるファンもいる。アップでピッチに現れる選手が万雷の拍手で迎えられ、アウェイの選手には容赦のないブーイング。そのすべてがサッカーに必要な要素なのだろう。

入場曲が流れ、スタジアムDJがファンをあおる。選手が入場し、グッと空気が引き締まる。両キャプテンが審判団のもとへ走り、集合写真を撮り、円陣を組む。いつも通りの風景だ。

試合開始を前にスタジアムにアナウンスが流れた。黙とうが行われるという。両チームの選手がセンターサークルに並んで立っている。僕らも静かに席を立つ。

《五輪史上最悪の悲劇》を追悼するための黙とうだ。今から50年前の1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックで起こってしまったパレスチナのゲリラ集団によるテロ事件を知っている方はどれくらいいるだろうか。

イスラエルに逮捕されていた同士234人の解放を求めてイスラエル選手村を襲撃。人質を取っての籠城戦は最終的に11人の選手とドイツ人警察1人が死亡という最悪の結果で幕を下ろした。悲しくて痛ましい事件。

サッカーの試合を見にきているからそれ以外は関係ない、なんてことはない。僕らが歴史から学ぶことは多い。僕らは人間を学び続けなければならないんだ。僕らはまだまだ知らないことがたくさんある。知れば知るだけわかるわけではないけど、だからと言って知ろうとしなければいつまでもなにも変わらない。

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