中野吉之伴フッスバルラボ

【指導者の挑戦】いろいろあったシーズンが終わった。戦績的にうまくいかない時だからこそできた貴重な経験がたくさんあった

▼ 次男と僕との旅路の続き

正しき道の先には正しき答えが待っていると信じていたい。

6月4日(土)に行われたU15リーグ最終戦をもって僕の21-22シーズンが終わった。

どんなシーズンにも数々の印象的な出来事があるし、うれしいこと、悲しいこと、ポジティブなこと、ネガティブなこと、いろんなことが起こるけど、今季もやっぱり色濃いシーズンといえる。

正直、戦績とか、事象だけを見ると散々。

フライブルガーFCのU12からはシーズン途中でクラブ内のごたごたに巻き込まれて離れることに。

時がたてば傷はいえる。みんな口をそろえてそういう。僕もそう思う。

ブンデスリーガクラブのマインツ育成アカデミーで育成指導者チーフを務めるヤン・ジーベルトもこんな風に話をしてくれたことがあった。ヤンは僕のA級ライセンス講習会での同期で、僕の身の上話も真剣に聞いてくれる。

「キチ、残念だけどサッカー界にはそうしたことがあるんだ。世界中どんなところでもね。そこで粘って頑張れることもある。でも、それよりも自分のことを評価してくれて、フェアに振る舞ってくれて、自分の力を発揮できるところを探す方がずっと健全だ悲しい話だし、改善された方がいいと思うよ。でも、そんなところに引っ張られたらもったいない。自分が心から輝ける場所で指導者ができることを祈っているよ

頭の中では理解している。そして、SVホッホドルフというちゃんと自分が向き合えるチームもある。サッカーの楽しさと素晴らしさと、時にむなしさや憤りがありながら、生き生きとしたぶつかり合いができるチームがある。

でも、心の奥底では今もなお苦しんでいる自分がいる。解き放たれないものがいつまでもいる。

僕がチームを離れた後も次男はそこでプレーを続けているというのも一つの要因だったのかもしれない。息子のプレーする試合だから僕はグラウンドに足を運ぶ。でも敷地の中には入っていけない。禁止されているわけではないけど、近寄ると心がざわっとするのが自分でもよくわかる。

だから、少し離れた小高い丘から眺めたり、反対側の道から隠れるようにみたり。

頑張っている次男の姿が観れる喜びはあるけど、そこに関われないでいる自分の立ち位置を見いだせない。クラブが僕を追い出してまで進めようとしたことも、僕の目には最後まで理解ができないものだった。

後任指導者を否定するつもりはない。リスペクトの思いはいつだって思っている。でも強豪クラブとしてパフォーマンスばかりを強調したトレーニングになっていないだろうか。緊張感ばかりをあおっていないだろうか。表面的なチームビルディングになっていないだろうか。

子どもたちのはじけるような躍動感がなくなっているのがずっと気がかりだった。試合中に文句を言い合っている姿を見るのが苦痛だった。子供たち同士で築かれようとしていた信頼関係がどこかへいってしまってないだろうか。チームとして支え合う姿勢が見えないのに、そこにまるで着手しない監督とコーチ。そんな監督とコーチを《正しい》指導者と考えている首脳陣。

間違っているよ。

でもそれを僕が口にすることはもうない。どこにも届かない思い。口から洩れても誰にも届かない。折り合いをつけるこができないまま時間は過ぎ、時間が過ぎてもまだ癒されないで流されていく。試合を見た後誰と話すこともないまま、深い深い呼吸をして、気持ちを整えてから歩き出す。

そうこうしている間にシーズン終わりが近づいてきた。

「来季はどうするつもり?」

次男に聞いてみた。強豪クラブでプレーするチャンスがあるなら残った方がいいこともある。選手として成長したところだってたくさんある。

「うー--ん」

彼なりに考えをまとめた後、こうはっきりと僕に伝えてきた。

「今のチームを離れて、元のクラブに戻りたい」

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