中野吉之伴フッスバルラボ

【Q&A】Q:「育成金はもっとあった方がいい?」A:「育成金自体はあった方がいい。その上でプロとグラスルーツクラブの関係性においては日本独自の発展が必要不可欠」

Q:Jクラブへ選手を送れば育成金が入るのですが、日本は安すぎるというのが先日とあるところで話題になっていました。

(注:Jリーグ、JFLなどのクラブが新たにプロ契約するアマチュア選手の出身チームに育成費を支払う制度

そこで『育成金がもっと高ければ、もっと選手育成に力を注ぐことができるのに』という話にもなったのですが、ではプロ選手育成だけが育成指導者の使命なのかと疑問の一つに思いました。

お金があれば、いい選手を育成できるのか。逆にお金がなければ、いい選手は育成できないのか。育成金が高額になれば、いい選手が増えるのか。

育成金を否定している訳では無いです。

ただ日本ではサッカービジネスが蔓延していることを危惧しています。ドリブル塾などある技術に特化したスクールもありますよね。そうした現状を踏まえると、育成金が高額になれば、サッカービジネス、サッカースクール、サッカーチームの運営が間違えた方向に進むのではないでしょうか。

A:育成金が上がればいいかどうかという質問に対してだったら、僕の答えは「その通りだと思う」になります。

「プロ選手を育成することが育成の使命なのか」どうかというのが問題なのではなくて、プロからの適切な還元がないとスポーツ業界のバランスが崩れ、それぞれが苦しくなる図式にもなってしまうからです。

ドイツを例に挙げると、アマチュアクラブ間の移籍であっても、育成選手が他クラブのトップチームに移籍するときには育成金が発生するわけです。そうすることで移籍に関するフェアでオープンな図式を確保することができる。

もちろん根本的なところで「選手には移籍する権利がある」ということは忘れてはいけないわけで、「育ててやったのに」というのが強制力になるような事態は防がなければなりません。

移籍に関して育成金を多くとろうとする駆け引きがあったりするのは完全NGなわけです。

選手の価値をお金で換算するということではなく、一人の選手を育て上げてもらったことに対する古巣への還元がプロクラブから降りてくることは相互の協力関係をよりよく築いていくうえで必要な要素のはず。

それはつまり、「育成は誰かが、どこかががんばればなんとかなるわけではない」ということの表れでもあり、様々なカテゴリーと年代とレベルのクラブにおいて、それぞれの段階でそれぞれの指導者が、一人一人の選手と向き合うことの大切さにもつながってくるはずです。

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