中野吉之伴フッスバルラボ

【指導論】間違った勝利至上主義問題を解決するには、国の根底から変えるくらいの改革が日本には必要か?

前回:勝利至上主義とはなんなのだ?結果を優先した育成が子供の成長にとって大きな弊害となる理由

▼ たくさんの潜在的な《勝利至上主義者》

《勝利至上主義》についていろいろと書くと、《悪しき/間違った勝利至上主義に導く指導者や保護者やメディアが悪いんだから、それをどうにかすべきだ》というご意見もある。それは至極まっとうなご指摘。

ただ、《それはよくないことだからやめてくださいね》とどれだけいっても、ちょっとやそこらではびくともしないぐらいの潜在的《勝利至上主義者》が日本には山のようにいるという事実を僕らは知らなければならない。

だって、そもそものところでだ。本来こうした改革を進めるうえで先陣を切って動き出すべき存在である教員や先生、講師や指導者や保育者という中に、しかもそれなりのポストについている人の中にいたりするんだ。

それこそ教育/育成の専門家として様々な研究会や講習会に出たり、重要案件として情報を手に入れる機会が間違いなくあって、そこで有用な様々な理論や研究結果を見聞きしているはずなのに、そうした学んだはずのことを実践しない人、したくない人がたくさんいるんだ。

そこを変えるためにはもう抜本的な改革が必要になる。それこそ国の根幹から変えるくらいの改革が。

教育とは何か。学校とは何か。育成とは何か。スポーツとは何か。先生とは何か。指導者とは何か。

教育のあり方、育成のあり方を深いところで正しく理解している人を集めて、教員、先生、講師、指導者、保育者への教育を継続的かつ先進的に進めていけるようなシステムを作り出す。教育学部を持つ大学と提携して、教育に関するリテラシーを高め、正しく研修を受けられるようにする。

当然現行のカリキュラムも見直すことも視野に入れなければならない。

子供達にどこまで学ぶことを水準とすべきか。学をつけるとはどういうことなのか。暗記力だけが学力として評価されないようにするにはどうしたらいいのか。単語を覚えるだけではなく、その前後関係や歴史的背景を興味深く学べるための授業形態はどうあるべきか。

これからの時代に必要な要素と照らし合わせて、常に最適化できるように柔軟性を持たせながらのカリキュラムの在り方を模索する必要がある。

0からいきなりすべて新規登用することはできないし、今までのやり方から変えて順応する時間も必要だから、2年間くらいの猶予をもって、それでもまったく変化が見られない教員、先生、講師、指導者、保育者は他の職種に行ってもらう。これって本来一般社会において常識的なことではないだろうか?

「私にも家族がいるんだ!」はなし。それならちゃんと職務を全うしろという話だから。子供たちの大事な未来を預かっている自覚のない/間違った解釈をしたままの人が、先生、指導者、保育者をしてもいいというのは、ちょっと考えたらおかしいって思うではないか。

その際に大切なのはそれぞれの仕事量の適正化を図り、質の向上へつなげること。仕事量だけ増やして、「これができなきゃだめ」だけでは現場は対処できない。対処するためには十分なマンパワーが必要だし、そのためにはみんながやりたいと思えるように条件だってよくする必要がある。そのためには国からの補助だって大幅にアップさられなければならない。

正しいことを正しく行える環境が教育現場、育成現場にはなければならない。《正しいことを正しく行いましょう》という声を出すのがやっかまれない環境でなければならない。

だからそうした変革を脅かしたり、損なう行動に出る危険性があったときの対処も想定して、準備しておくことが大切になる。例えばサッカーで小学生の全国大会をなくそうという動きが出て、実際になくなったとしても、その先の対処が準備されていないと勝手に私設団体を作って、自分たちに都合のいい社会に逃げ込もうとする。これは間違いなくそうなる。

だから忖度ではない規範に基づいて行動できる教育管理委員会を全国に専任で設置。兼任だとただ仕事が増えるだけだからダメ。

思いつくままに必要なことを書き並べてみた。ただ、いまはすべて理想論でしかないかもしれない。これを国全体でやろうというのは現状から想像することもできない。夢物語でしかないのか。どれほど根深い問題なのか。

でも、小規模な地域であればひょっとして…とは思うのだ。全てを実現化することは難しくても、いくつかの基本的な構造さえ作り上げることができたら。教育や育成現場の必要なポストに適性のある人が立って、正しい道へ導けるようになったら。

そんな動きが出てくることを心底願っているし、そのための力になりたい。あきらめたり、嘆いている暇なんてないよ。明るい未来を信じて、子供たちの将来が輝いていることを願って、今日も明日も明後日も、頑張っていきたいと思うばかりだ。

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