中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】話題のベジバーガー、食べてみました

こんにちは。水曜日の無料コラム、今日は日本でも話題になったこちらの話題をご紹介します。

「ベジバーガー」はバーガーじゃない? 欧州議会で議論された呼称禁止法の行方

毎日新聞 20201024

 欧州連合(EU)の欧州議会で23日、菜食主義者(ベジタリアン)向けに植物由来の原材料で作られた代替肉の食品に、「バーガー」や「ステーキ」など肉関連の呼称を使用することを禁じる修正法案が審議された。 採決の結果、却下されたが、欧州の「肉食派」と「草食派」の対立が浮き彫りとなった。

修正法案は、食肉・畜産業界からの要望を背景に提出されていた。欧州では健康志向の強い人々や、畜産が多くの温室効果ガスを排出すると主張する環境保護派らの間で菜食主義が広がっている。危機感を強める業界側は、代替肉の食品に食肉をイメージさせる呼び名が使われていることで消費者が混乱し、本物の肉の売り上げに悪影響が及んでいると訴えている。

ドイツのスーパーマーケットではすっかりおなじみになったこの「ベジバーガー」。ラベルに大きく「植物性」と書かれてはいますが、普通の肉コーナーの棚に並んでいることが多いので、紛らわしいと言えないこともありません。逆に言えば、それだけ見た目も味もリアルな肉に近づいていると言ってもいいのかもしれません。

こちらは先日我が家で購入してみたベジバーガー。他にも「ベジソーセージ」「ベジハム」「ベジサラミ」「ベジフライドフィッシュ」などなど、ドイツ人の食卓ではお馴染みの食品の数々が、植物由来のものに置き換えられて開発されています。

これらの商品は以前から存在はしており、実は私も数年前に興味本位でベジミートボールを購入してみたことがあります。当時のものは塩辛くパサパサした食感と固い焼き上がりで、お世辞にもまた食べたくなる味とはいえず、その後しばらく手に取ることはありませんでした。

その後、再びベジバーガーを手に取ることになったのは長男の提案がきっかけです。食肉の生産には、家畜に食べさせるための大量の飼料や水や農地が必要になること、家畜が大量の二酸化炭素を排出することなどから、食糧問題や環境問題をこれ以上深刻化させないためには、肉の消費量を抑えることが不可欠…ということを学校の社会化やYouTubeなどで学習してきた長男。「肉は食べたいし大好きだけど、食べる量は減らしたほうがいいと思う」という彼の発言を受けて、最近の我が家では少しずつ野菜や豆中心の食事の回数を増やしたり、市販の代替肉・魚製品を試したりしています。

先ほどのベジバーガーは既に味つけをしてパテにした状態なので、フライパンで焼いでパンにはさむだけなのですが、さっぱりした柔らかい赤身の肉という感じの味と食感にびっくり。味つけの濃さでパサパサした食感を胡麻化していた昔とは大ちがいで、肉を一切使わずにどうやって肉の味を再現したんだろう?と驚くほどの美味しさです。リアルな肉と比べると多少ジューシーさが物足りなく感じてしまいますが、逆に軽めの食事が欲しいときにはこのくらいが丁度いいとさえ思ってしまいます。

身近にできることから少しずつ環境への負荷を減らさなくちゃね、というゆるい動機で始めた不定期ベジタリアンライフなので、厳格なルールは決めずに2~3日サイクルで肉料理と野菜料理がなんとなく交互になる程度に食べています。スポーツをしている子どもの母親としては、たんぱく質やカルシウム、鉄分などが不足しないかどうかは気になるところですが、そこもあまり神経質になりすぎないようにしています。代替肉製品は値段の上でも普通の肉製品とほとんど変わらないので、家計への影響もありません。

のんびりとした牧場の風景は、貴重な観光資源でもあります。こんな光景が消えてしまうことも考えにくいです

ところで、冒頭のニュースで引用した中にあったような「肉食派」と「草食派」の対立は実際にあるのかというと、それはちょっと大げさな書き方のような気がしています。もちろん代替肉の台頭で肉の消費が大幅に落ち込めば畜産業には大打撃なので、政治や経済の大舞台では大きな駆け引きとなっているのですが、一般消費者目線で言うと自分と違う食生活を送る人同士が分断されているようなことは特にないと思います。また、従来の肉と並行して代替肉の生産・販売に力を入れる食肉業者や飲食店も増えています。マクドナルドやバーガーキングなどの大手ファーストフードチェーンでも2019年頃からベジバーガーやベジナゲットなどが全店で提供され、様々なニーズへ対応できるような社会的要請が高まっている昨今。ゆるい我が家と違って厳格な菜食主義を実践している友人や、宗教上の理由でそもそも食べられるものが限られている友人もいるので、彼らと一緒に食事をするときの選択が増えたのは本当にありがたいです。

元々、多くの移民や難民を受け入れてきたドイツ社会ですから、食の多様性を充実させ、選択肢が増えることで、より様々なニーズにし、より多様性のある柔軟な社会に向けた動きの一部だと考えることもできます。わずか数年で一気に代替肉製品がメジャーになってクオリティも上がったことを考えると、ここから先の数年でさらにまた想像もつかなかった大きな変化が起こるのかもしれません。

今週もお読みくださりありがとうございました。来週もよろしくお願い致します。

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