Jウォッチャー ~日本サッカー深読みマガジン~

【資料】これまでの大会方式に関する議論の経緯とポイント

■これまでの大会方式に関する議論の経緯とポイント

1. 現在の 2 ステージ制+チャンピオンシップ決定プロセス
(1)2013年9月17日(火)の理事会(大東和美・前チェアマン)において、2015シーズンより「2 ステージ制および スーパーステージ(1 回戦・準決勝に相当する部分)+チャンピオンシップ(決勝に相当する部分)」という大会 方式に移行することを決定。

(2)新たな大会方式導入の理由は、「Jリーグへの関心度の低下」「テレビ放送の減少」「放映権料やスポンサー 収入の頭打ち」「入場者数の微減」といったJリーグを取り巻く環境の中Jリーグの「収入増」と「メディア露出 増」の両方を実現するためのものであった。

(3)同年12月17日理事会において、2015シーズン以降の新しい大会方式「2ステージ制およびスーパーステー ジ+チャンピオンシップ」の中の「スーパーステージの詳細ルール(やぐらの組み方)」に関して、「ステージ優勝と年間勝点上位3位までのチームに重複があっても4位以下のクラブの繰り上げを行わない」という一部変更を決定し大会の詳細が確定し、同日開催の理事会後記者会見にて発表。

(4)同日、新たに「マーケティングパートナー」として2014 年から株式会社電通と 5 年間の契約締結が理事会で承認された。当時 2014 年の J リーグ収入は 10 億円程度の減収が懸念されていたが、この契約もあり2014年決算は減収を回避することができた。これにより J リーグにとって収入面での課題(減収リスク)は解決されたが、 関心度の向上とメディア露出の増加は引き続き課題として残されたテーマとなった。

2.「2015 年の2ステージ制+チャンピオンシップ」実施とその軌道修正
(1)2014 年1月31日、村井満が第五代チェアマンに就任。2014シーズンは従来通りの大会方式にて実施。

(2)2015シーズンより 2013年時点で決定している新しい大会方式「2 ステージ制+チャンピオンシップ(「スーパ ーステージ+チャンピオンシップ」を総称して「チャンピオンシップ」とすることを2014年12月に発表。)」をスタ ート。

(3)2015年の新大会方式において、特に1st ステージ終盤でのメディア露出は新聞露出件数で前年比136%、 試合中継以外のテレビ放送時間で同236%となるなど中盤における山場作りという意味では一定の実績を残 した。また11年ぶりに地上波ゴールデンタイムに放送されたチャンピオンシップの第 1 戦(TBS)は 7.6%、 第2戦(NHK総合)の視聴率(関東エリア)は10.4%であり、単純計算で合計18%、のべ1800万人以上の方々 がこの2試合だけで視聴されたことになる。また入場者数でも初の公式戦年間総入場者数が1000万人を突破 することとなった。 ※その他 2015 年度総括は、2015 年 12 月発行の PUB レポートを参照。 ( http://www.jleague.jp/docs/aboutj/pub.pdf

(4)懸案事項であったメディア露出面では一定の成果が観られたものの、「チャンピオンシップの出場チームのト ーナメント表が毎節入れ替わるなど分かりにくい」という意見や「年間勝点への配慮において一貫性がない (J1昇格プレーオフでは、年間勝点上位のクラブに優位性が確保されているのに対して、2015シーズンの チャンピオンシップでは「年間勝点上位のチームに優位性がない」)といった声も聞かれた。そのため2016 シーズンから以下の 2 点について修正を加えた。
① 明治安田生命J1リーグ年間勝点 1 位チームの決勝へのシードは変わらず、年間勝点 2 位と 3 位チー ムが1回戦のホームチームとなるよう変更し、年間勝点上位 3 チームのトーナメント表を固定した。
② 試合方式において、1回戦と準決勝では、90分間で勝敗が決しない場合、年間勝点上位チームを勝者 とする。また、決勝(ホーム&アウェイ方式)では、2試合を終えた時点で勝敗、得失点差、アウェイゴー ル数が同じ場合、年間勝点 1 位チームを勝者とする。

3.新たに発生した日程面での課題

(1)現行大会方式「2ステージ制+チャンピオンシップ」が決定された 2013年9月のJリーグ理事会時点では、 AFC チャンピオンズリーグ(以下 ACL)の2015~2018シーズンカレンダー案での決勝は「11月後半にシングルマッチで」という案で設定されていた。

(2)2014年10月2日 AFC競技会委員会において ACL2015のR16のホーム&アウェイおよび決勝のホーム&アウェイ週末2試合日が必要となることが決定。

(3)この決定により、2015明治安田生命J1リーグにおいては11月終盤まで公式戦を開催するために、リーグ戦最終節とACL決勝を同日に設定し、ACL決勝進出クラブの最終節試合を、最終節の前に設定した予備日において先行開催する、という措置をとることとした。

