中野吉之伴フッスバルラボ

【無料コラム】3G、誰がどうやってチェックする?ドイツの電車にはそもそも〇〇がない話

こんにちは!水曜更新の無料コラム「ゆきラボ」今回はドイツの交通公共機関の話です。

今週に入っても、毎日数万人ずつのコロナ新規感染者が出続けているドイツ。追い打ちをかけるようにオミクロン株の感染者も見つかっており、先々週の連邦政府発表、先週の各州政府発表に続いて、さらに人の接触を減らす追加の対策が必要になるのではないかと言われています。

5月ごろから、ドイツでは通称3Gと呼ばれるルールが導入されました。

【1】24時間以内に発行されたコロナ抗原検査陰性の証明書(Getestet) 
【2】予防接種完了の証明書(Geimpft)
【3】コロナウィルスに感染し、その後完治したことを示す証明書(Genesen)

3つの“G”のうちどれかを提示し、感染を抑制しながらなるべく通常通りの生活が送れるようにする措置です。

これまでは、感染状況に応じて主に飲食店や宿泊施設、屋内レジャー施設、イベントへの参加などで3Gの順守が求められてきたのですが、現在はこの3Gが必要な範囲が非常に広くなっており、公共の交通機関を利用するのにも、3つのうちどれかの証明書を携帯することが必須になっています。予防接種を受けていない人にとっては、コロナ抗原検査をまず受けてからでなくては、ちょっとバスに乗って買い物に行くことすら禁止されている、というかなり厳しい状況です。

もともと厳しい対策が取られてきた飲食店や屋内施設の利用、イベントへの参加には、ドイツのほとんどの地域で2Gルール(予防接種完了かコロナ完治のいずれか)が適用されています。接種可能なのに接種していない人にとっては、今のヨーロッパは抗原検査なしには出来ないことばかり・検査が陰性でも入れない場所ばかりの、非常に行動が制限された場所になっています。「だから早く接種して!お願い!」ということですよね。

が、この交通機関での3Gチェックにはどこまで実効性があるのか?という疑問の声も上がっています。誰がどうやってチェックするのか、毎日膨大な人数に上る乗降客全ての3Gを確認するのは事実上不可能なのではと思えるからです。

そもそもドイツの交通機関には改札がないところが非常に多いです。田舎のローカルバスや、都市部の深夜路線など、乗客が比較的少ない場所や時間帯では、乗車時に運転手に運賃を払ってから乗車するところも多少はあります。が、大半のバス・路面電車・地下鉄などの短距離路線から、ICEのような高速長距離路線まで、ドイツでは改札を通らずノーチェックで乗車できてしまう場所のほうが圧倒的多数。

日本なら改札を通らないと乗車はおろかホームにもたどりつけませんよね

もちろん、ICEのように運賃が高額で走行距離の長い路線では車掌が原則全ての乗客のところへ検札に来ますが、車内で何かトラブルがあったりすると数時間乗車していても全く車掌が回ってこないことも時々あります。

そして、都市部を走るバスやトラムなどの車内では、ごくたまにしかこの検札に遭遇することはありません。検札係は交通各社の制服ではなく、一般の乗客のような服装でランダムに公共交通機関の車内を巡回しています。出会うかどうかは、言ってしまえば運次第。私も1年以上全然検札に会わないこともあれば、同じ日にどういうわけか3回もチケットの提示を求められたこともあります。

「普通のチケットの確認さえたまにしかしないのに、3Gルールにしたところで全部確認できるわけがない、これで本当に感染対策になるの?」という疑問が生まれるのも当然ですよね。

フライブルクのトラム車内ポスター。いろんな言語で「無賃乗車は罰金60ユーロ」と書いてあります

改札がなく、やろうと思えば簡単に無賃乗車できてしまう仕組みになっている一方で、もしチケットを持たずに抜き打ちの検札に遭遇すると、有無を言わさず高額な罰金を払う羽目になります。ですからほとんどの人は真面目にチケットを買ってバスや電車に乗っています。見つかろうと見つかるまいと、無賃乗車は犯罪です。同じ理屈で、3Gの証明書を持たずに乗車して発覚した場合にも罰金が設定されているので、全ての乗客の証明書を確認しなくても、このルールは機能する……という考え方なんでしょうか。

ただ「電車に乗るには必ず運賃が必要」に正面から異論を唱える人は会ったことがありませんが、「電車に乗るのに必ず予防接種か抗原検査が必要」に正面から異論を唱える人は相当数いるので、同列に考えていいのかどうかは微妙なところです。

今年も残り1か月。少しでも感染を抑えて、希望の持てる状態で2021年を終えたいものだと切に願っています。

今回もお読みくださりありがとうございました!次のゆきラボもよろしくお願いいたします。

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