「football fukuoka」中倉一志

長谷部茂利/「個々の成長はあったと思うがチームとしての成長はまだまだ足りないと感じている」:【アビスパ’s Voice】

内容:練習後の共同囲み取材
日時:2024年11月19日(火)
場所:雁の巣球技場にて

◎長谷部茂利監督;
【TV幹事社による代表質問】
Q:まず、リーグ戦のことについて触れさせていただきます。C大阪戦から浦和戦に向けて少し期間が空く中で、今どういったことに取り組んでいるのか、見つめ直しているのかという部分について教えてください。
「まずは少し休むこと。リフレッシュして集まってもらって、後半戦、2回戦目は得点がなかなか取れていないというのが実情ですので、そこのところを選手とともに磨いて、点数を取れるようにという取り組みをしています」

Q:先日のトレーニングマッチではナッシム選手も少しプレーされました。今日の全体練習でも、コンディションのことなどをトレーナーと話しながらコミュニケーション取っていたようですが、残り2試合に出場のチャンスはあるのでしょうか?
「もちろんです。まだコンディションは100%とは言えない状態で、私の目から見ても、本人のフィーリングも、おそらくそうだと思いますが、ただ限定された残りの試合ですから、その中で決断できれば試合に使います。決断次第ですね、そういう状況です」

Q:監督は彼のどういったところに期待されていらっしゃるのでしょうか?
「攻撃面。特にアシストやシュートのところは長所として持っているので、それをチームに還元というか、貢献してもらいたいし、それ以外のところでもサッカーIQの高い選手ですね。持っているものは相当レベルが高いです。いろんな面でそういうものをプレーで表現してくれたら、チームにとっては非常にいいことだと思います」

Q:順位的に見ますと、目標としていた6位以上というところの可能性はなくなってしまいましたが、まだトップ10の可能性はあります。反面、下の順位のチームもひしめいているということで、次の浦和戦、最終戦の川崎戦、この2試合の位置付けというか、どういうモチベーションで臨まれるのでしょうか?
「まず一桁順位で終わるということ。6位はなくなりましたけれども、そこに近づけるように一桁順位で終わりたいというところです。アマチュアではないので、そこに多少なりとも賞金がかかっているので、そこに手が届くように、そこに入れるようにという想いです」

Q:全体的な振り返りについても聞かせてください。今シーズンは序盤に鹿島戦で勝ってから8試合負けなし、その後3連勝もありましたけれども、夏はかなり苦しい戦いが続き、そして怪我人も多いという状況の中で、どういった形でマネジメントをされていたのでしょうか?
「いい時も悪い時も、選手の能力がピッチで発揮されるようにということをいつも考えてマネジメントしていますが、怪我をしてピッチに立てない、また負けている中で必死にやっている中でも結果が出ないというのは、おっしゃる通り、夏場はそういう結果になってしまったと思います。でも、そこは大量失点してしまってチームがバラバラになってしまったというわけではなくて、チームとしてはもう少しのところ、もう一息、あと一歩のところで勝点を取れるという状況でしたし、10何連敗したわけではないので決して悪かったとは思いません。ただ、勝点の積み上げが足りなかったなと、そういう想いです」

Q:ウイングバックのところ、センターバックのところなどは相当苦労されたのではないでしょうか?
「手術をするような大きな怪我人が何人も今シーズンは出たという状態なので、そういう意味では、本来ある力を発揮できていないというのが私の見解です。ただ、そこに代わって出る、もしくはチャンスを待っている選手というのはいるので、そこでまた出た選手が長所を活かして自分のプレーをして、チームを無失点であったり、最少失点であったりというような働きをしてくれているというふうに思います。どのチームもそうだと思いますが、特に手術をするような大きな怪我、長期離脱という選手たちのチームに対する影響は大きいです」

Q:一方、得点力不足というところは、チームとして毎年のように向き合ってきたここ数年の課題なのかなと思いますが、この点はどう捉えてらっしゃいますか?
「課題ですね。これはもう間違いなく課題で、自分たちが変えていかなくてはならない問題です。周りはあまり関係ない、他のチームがどうとか、カテゴリーに関係なく、アビスパ福岡というチームがもっともっと得点を取れるチーム、クラブになっていかないといけないというふうには思っています。この課題は永遠に、どのチームでも優勝するまでは、最高峰の舞台、最高峰の大会、最高峰のカテゴリーで優勝するまでは、おそらくずっとつきまとう課題だと思います」

