「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【記者会見 YBCルヴァンカップ決勝 福岡-浦和】「信じて付いてきてくれたみなさんにお礼が言いたい」/長谷部茂利

JリーグYBCルヴァンカップ決勝
2023年11月4日(土)13:12キックオフ
会場:国立競技場/61,683人
結果:アビスパ福岡 2-1 浦和レッズ
得点:[福岡]前寛之(5分)、宮大樹(45+4分)、[浦和]明本考浩(67分)

◎長谷部茂利監督(福岡);
Q:試合を振り返って
「ここまで来るのに時間はかかりましたが、福岡がこれだけ力をつけて、みなさんの前で、華麗ではありませんでしたが優勝を勝ち取るような力をつけたということを嬉しく思いますし、証明できたんじゃないかなというふうに思います。やってきたことが間違ってなかった。信じてよかった。信じて付いてきてくれたスタッフと選手、またファン、サポーターも含めて福岡のみなさんにお礼が言いたいです。ありがとうございました。

それと、今日、浦和さんのファン、サポーターがこれだけ盛り上げて、『絶対に勝つんだ』という本気の浦和レッズに対して、自分たちが真っ向勝負で戦ったというところ、この雰囲気を作っていただいた浦和ファンに本当に感謝を申し上げたい。余談ですが私は浦和生まれです。浦和の良さというか、浦和はすごいんだというところをこれからも見せ続けてほしいし、今日は何回かに1回しか勝てない、パスの本数も含めてなかなか勝つには値しない。アタッキングサードのシュート、ゴールのところでは我々の方が上でしたが、それ以外ではなかなか内容のところでは勝てていませんでした。残り試合数は少ないですが、リーグ戦のところで上位にいますし、ACLもありますし、またこれからも日本を引っ張っていただきたい。また、我々はそこに付いていけるように、少しでも差を縮められるように努力していきたいなというふうに思います」

Q:今日は前寛之選手をシャドーの位置で起用されました。あの位置で彼をプレーさせるのは監督が福岡にいらっしゃってから初めてのことだと思います。その狙いを教えていただけますでしょうか?
「相手に対して自分たちが機能すること、また、守備でも攻撃でも自分たちの強みである部分、それを理解して実行できる人間、コンディションも含めてシャドーのポジションで使いました」

Q:前選手はMVPに選出されましたが、貴重な先制ゴールだけではなく左サイドでの守備の部分でも貢献していたように思います。彼の評価はいかがでしょうか?
「非常に良かったと思います。また攻撃でももっともっと活躍できると思うので、これからもっと実力をつけて、浦和さん相手でも、強い相手でも、攻撃の面でも良さを出せるようにしてほしいなと思います。評価は非常に良いです」

Q:今日はいろんなことを考えられた中で、立ち位置も含めて戦われたと思います。かなりうまくいったのかないう印象ですが、どのあたりが勝負のポイントだったと振り返っていらっしゃいますか?
「選手たち、またスタッフも含めて、この一戦にかける想いというものを恥ずかしがらず、泥臭く、また自分たちができることをすべてやり尽くしてこのゲームに挑んでいると思います。その辺の姿勢や意気込みというのが、一つひとつのプレーや球際、ゴールを取った最後のパス、シュートの質のところに表れたのではないかなと思います。気持ちとか心がつかさどるものは大きいと思いますが、目に見えないし、難しいんですけれども、そういうところが今日、良い準備ができて、良いものを表現できた、そういうふうに思います」

Q:監督ご自身の心境をお伺いします。表彰式のときに、選手たちの姿を端の方で見守っていらっしゃったり、普段は行かないゴール裏の方に行かれるところをスタンドから拝見していました。どんな心境でいらしたのか教えてください。
「これまで同様ですが選手が主役です。勝ち取ったのは選手です。私、またスタッフはそこに付いて指導しているだけですから、主役が目立つべきです。ただ『私も少しだけ入れてくれ』、そういう心境です。非常に嬉しいし、自分自身も仕事としてやったという嬉しさもありますが、自分が率いたチームが、選手が活躍したということ、それが一番嬉しいです」

Q:選手のときに掲げた優勝カップと、どちらの方が嬉しかったですか?
「私はそのときも脇役でした。主役の選手がたくさんいて、そういうこともありましたが、あまり覚えていません。掲げた覚えもありません。だから今日は、何回か選手に、ファン、サポーターに促されて掲げることができたので、忘れることなく、近い将来、また同じカップかもしれないし、違うカップを掲げられるように努力していきたいなと思います」

