中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】値上げしても謝らないドイツと、ドイツでの英語学習の話

こんにちは!ドイツの日常コラム「ゆきラボ」です。

基本的にあまり外食をしない我が家ですが、たまにカフェに行くと、メニューの価格が少しずつ上がっていることに嫌でも気づきます。お値段据え置きのお店の方が逆に目立ってしまうくらい。世界的なインフレで食材や光熱費が上がっているのに加えて、ここフライブルクでは家賃も人件費も以前よりずっと高くなっているので、値上げは止むを得ません。むしろお値段据え置きのお店は、その値段で大丈夫なの?と心配になるくらいです。

フライブルクで一番美味いコーヒーが飲める!という声もある某店、ラテアートも凝ってます

日本でも値上げする飲食店が増えてきている……と報じるニュースを見ていて気付いたことがあります。それは「ドイツのお店は値上げしても謝らない」ということ。日本だと、特にリーズナブルな料金設定の定食屋さんなどでは、値上げの際には「大変心苦しいが値上げせざるを得ない、申し訳ない、どうかご理解頂きたい」という旨の貼り紙をしたりしますよね。

ドイツに住んで18年、冒頭にも書いた通り基本的に外食はあまりしないので、もしかすると気づいていないだけかもしれませんが、この類のメッセージを見たことが一度もありません。特に事前の予告もなく、ある日気づくと少しだけ値段が増えていて、でもみんな「そういうものだよね」と思っているので、少しだけため息をついて、おしまい。

ソーセージやフライドポテトと並んでドイツの人がよく口にするケバブやユフカは、少し前までフライブルクでは1人前5ユーロが相場でした。ドイツで一番額面の小さい紙幣が5ユーロなので、日本でいえばワンコインで買える感覚です(今のレートだと700ユーロくらいになるのでワンコインよりだいぶ高いですが)。手軽な軽食として子どもがお小遣いでも買えるもので、肉も野菜もぎっしり入っていて、学生や若い人のお財布にも優しいのがケバブ……のはずだったんですが、最近はどこのお店も6ユーロが相場になりました。

自分がレジに並んで初めて「あ、1ユーロ値上げしたな」と気づくか、誰かから「〇〇通りの角のケバブ屋も最近6ユーロになったよ」と聞くくらいで、お店からの値上げ発表や謝罪は耳にしたことがありません。「ドイツのお店は値上げしても謝らない」ほうが普通になっていると、むしろ「日本のお店はなんで値上げをお客さんに詫びるのだろう」と感じてしまうくらいです。

イメージ https://www.photo-ac.com/ インフレの続く昨今、値上げのたびに謝っていたらきりがないのかもしれません

ドイツでの飲食や小売りの仕事というのは「お金と引き換えに相手に物を渡す仕事」であって、物やお金を間に挟んで、お互いが対等な状態に立っている……という認識なのかなと思います。だから店員が必要以上に客にへりくだる必要はないし、「こちらは金を払っているんだ!」という横柄な客の言いなりになることもありません。店員と客の間にあったケバブが5ユーロから6ユーロになっただけのことで、それは別に誰かに落ち度があったわけではないし、なにより、どこもかしこも値上げラッシュが続いている今では仕方のないことなんだ、という共通認識が店側にも客側にもあるような気がしています。

まあ、いくら対等な間柄だといっても、もう少し丁寧に愛想よくしてもよくないか?と思う店員さんは時々いますが。

コラム後半は「ドイツで学ぶ英語の話」について書きます。

(残り 1875文字/全文: 3297文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