Q;この5シーズンという部分でも伺わせてください。まずチームを離れるという決断をされた理由はどの辺りだったのか。そしてそのタイミングはいつだったのか。いかがでしょうか?
「当然、自分自身がオファーを受けて嬉しい、評価をされているという想いがありました。オファーを受けてから、7月の末ぐらいに自分の中で考えを固め、8月下旬以降ですかね、そのタイミングで、このクラブがもう少し良くなる、飛躍するためには、自分自身がここで去ることがひとついいんじゃないかというふうに決断しました。みなさんの会社でもあると思いますが、リーダーが代わると物事は大きく変わります。私は今、アビスパ福岡のトップチームのリーダーです。リーダーっぽくないんですけれども(笑)、そのリーダーが代わるということは少なからず何かが変わります。良いか悪いかは分かりませんが、必ず良い方に行くんじゃないかと。今の私がリーダーをやっているまま、現状のまま進んでは、今シーズンの目標であるリーグ戦6位以上というのは難しいんじゃないかという最終的な判断です。それで決めました」

Q:ということは、シーズンの頭から、ある程度、最後になるんじゃないかということを決めていたわけではなくて、オファーを受けてから考えを重ねた結果ということでしょうか?
「いえ。先ほど5年間の話ということを単語で出していただきましたが、最初から自分が目標を達成できなければ身を退くというか、プロである以上、それは私たちの世界では当たり前のことで、それはいつも考えています。ですから1年目、2年目、3年目、4年目と、すべての目標をクリアしたわけではないですが、必ずひとつは目標を達成してきたと思います。それができた4年間でしたが、今シーズンに関しては何ひとつ目標を達成することができなかった。それは監督の責任です。どの監督さんもおっしゃいますが、私の場合は重く受け止めています。それがリーダーの交代に直結していると、そういうふうに考えています」

Q:この5シーズンは、J2からスタートしてJ1に上がり、定着をして、リーグ戦、リーグカップ、天皇杯と、長谷部監督とともにクラブは新しい歴史を作ってきました。改めて振り返っていただいて、長谷部監督にとってどのようなシーズンでしたか?
「毎年毎年違った顔を見せるチームと、我々のように常にどうにかしてもがきながらJ2からJ1に昇格し、J1でも鎬を削るような、どうにかして勝点を取るような戦いを繰り広げて今に至っています。なので、そこに至るまでに選手、スタッフの努力であったり、もちろん選手を集めてくれたクラブ強化部に感謝しなくてはならないし、そういうことの積み重ねでやっとの想いでここまで来た、ここまでやれているという想いです。ただ、今シーズンに関しては、先ほど申し上げたように今の言葉と違うことが結果として現れているんで、そこについては先ほども言った通りです」

Q:まだ2試合ありますから変わるかもしれませんが、この5シーズンの中で一番うれしかったことは何でしょうか?
「一番は雰囲気が良かったということ。練習から、試合から、スタジアムから、常にこうやってみなさんに集まっていただいて、カメラが1台、2台ではなくて、たくさん回していただいて、いろんな方に応援されて、選手たちも充実した、そういう雰囲気を持って、ここまで4年と数ヶ月来ることができています。当然、時々連敗してしまった時は空気も重くなったりしますが、怒ったり、泣いたりもありますが、喜怒哀楽の中で、喜びの雰囲気が長かったし、多かったので、そこは非常に良かったなと思います」

Q:そんな中で、『これがアビスパだ』と示せたのはルヴァンカップの優勝ゲームでしょうか?それとも他にあるのでしょうか?
「そこは一つのポイントだったと思いますが、自分たちの最高のパフォーマンスをあの大会で、決勝戦で出せたと思います。ただ、私自身はゲームだけではなくて、他のゲームでもたくさんいいものを見せてくれたし、見せることができたし、応援してもらうに値する選手たち、スタッフの表現力、プレーだったんじゃないかなと思います」

