Jウォッチャー ~日本サッカー深読みマガジン~

エントリー不備事案について「こうしたことを2度と繰り返さないために、より良いレベルでどういう知恵を出すことができるのか、各クラブからも提言がありました(村井チェアマン)」~2021年度第8回の理事会より(2)~

8月26日、Jリーグの2021年度第8回の理事会が行われ、理事会後WEB上で記者会見が行われた。

今回は会見での質疑応答の様子をお届けします。

(1)はこちら


○村井満チェアマン

Q:今日の議題ではないのですが、浦和や福島などで発生した出場資格をめぐる問題(エントリー不備事案)について。今回CASでの係争案件なので個別の事情についてはお話いただけないかもしれませんが、先般リリースの中で『エントリーのチェックの仕方について中長期的に考えた時に抜本的に見直すことでヒューマンエラーを無くしてしていきたい』と書かれていました。チェック方法について現状どういうイメージで見直しを考えているのか教えてください。

※村井チェアマンが回答
「今日たまたま理事会の中の決議事項ではなかったのですが、報告事項として本件を報告申し上げたので、まずどういう報告を理事の皆さんにしたのか触れさせていただいて、その上でMC(マッチコミッショナー)への対応の仕方についてお伝えさせていただきます。

今回の事案について、理事会で説明した概略について上の画像で説明させていただきます。

左側の青い部分、いわゆるオン・ザ・ピッチの関する事案に関して、もしくはピッチに出場する出場資格については、これは明確に規律委員会マターであると定められています。このオン・ザ・ピッチに関するものの中でも、例えば差別的事案や八百長事案についてはチェアマンが管轄するということに個別具体的に定義も明確に示されています。それ以外のオン・ザ・ピッチ事案、今回のような事案については規律委員会でということが定められています。
この規律委員会はご存じの通り、チェアマン不介入の原則がありまして、1つ1つの事象にチェアマンが介入してはならないとしていて、規律委員会メンバーにもJリーグの幹部はアポイントされていませんし会議にも召集されていません。

今回はまず規律マターということで判断されるわけですが、よって立つ根拠はJFAの懲罰規定に基づいて出場資格や競技会や競技そのものに関しては統一ルールで適応されます。これは高校サッカーであろうが大学サッカーであろうが、競技に関する事案についてはまず前提としてJFAの懲罰規定(PDF)が適応されます。その適応範囲はJクラブ関係者に限定されています。ですので、今回の浦和や福島の事案に関しては出場資格に関わるものですので、規律委員会が判断し、その結果がクラブに内容が通達される構造になっています。

まずこの規約体系の中で意味することは、選手の出場資格に関するものは、全てJクラブがその責任を担っていて、最終的な責任をクラブが負うという構造になっています。登録選手の中で誰が検査を受けているのか誰が検査を受けていないのか、そういった全体像をわかっているのはクラブです。その中で例えば規約上Jリーグの公式検査を受けていない人が例外適応としてエントリー資格認定委員会に諮って出場資格を得るようなバックアップの体制もあります。この全体で誰が検査を受けているのか、そして認定委員会に誰を出すべきなのか、その全体像を把握しているのはクラブですので、クラブが最終責任を負う構造の中に今回の事案があります。


一方で右側のグリーンの方に、我々Jリーグの方としてもMCへのバックアップをしっかりするために、エントリーリストの提出先がMCになっているので、MCの方でもある種ダブルチェックの意味合いでもエントリー者をしっかりチェックしてくださいとしています。これは懲罰規定や出場規約とは別にチェアマンからマッチコミッショナーに要請しています。今回の中ではMCの職責が果たされていれば回避できた事案もあります。そういう意味では今回のチェック漏れや福島のようなケースで言えばMCの助言がクラブへの誤解を与えてしまうこともありました。これはJリーグ規約にMCの職務という項目の中に記載があり、チェアマンが要望したことはMCが履行しなくてはいけないタスクということになります。

けれども今回はそこが明確に果たせなかったので、MCはクラブ関係者ではなくJリーグ関係者になります。今回の事案の処罰対象にはなりませんが、チェアマンの要望を違えたということであり、その職責を十分果たせなかったことで、それぞれの委任契約に基づいて処分を科すことになりました。

