中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】ウクライナ侵攻をきっかけに「〇〇人」って何だろう、と考える

こんにちは!水曜更新のドイツ日常コラム、今日は「〇〇人」って何だろう、というテーマで日頃思っていることを少しまとめて書きたいと思います。

ウクライナでの戦争が始まって以来、周囲でも、ドイツのメディア・日本のメディアでも、ウクライナにルーツや縁のある人が様々なコメントをしています。少し見聞きしただけで、一口に「ウクライナ人」「ウクライナ系」といっても、そのバックグラウンドが実に様々で複雑であることに気づかされます。

「国籍はドイツだけれど生まれはウクライナ」
「おじいちゃんはロシア人、おばあちゃんはウクライナ人、自分はドイツで生まれたからドイツ人」
「ポーランド生まれのウクライナ人、父はロシア人で母はウクライナ人」
「両親はロシア人で自分が生まれたのはクリミア半島、家の中ではロシア語に囲まれて暮らしてきたけど、キーウ(キエフ)の大学に進学して以来、自分のアイデンティティはウクライナ人だと思うようになった。2014年のロシアによるクリミア支配以来、故郷は外国のように感じている」

自分の周囲に少し目を向けるだけで、少しニュースに触れるだけで、こんなふうに様々な形でウクライナと繋がりを持つ人の話がいくらでも出てきます。国籍の取得に関するルールは国によって様々ですし、生まれたときに取得した国籍とその後の本人の生き方やアイデンティティの持ち方もまた様々です。ポーランドで生まれたらポーランド人じゃないの?とか、両親がロシア人ならロシア人でしょ?とは全く一概に言えません。

ましてロシアとウクライナとは、国と国とが陸続きである上に、ソ連の崩壊後にウクライナが独立してからわずか30年ほどしか経っていません。独立前も独立後も、ウクライナとソ連・ロシアとの間では様々な歴史的経緯や人の往来があり、それゆえにそこにいる人たちを簡単に「ウクライナ人」や「ロシア人」とはひとくくりにできません。その多様なバックグラウンドは外見から判断することもできません。そして、そんな人たちは決して少数派ではなく、ごく当たり前にウクライナやロシアやヨーロッパ各国、そして世界の各地で暮らしています。

場所によってはむしろ、日本人の親から日本で生まれて、親戚も全員日本人で、日本語を母国語として日本で育って、見た目も日本人で、日本のパスポートを持ってドイツで暮らしている私のような出自の人のほうがマイノリティーだったりするのでは?とさえ思います。

そこで冒頭の問いに戻ります。「〇〇人」を決めるものって一体何なんだろうな、と。

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