中野吉之伴フッスバルラボ

ドイツアマチュア野球観戦記。ドイツのスポーツ文化の奥深さを知る。

こんにちは!水曜コラム担当のゆきのです。

先週の日曜日、長男が通う野球クラブでトップチームの試合がありました。今日はその試合の様子をお伝えすることで、ドイツのアマチュアスポーツの姿を感じて頂ければと思います。

ドイツの多くのアマチュアスポーツクラブでは、通常、1種目の中で年齢ごとにチームが構成されています。大人だけのクラブや子どもだけのクラブは少数で、トップチームの下に育成チームがあり、育成では子どもたちが年齢ごとにチーム分けされてトレーニングや試合を行うのが一般的です。トップチームの上にシニアチームを設け、引退後も体力に合わせた競技環境を整えているクラブも多いので、幼稚園児からおじいちゃん・おばあちゃんまで同じチームでスポーツに関わり続けられるのがドイツのアマチュアスポーツの特色です。

息子たちの野球クラブでも男子野球・女子ソフトボールのトップチーム、ジュニアチーム、キッズチーム、そしてシニアチームに分かれて活動を行っていますが、ドイツでは野球はマイナースポーツなので、普通に生活を送っていると野球というものを目にすること自体がまずありません。スポーツニュースの話題にも上りませんし、野球を題材にしたマンガやアニメももちろんありません。プロ・アマ問わず、野球の試合を観る機会自体がドイツではとても貴重なので、コロナ禍を経てようやくトップチームの練習試合が可能になったと聞き、さっそくグラウンドに足を運びました。

試合開始から少し遅れて会場に着くと、おお!「カキーン!」という懐かしい打球の音が聞こえる!球場は市民公園に隣接しているので、日曜日のこの日、フェンスの向こうには少し珍しそうに、でも興味深そうに野球を眺める通りすがりの人の姿もたくさん見られました。

先ほど書いたように野球に触れたことのある人がとても少ない国なので、観客席の横には野球のルールを説明したボードが設置されています。マイナースポーツであるからこそ、ドイツで野球に関わっている人は、少しでも野球というものの存在を知ってもらい、楽しさに触れてもらうため、敷居を低くするためのこうした努力や普及活動にとても熱心です。

野球の基本のきから図解で説明しています

長男の話では、ドイツの人が野球を始めるきっかけとしては、やはり仕事や留学などで本場アメリカに滞在したり、アメリカや中南米にルーツのある人やその家族を通じて野球に触れることが多いのだそうです。一方で、クラブが行っている普及活動や体験教室を通じて野球の面白さに目覚めた人も少なくなく、長男自身も、日本に帰った際に多少野球についての知識は吸収していたものの、野球に興味を持ったのはこのクラブが主催する夏休みの体験教室を通じてでした。

アマチュアであっても、本格的に楽しめるところは楽しみたい!ということで、選手がバッターボックスに向かうときには選手一人一人がセレクトした登場曲がかかります。選手もベンチも観客席もノリノリです。こうした楽しみ方ができる野球の試合は、やはりサッカーとは別のゆったりした時間の流れ方があるように感じました。

非営利のスポーツ団体主催の試合ですが、小さな売店もちゃんとあります。このあたりはサッカーとも共通するところで、収益はチームの運営資金に充てられます。コロナ感染予防対策のため、この日はビン入りのドリンク販売のみでしたが、本来は選手やチーム関係者が手作りの焼き菓子やホットドッグなどの軽食を販売したり、コーヒーやお茶などの暖かい飲み物を提供したりします。ドイツの手作り出店文化(興味のある方は下の記事を記事をご参照ください)は、ここにもしっかり根付いています。

修学旅行、合宿、遠征、演奏旅行。ドイツの子どもは自分で旅費をかせぐ?

この日の試合は、ホームであるフライブルクが他都市から2チームを招いて、3チーム3試合の総当たり戦を行いました。野球のチームは数が限られているので、近隣チームまで車で12時間かかることもしばしば。移動の負担をおさえるために、1日1カ所で実施できる試合数を増やすことがプロ・アマ問わずよく行われています。スポーツを楽しむためには、プレイする側も見る側も試合を重ねることが大切。そんな基本姿勢を守るための工夫だと感じます。私たちは1試合目を見終えたところでグラウンドを後にしました。

いかがでしたでしょうか。このウェブマガジンでも過去にたびたびドイツの野球についてもご紹介させて頂いていますので、その中から2本の過去記事へのリンクをご紹介して本日の結びとさせていただきます。今週もお読みくださりありがとうございました!

スポーツ大国のマイナ―スポーツ。ドイツの野球を通じて見えてきたもの

ドイツの野球からスポーツや教育、子育てを考える(動画)

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