中野吉之伴フッスバルラボ

【Q&A】子どもたちのケンカが常態化しています。特定の子への悪口も。どうすればわかってもらえるでしょうか?

Q:「試合に出るのが怖くなってサッカーを止めようとしている子どもたちは仕方のない存在ですか?」こちらの無料コラムを拝見しました。

記事を拝見して自分が教えているチームに当てはめて考えた時に自分がどう立ち振る舞うべきか気になったので、メッセージを送らせていただきました。

僕がコーチをしているのはよくある少年団です。カテゴリーは低学年。15人ほどがいつもわちゃわちゃと練習をしています。普段から安心・安全に気を配ってはいるのですが、解決できない問題の1つとしてケンカの常態化があります。

喧嘩をする子は決まって3,4人で、挑発をきっかけになることが多いです。最初の頃は介入することでケンカを止めさせようとしましたが、何度注意しても収まりません。

僕は半ば諦めるように仲裁をしなくなり、徐々に「ケンカも貴重な感情を発露させる場なのでは?」「感情を発露させる経験を経て自らコントロールする術を学ぶのでは?」と言い訳に近い方向に傾倒するようになり、今の「ケンカは介入しなくても勝手に収まるし、子供たち自身で解決させよう」という対応に落ち着きました。

それでもやっぱりケンカは起きます。ケンカだけではなく特定の子への悪口も続いている状況です。それがいじめに発展したときに僕は注意したのですが、未だに続いています。

安心・安全が何より優先されるべき。スポーツはみんなが楽しむもの。

とても勉強になるお言葉です。ですがそれを子どもたちに分かってもらうにはどうしたら良いのでしょうか。ご多忙の中とは存じますが、ご返信をお待ちしております。

▼ 子どもたちが確かに学ぶために大切なこと

A:ケンカはあり。いじめは絶対にNG。

シンプルにまとめるとこういうことになると思います。現代の子どもたちは子供たち同士でもめ事があった時に、それを自分たちで解決する能力が身についていないケースが増えてきています。それは「以前に比べて、そうした能力が劣っている」ということではなく、そうした局面に直面し、自分で、自分たちで解決しようとする環境そのものが減ってきていることに起因すると考えられています。

大人が先回りをして、間に入って、もめ事を収めようとする。「〇〇君/さんに謝りなさい」と事後処理の仕方を教える。それさえやれば万事解決という事実にしてしまう。

でも、それだと根本的なことは何も変わらない。その結果、「何かあっても、粛々しく頭を下げて謝ったらそれでオッケー」という価値観で考えるようになってしまったらそれはすごく怖いこと。

だから多少のもめごとであれば、大人がすぐに口を出すのではなく、子どもたち同士で解決するように見守ることも必要になります。大抵のことは一晩寝て起きたらまた元通りになるはずですから。

ただやりすぎはダメです。感情的になりすぎて、言ってはならないことを口にしたり、思わず手を出してしまったり、その勢いを止められずに相手に危害を加えてしまったり。

「あ、ダメなことをしているな」とそのことに自分で気づいて、改善策を見出せるようになることが求められるわけです。頭の中を整理してもらい、次に同じような局面が来た時に、どんな対応をしたらいいかを考えておく。そのための手助けを指導者や保護者がするのは必要なことです。

そういうプロセスをしていかないと、知らないうちに《いじめ》の悪因になってしまうこともあるんです。《特定の子に悪口》はすでに危険な兆候。どこかで歯止めはかけられなければならない。

いじめはどんな理由があっても許されるものではありません。人が持つ尊厳を傷つける行為です。心を消し去る行為です。人はみな、この社会で生きていくうえでの権利を持っていて、それはどんなことがあっても侵害されてはならないんです。安心と安全は僕らが持つ大事な権利なんです。

欧米にもいじめが起こることはありますが、処分が科せられ、その後カウンセリングを受けて、更生すべきは決まって加害者のほうです。「いじめられた方にも問題がある」なんて物言いは卑怯ですから。

(残り 2011文字/全文: 3659文字)

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