中野吉之伴フッスバルラボ

【TR理論】サッカーにはどんな局面があり、それぞれでどんなプレーが求められるだろうか。メカニズムを整理したうえで、プレーの優先順位をつけたい

これまでも「サッカーのメカニズムを知ろう」という話をした

サッカーは目まぐるしく攻守が入れ替わり、各ポジションでそれぞれの選手が状況を認知し、どんな選択肢があるかを即座に判断し、整理された優先順位から「今すべきプレーを決断し、実際の動きへ」とつなげていかなければならない。

その場限りの思いつきとカンだけを頼りにプレーをしていては、チームとしての戦い方にまとまりができない。試合における状況や流れといった「メカニズムを整理する」ことは、「今の状況がどんな局面でどんなプレーが求められているのか」の判断をする上で大きな助けになる。

では、具体的に「サッカーにはどんなメカニズムがあるのか」を今月はテーマとして取り上げて考えてみたい。

1.攻撃
2.攻撃から守備への切り替え
3.守備
4.守備から攻撃への切り替え

サッカーではこのように大きく4つの局面に分類されるのは周知の事実だ。

ただ、前述したようにサッカーでは目まぐるしく攻守が入れ替わる。「攻撃」をしていてボールを奪われたから「攻撃から守備へと切り替え」、そこから「守備」をして奪い取ったら、「守備から攻撃へと切り替え」、というふうにすべてが滑らかに移行していくわけではない。

「攻撃から守備への切り替え」といっても、どの位置でどんな攻撃をしていて奪われたのかで対応は変わる。あるいは、自分たちのミスで失ったのか、相手の狙い通りの守備で奪われたのかでも展開は変化する。どちらに転ぶかわからない「ルーズな状況」というのも間に入ってくる。

そこでここではボールを中心に試合の流れを分けて、次の3つの局面に大別してみようと思う。

・自分たちのチームがボールを持っている
・相手チームがボールを持っている
・どちらのボールにもなっていない

自分たちのチームがボールを持っているときは、 《自分たちでパスを回しながら攻撃の準備をする=ビルドアップ》と、《チャンスを作りやすい状況を作るために、優位性が取れる場所を生み出し、そこへボールを運んでいく=ゲームメイク》、《主導的な仕掛けでゴール前の相手守備を崩す=チャンスメイク》、《狙いを持った動き出しとポジショニングからシュートへ持ち込む=ゴールメイク》の4局面がプレーの判断基準として必要になる。

相手チームがボールを持っているときは、《奪われた後すぐにボールを奪い返しに行く=ゲーゲン・プレッシング》、《状況に応じて一部の選手が相手の攻撃を遅らせるためにアプローチをし、他の選手が戻って守備陣形を整える=リトリート(部分リトリート、全体リトリート)》、《整えた守備陣形からチーム・グループでボールや相手選手の動きに応じてスライドしながら対応する=スライド》、《自分たちの動きで相手の攻撃を制限し、ボール奪取のチャンスを狙う=プレス》の4局面。

どちらのボールにもなっていないときは、《マイボールにできる確率が高い状況》、《相手ボールになる可能性が高い状況》、《どちらのボールにもなりうる状況》の3局面だ。

守備から攻撃への切り替えに関して考えると、ボールを奪ったときにどの局面に持ち込めるかの判断が大切になる。一気に《チャンスメイク》あるいは《ゴールメイク》に持ち込めれる状況ならば素早く攻めるし(カウンター)、相手守備の対応が早い場合はまず《ビルドアップ》あるいは《ゲームメイク》の段階に戻して仕切り直しをするという感覚でとらえてほしい。

このように流れと共にプレーの判断ができるようになることが重要な要素だ。

ここから一つ一つのプレー局面を分類し説明していくが、それはあくまでもそうすることが理解を深める一助となるからであり、学術的に便宜上そうしているという点を念頭に置いていただきたい。

試合でもトレーニングでも、それぞれの局面だけを切り取って考えずに、つながりがあり、攻守の切り替えがある中で最適なプレーを整理できるように導くことが必要なのだ。

【自分たちのチームがボールを持っている】
1.ビルドアップ
2.ゲームメイク
3.チャンスメイク
4.ゴールメイク

【自分たちがボールを持っていない】
5.ゲーゲンプレッシング
6.リトリート(部分、全体)
7.スライド
8.プレス

【ルーズボール】
9.味方よりのルーズボール
10.相手よりのルーズボール
11.どちらともいえないルーズボール

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