中野吉之伴フッスバルラボ

【2021年総集編】今年もいろんなことがありました。毎月の人気記事とともに振り返ってみました

2021年4月:スーパーリーグ新設に対してドイツクラブはみな反対

サッカー界を震撼させた欧州スーパーリーグ構想は結果としてすぐに立ち消えたけど、なぜそうした考えが生まれ、なぜ反対意見があるのかを知っておくのはとても大切なこと。

サッカーって何だろう?サッカーってだれのためのものだろう?

これはどんなときでも考える最初の地点になければならないことではないでしょうか?

国際舞台で戦い、多くのお金が動き続けるクラブとなると、経営面での駆け引きはやはり必要であるのも理解できる。

でも「どうしたらファンが熱狂した大会になるだろう?」とか、「どんな試合形式だったら子どもたちが憧れるプレーがもっと見られるようになるだろう?」という視点はあまり見当たらない、悪いけど。

DFB会長のケラーの「彼らファンが、世界有数のクラブにしたのではないのか。財布がしたんじゃない」という言葉にはすごく共感する。だからその先を見せてほしいと思う。

ファンの情熱を集めるサッカーというスポーツはどのようにして今の地位を確立したのか。いまコロナ禍で欧州ほとんどの地で無観客試合となっている。1年近くそうした状況が続けば、そうした状況にも慣れてくるのかもしれない。

でもさ、ファンのいないスタジアムで行われているサッカーと、満員のファンであふれかえったスタジアムで行われるサッカーは同じじゃないんだよ。

こんな難しい時だからこそ、これまでサッカーを支え続けてきてくれたファンのために、小さな子供たちがファンになるためのフォーマットが考えられなければならないはずなんだ。

2021年5月:子供たちが待ち時間を持て余すことなく、ずっとサッカーのプレーができるようなメニューを考えてやってみた

そうでした。昨シーズンはフライブルガーFCのU8でお手伝いをしてたんでした。監督のパトリックはとても親切で、僕のことを頼りにしてくれて。子どもたちは僕が言ったらいつも笑顔で迎えてくれて、トレーニングを本当に楽しみにしてくれて。

コロナ禍でトレーニングもできない時期を僕たちは知ってますよね。サッカーができるというのは当たり前じゃないんですよ。グラウンドで仲間と一緒に過ごす時間はかけがえないんですよ。

だからこそ、彼らがトレーニングを満喫できるようなオーガナイズをこっちもちゃんと準備してあげるのが礼儀なんじゃないでしょうか。練習が終わった後に、「楽しかったー」といって迎えに来たお父さん・お母さんの元へ走っていく彼らの姿を、僕は忘れることはないでしょう。

この年代の子どもたちの練習で僕がすごく大事だと思っているのは練習前と練習と練習の間の遊びの時間。

こちらがその日のオーガナイズの準備をしているとみんな自由気ままにボールをけっているわけです。誰かがGKになってシュートを蹴って遊んでいたり、ミニゴールを使って1対1や2対2をやっていたり、マーカーやコーンを並べて遊んでみたり、ただただ友達とおしゃべりをしていたり。

最高に楽しい時間じゃないかなぁって思うんですよ。

2021年6月:サッカー界はグラスルーツが支えている

「ボランティアとして無償でやってやってる」という意識ってひょっとした拍子に出てきてしまうものなのかもしれません。でもそれを正当化するのも、させるのも間違っています。

無償だからと何をやってもいいわけではないんですよ。

それにすでに素晴らしいものを還元してもらってるではないですか。

指導者をやることで得られる充実感というのは、むしろお金を払ってでも手にしたいくらい、素晴らしく、代えがたく、素敵なものではないかなぁって思うんです。

「いま指導者育成において、育成年代ではどんな指導者が求められていて、どのように子どもたちと向き合うべきかを辛抱強く伝えていくことが非常に重要なのです。そうすることで、次世代の指導者の方々が、年代に応じた最適な取り組みということをどんどん実現していってくれると信じています。

私たち育成指導者は絶対に自己満足のために指導者をしてはならないんです。子どもたちはそれぞれの成長スピードとその時々のキャパシティを持っています。でも今できないことが、3年後もできないなんてことはない。それは普通に取り組んでいけば、改善されることなんですね。今すぐできなきゃいけないことなんて、この世の中そんなにはない」
ミッテルライン州サッカー協会専任指導者ベレーナ・ハーゲドルンさん

2021年7月:逆風の中でチーム作りが難航し続けたドイツ代表

ヨアヒム・レーフ前監督のもと欧州選手権に向けての準備は思っていた以上に難航していたという話です。だからとちって大会直前にどうにかできるような問題ではないですし、育成における日々の取り組みを改めて考えてみませんか?というお話。

サッカーをしているうえで戦術はとても大事だ。でも戦術さえ極めれば何とかなるなんてことはない。プレーしているのは人間で、感情もあれば、日々の調子もある。相手との相性や偶然の要素だってある。とはいえ「だから技術力こそが大事であり、それを集中的にやることが育成の王道だ」というのも極端すぎる話だ。

技術も戦術もメンタルもフィジカルもインテリジェンスもそれこそ個々の性格やパーソナリティもすべてが必要であり、そうした要素をうまく自分の中で整理して、特徴を把握して、長所の出し方を身につけて、自分だけのオリジナルな選手になることが大事だと思うし、そのためにあるのが育成という場であってほしい。

2021年8月:育成とはチームや指導者が子どもたちを選ぶんじゃない

育成年代における移籍は日本でも少しずつ風通しがよくなってきているようですが、いまでも理不尽で不自然なローカルルールが横行している地域がまだあると聞きます。ドイツにおけるあり方すべてが正しいわけではないですし、問題が生じることも当然あります。

でもチームへの考え方、チームのあり方については考えさせられるものがたくさんあるのではないでしょうか。

指導者や保護者が勘違いをして、エース級の3人や5人を固定して起用して他の子供たちを育てるのをおろそかにしていたら、9人制や11人制となった時にチームは機能しなくなる。一握りのエースが活躍するクラブだと、それ以外の選手がなかなかプレーに関与することができなくて、成長の機会を逃している例も少なくない。

子供たちがずっとサッカーを続けていけるための土壌づくりその学年だけ、その年だけうまくいったからそれでいいというわけにはいかないのだ。

日本でも移籍に関する考え方は少しずつ変わってきていると聞く。移籍をポジティブに生かすことができるのか、それともネガティブな産物としてしまうのか。移籍は選手の権利だが、移籍がもたらす影響については大人が一緒に考えなければならない。どのチームにも関係することではないか。

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