Q:あの時のスタンドの光景はいかがでしたか?
「やはり、ゴール裏に1万5000人はなかなかいい、力をもらうというか興奮しますね」

Q:日常を過ごした雁の巣での日々というのはいかがでしたか?
「これは特にないです(笑)。ピッチの中はいろんなことがありますね。若い選手の成長だったり、ベテランの奮闘だったり、怪我から上がってきてやっとボールを蹴れるという喜びだったり、散々注意をして、もうものすごくデリケートな状態でピッチに入ってまた怪我してしまったり、そういうこともあったんですけれども、それもすべて自分の5年間の一部だなというふうな想いはありますけれども、特にないです」

Q:監督は時折『このアビスパというチームは上手な選手が揃っているわけではない』というふうにおっしゃっていました。そういった中で、監督として一番大切にしてきたことというのはなんでしょうか?
「自分の中では選手、スタッフが成長するということ。今、技術的な話をちょっとされましたけれども、そこもそうですし、『僕は下手だからボールは触らない』『ボールは取れないから取りに行かない』『背が小さいからヘディングは競らない』とか、そういうことは私のチームではあってはならないので、そういう意味では、いろんな工夫をしながら、努力をしながら成長していく、向上していくことを、いつも選手、スタッフには問いかけていました。それがこだわりという言えるのか分かりませんが、その中で毎試合勝負があって、勝ちにこだわるということに関してはこだわっていましたけれども、大事にしてきたことは選手たち、スタッフの成長ですかね」

Q:質問が重なるかもしれませんが、資金的には決して潤沢ではないこのクラブにあって、ビッグクラブに立ち向かうために求めたものは、どういったことでしょうか?
「勝負に徹することですね。どうしたら勝点を取れるか、試合に勝てるか、引き分けられるか。そこに徹することが大事だと思います。その目を見誤らない。ベクトルを合わせる。相手が11人で戦うのであれば少し人数を増やして戦おうかな、無理かな(笑)。でも、そういうこともあっていいんじゃないかという。選手を11人より多く並べることはできないけれども、スタッフもその中に入って戦う。もちろんピッチの中には入れませんが、そういう空気であったり、自分たちのピッチの中での戦術、戦略、やり方も含めて、そういうビッグクラブと呼ばれるようなチームに勝っていかなければ、あるいは引き分けていかなければ勝点は取れないので、そういう想いですね。勝ちにこだわる。多方面からそう考えています」

Q:必死に身体を張ってゴールを守る。まさに働きバチのように全員で攻め上がったり、そういうスタイルが5シーズンでできたなというふうにも感じます。このチームの5シーズンの成長ということについては、どのようにご覧になっていますか?
「個々の成長はあったと思いますが、チームとしての成長はまだまだ足りないと思います。ベスト5とかベスト3などと言われますけれども、勝手にベスト6にしますけど、やはり6位以上に行くにはまだまだ力が足りないなというのはあります」

Q:アビスパ福岡というクラブは、長谷部監督が去られてからも、50年、100年と続いていくクラブだと思います。このチームの発展に向けてのメッセージなど、思うところあればお願いします。
「引き続きアビスパ福岡を応援いただいて、選手、スタッフは元より、クラブの人間は、とにかくアビスパ福岡をみなさんの元に喜びだったり、時々悲しみもありますが、そういうものを届けていくと思います。ですから応援をやめることなく、さらに1人、2人増やして、スタジアムが満員になるように支えていただければと思います。福岡はスタジアムが小さい、もっと観客席の多いスタジアムを作らなければならないというような、そういうポテンシャルの、そういう熱のある地域だと思うので、ぜひそこに手を貸してください」

Q:アビスパのファン、サポーターは、長谷部監督にとってはどういった存在でしたか?
ありがたい存在です。私自身を応援していただく方はもちろんですけれども、やはりチームを後押ししてくれている、優しい声かけ、時には厳しい言葉、叱咤激励も含めて自分たちを支えてくれてるんだなというのはひしひしと感じておりました。どうもありがとうございました」

[中倉一志=取材・構成・写真]

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