今回MCに関しては、期間を定めずに任用することを控えるような処分を科したわけです。MCへの要望とクラブへの責任が完全にそれぞれが独立している関係だということが前提の中で、今回MCがより職責を果たせるためにはどのようなアプローチが必要なのかということを協議してまいりました。

先立つこと今週の月曜日(23日)にJ1・J2・J3で分科会を行いました。それぞれの会で本件の報告も実行委員に行っています。当該クラブの責任はMCの作為・不作為で免責されることがないことを前提にしつつも、つまりクラブ側に責があることを前提として、こうしたことを2度と繰り返さないために、より良いレベルでどういう知恵を出すことができるのか、各クラブからも提言がありました。

現在は、コロナ禍で試合開始70分前に行われる両クラブの実行委員、監督、MC、レフェリーが一同に会して、試合に関する留意点を共有する『マッチコーディネーションミーティング(MCM)』という場がありました。一方で密を回避するそしてスタジアムによって諸室の構造がずいぶん違うので、今シーズンはMCMが行われないことを決めていました。ある実行委員会からは、『クラブ側に責任があるもののダブルチェックをそれぞれがスタンドアローンでやるよりは、一同に会してお互いにシートを見ながら補完し合いながら会してやる方がいいのでは』とか『それはすぐにでもやるべきことだ』という要望もありました。
仕組みやシステムを変えることなく現状でできることは、MCMのようなものをJリーグは預かって検討していくと申し上げました。

一方で、(今回の事案は)ある意味でのヒューマンエラー(が原因となっていました)。我々が2週間に1回の定期公式検査の結果をクラブに通達して、それを元にクラブはエントリー者をチェックして、それを提出するようになっていますので、提出が紙になっているので、あらかじめシステム化されているものであれば、例えばラジオボックスをチェックするだけでエントリ―ができる、その内容がその後も保管され閲覧できるようにしていきたい。今回に関しては提出された書類が廃棄されていたという事案もありましたので、後日確認できるような状況や仕組化・システム化について、このあたりはJリーグが対応していくことを申し合わせています。システム投資については少し時間がかかることなので、来シーズンからとなりますが、今シーズンできることは、MCMのようなもの、もしくは提出した書類の保管を義務付けるようなこと、そしてすでに行っていますがMCへの啓発の研修を繰り返し行うことを申し合わせている次第です。全体像について私の方から説明させていただきましたが、補足することがあればお願いします」


(フットボール本部・黒田氏が補足)
「現状どういうメンバーのチェックの仕方をしているか、今後どうしていくのか少しお話させていただきます。
試合会場ではクラブの方からMCに対して、2つの書類を出してもらっています。
1つはメンバー提出用紙と呼ばれるものです。これはコロナ前から運用している用紙です。システム上からクラブがダウンロードして、その日エントリーする選手についてクラブが手書きで1番から18番目まで入力する紙を出しています。そこには規律関連で出場停止が出されている選手には停止と書かれていて、入れられないようになっています。もう一つはエントリー可能者リストと呼ばれるもので、これはコロナ禍になってJリーグがクラブの皆さんと会議を重ねて理事会で規約を反映させて決めたルールです。このエントリー可能者リストは公式検査で陰性を得た選手の一覧および公式検査を何らかの理由で受けられなかった選手に対して、クラブがエントリー資格認定委員会に申請して、代替となる検査等で陰性を得ている場合にエントリー可能だと認められている一覧です。このエントリー可能者リストはデジタルデバイスでMCに見せる形での提出でもOKとしています。それを預かったMCが現場でメンバー提出用紙とエントリー可能者リストを統合させて、両方にちゃんと載っているか目視で確認をして、最終サインをしてエントリー完了となります。これがヒューマンエラーが起こりやすい仕組みが起きやすい仕組みと説明しているものです。紙と紙でチェックしているので、今回のようなミスが発生してしまっています。
改善策としては先ほどチェアマンが申し上げた通りですが、来期スタートを一旦目指して検討していますが、メンバー提出用紙を出力している大元のシステムとエントリー可能者リストを生成しているシステム。この2つのシステムの同期というかシステム上つないでエントリーできる選手しかシステム上に出てこないような形でできるようなことを今考えています。そうすることで、極論を言えばMCによるチェックの必要も無くなるのでチェック間違い自体起こらなくなるので、それがどういうふうにできるのかというのを鋭意検討しています」

(3)へ続く

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