(4)しかし、2015年のACL準決勝でガンバ大阪が広州恒大に勝って決勝に進出していた場合、リーグ戦最終節のうちガンバ大阪とモンテディオ山形の試合だけを前倒しで開催していたことになる。つまりガンバ大阪とモンテディオ山形の年間成績だけが決定したあと、残り16クラブが最終節を戦うことになる。その場合、「あと何点取って勝てばいい」「引き分けでいい」等試合前からあらかじめ計算した上で最終節を戦うことも可能で、「競技のインテグリティーを確保することが極めて難しくなるというフェアネスの確保」が顕在化するリスクが内在している日程とも言えた。

(5)また、FIFA クラブワールドカップの開催前にチャンピオンシップを終了させるという目的もあり、2016シーズンからは ACL決勝とリーグ戦の最終節を重ねないことを最優先した結果、11月3日でリーグ戦の最終節を開催することとした。なお2015年は ACLの決勝が11月の第1および第3週末の開催であったが、2016年は11月の第3および第4週末と連続した日程になったことも、11月3日でリーグ戦を終了しなければならない要因となった。

(6)この結果、2016シーズンにおいては、チャンピオンシップに出場せず、かつ天皇杯を3回戦(9月3日)までに敗退したクラブにとっては11月から翌年2月までの約4ヶ月間に渡って公式戦開催がない状態となり、日本のサッカーの強化と発展にとって適切なカレンダーを設定できていると言い難い状況であり、「年間カレンダー組成」という根本的な課題の解決を模索しなければならない状況を迎えている。

(7)なお本年4月に発生した熊本地震の影響でロアッソ熊本は5試合の日程変更を余儀なくされた。仮にロアッソ熊本が 2ステージ制のJ1に所属していたとしたら、同一ステージ内で代替試合を開催することは極めて困難であり、6月25日の1stステージ最終節でステージ優勝が決まらない可能性もあった。

4.今後の大会方式の在り方に関するステークホルダーの意見集約
(1)ファンサポーターの意向調査
①Jリーグは2013年の大会方式検討時から2015シーズン開始前、2015シーズンチャンピオンシップ後、 2016シーズンの1stステージ終了時とポイント毎に「2ステージ制+チャピオンシップ」の大会方式の認知・賛否・興味・話題とその観戦意向や理由を定点で調査している。毎回、賛否両論がある状況だが、現状では賛否の状況は拮抗してきている。
② 「大会方式として、1ステージ制と2ステージ制のどちららよいか」との設問に対しては、スタジアム観戦層では両案均衡だが、全体では「1 ステージ制の支持が優位」。1 ステージ制に戻すことへの賛否についてはスタジアム観戦層で賛成 63.0%と反対を訴える層は少ない。

(2)日本プロサッカー選手会(JPFA)の意見
これまでJPFAとJリーグは、月に一度の頻度で事務レベルでのミーティングを行ってきた。特に日程の問題は 毎回意見交換をしてきたが、その中では「オフが揃わない(全員が同じ時期に十分にオフを取り、しっかり準備して開幕を迎えたい)ことによるコンディション調整面での懸念」「4ヶ月間リーグ戦がないことによる強化面での不安」といった意見が大勢を占めていた。

本年9月2日には、高橋秀人会長とチェアマンが直接コミュニケーションを取り、2ステージ制に関する選手会からの意向を確認した。選手会はJ1の選手会支部長を通じてJ1各クラブの選手にヒアリングした内容を報告したが、「1ステージ制」に対しては約8割の選手が賛成という結果であった。さらに、10月3日の労使協議会の場でも大会方式のあり方について意見交換を行い、選手会としての意向を確認した。

(3)Jクラブ関係者の意見
各クラブの社長を中心とした実行委員、また選手契約担当者といった関係者ともJリーグのあり方について議論を重ねてきたが、「シーズンの終了を揃えるべき」「もっと国際経験をする機会を創出するべき」「日本代表の活動とJリーグの活動期間を分けるべき」といった意見がある中、「J1を 1 ステージ制に戻してほしい」という意見が大半であった。 約4 か月に渡って必要以上にオフ期間が長期化することによる選手強化面での影響や試合開催がないことに よるクラブ経営面でのマイナスインパクトについての言及もあった。

(4)パートナー企業様からの声
「サッカー界にとってプラスになる方向で経営判断をしていただきたい」というお話もいただいていた。各ステークホルダーともビジネス面(興行面)、競技強化面の双方からの最適解を模索してきた。

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