中野吉之伴フッスバルラボ

「新しいことにチャレンジしたいという好奇心は間違いなくあった。けど未知のことに挑戦するときは、やっぱりすごく不安で、怖くて、逃げ出したくなるんだ」

▼ 吉之伴の歩みVol.5

ドイツに渡って3か月の間にミュンヘンで実体験した様々なことを大事に、フライブルクで再出発を図ろう。

よくよく思い返してみると、僕はどうも一度実体験をしてがっつり失敗しないとうまくいかないことが多い。最初からこう、しっかりと対処することがすごく苦手なのかもしれない。

特に当時の僕はとても人見知りで(今でも苦手は苦手だが)、声をかけるのも、どこかに飛び込んでやるにも相当の勇気が必要だったし、しかもかなり自分に無理をして飛び込んでいくので、あたふたぶりが半端ない。

それでいてがむしゃらさを前面に押し出せればいいのだけど、外面だけはクールぶりたいので、不用意な発言をしては、変な空気にしたり、嫌がられたりしてしまう。

そういえば、中学、高校時代も気恥ずかしさを隠そうとしては、不要に強がって時に乱暴で失礼な言葉が口から飛び出すのを抑えることができずに、後で一人自己嫌悪に陥ることが多かったものだ。自分的な許容範囲と、世間一般的なそれとの違いを把握できずにいた。

その当たりの成熟スピードが遅かったのかもしれない。だいぶ。

大学時代からドイツに来てからの僕にも、そうした傾向は残っていたと思う。多少は人との付き合い方には慣れてきても、コミニュケーション能力が高いというわけではない。「俺もう一人前」という強がりの衣を身にまとっていた。

ミュンヘンの語学学校最後の日、クラスのみんなとカフェに行った。同じクラスには日本人が2人いたのだが、この日まで一度も声をかけることができないままでいた。好天のオープンカフェ。初めて少ししゃべった。楽しい時間だった。

「フライブルクでも頑張ってね」

そう励ましてもらって、素直にうれしかった。2人とは30分くらい話しただけなので、いまは名前を思い出すこともできない。

もっと早くに自然体で話しかけていたら、ミュンヘンでもっと居心地のいい生活感が生まれていたかもしれない。部屋探しももっと違うやり方を知ることができたかもしれない。そんなことを当時ちょっと思ったりもした。

成長も成熟も人それぞれ。今の僕なら当時の僕にそう伝えるかもしれない。試してみる段階が次の段階でやりやすさを導いたり、それがその先で成功に結びつくなら、大事な歩みではないか、と。

いろんな経験が人を形成するのだから、いろんな「やってしまった」「こうしとけばよかった」「ああしておいたらもっとうまくいったはず」という反省を次に生かせるようにすることが大切だぞ、と。

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