Q:福岡にとっての初の国内三大タイトルの獲得になりました。クラブの歴史を踏まえた中で、監督が考えるこのタイトルの価値を教えていただけますか?
「いずれ取れると思っているクラブがあると思いますけれども、それでは取れないと思います。今回こういうチャンスが来て、選手もスタッフもクラブ一丸となって取るんだという意気込みで乗り込んできて、ほぼほぼアウェイのような、そういうスタジアムの状況でしたが、『ここで取らなければ』という想いで臨んでいました。歴史の中でアビスパが国内三大タイトルを取れていないというところで言えば、今日取れずに、また何年も何年もずっと取れないというチームになってしまうのか、ここで取って、また来年も、そしてこれからもタイトルを取るんだというチームになるのか、今日はそのライン上だったと思うんですね。それを取れたので歴史は変わったし、クラブは前進して上を目指す、そういう方向に向かったんじゃないかなと嬉しく思っています」

Q:先ほど前選手の話が出ましたが、水戸から同じタイミングでともに福岡に来て6年の付き合いになります。すぐにキャプテンにも就任していますが、彼に抱く想いを教えていただけますか?
「非常にいい選手ですし、私が考えていることを、ほぼすべて、ほとんど分かってくれています。それは戦術的なところと、私がどういうふうに感じているんだろうということも、多分、分かっていると思います。そういうところを、年上の選手だろうが年下の選手だろうが、また試合に出続けている選手だろうが出ていない選手だろうが、選手、またはスタッフに良い影響を与えて、アドバイス、ないしは間に入ってくれてチームを良くしてくれています」

Q:得点のシーンでグラウンダーの速いクロスから2点取りましたが、あれは狙っていた形だったのでしょうか?
「…はい」

Q:それを浦和さん対策ということでやっていたということでよろしいでしょうか?
「…はい(笑)。もう1回あるんですよ、リーグ戦が」

Q:2アシストは紺野選手でした。彼は今季移籍してきて、アビスパのプレースタイルに変えたというところもあると思いますけれども、これまでの戦いで彼はどのような働きをして、それに対して、どのように評価されていらっしゃるのでしょうか?
「得点、アシスト、またあのポジションでの役割、守備も含めて非常に良いプレーをしてくれています。ただ今のお話だと、アビスパのプレースタイルに変えたということをおっしゃいましたが、そうではないです。前所属のチームでやっていたこと、やっていたプレーにプラスする形で、アビスパに来てからさらに上乗せして、できることが増えて、ボールに触る回数が増えている、守備をする回数が増えて、それが連続している、連動している。そういうところが彼が成長している部分です。彼の口からも充実しているという言葉を時々聞きますが、そういうところが今、彼の今日のアシストも含めてチームに貢献している、そんなふうに感じています。期待しています」

Q:前選手を立ち上がりにシャドーの位置に置いてスタートして2点を取って、後半は彼の本来のポジションであるボランチに下げた。プラン通りだったと思うんですけれど、失点の直後に紺野選手が怪我をして、そこに中村駿選手を入れて、前選手をまた前に出した。あの決断が今日の勝負の分かれ目だったんじゃないかと思いますが、どのようなアイディアで決断されたのでしょうか?
「その決断がそうなるだろうというつもりでやっています。それが結果に結びついたかは分かりません。自分たちの戦い方で、ずっとボールを握って攻撃をたくさんして、得点をたくさん取ってという形をやりたいのですが、今日のところは、特に終盤相手に押し込まれて、いつ失点してもおかしくない、攻め込まれて自分たちがどうにか守らないと、そういう時間帯に入っていたと思います。そこで勝つには、上回る攻撃力なのか、自分たちのこれまで培ってきた守備力なのかというところで、守備力の方で勝負しようという考えで立ち位置をまた戻して、選手を入れて、選手を交代して、最後に締めにかかりました。危ない場面、ポストが救ってくれた、そんな場面もありましたが、そういう狙いで自分たちが1失点で抑えることができました」

Q:昨日の会見で、こういう独特の雰囲気の中で楽しむことが大事なんだというお話をされていましたが、今日は立ち上がりからから、相手のすごい応援に対しても負けることなく、ひるむことなく、苦しい時間もあったと思いますが、そういった姿をずっと出し続けていました。それは長谷部監督の下でずっと積み上げてきた成長の姿かなと思います。そういう姿を監督はどのようにご覧になられていましたか?
「嬉しかったです。今おっしゃった『ひるまなかった』という言葉、この言葉が非常に大事だと思います。アビスパ福岡にこれまでも、これからも、ずっと横にいるというか、つきまとう言葉だと思います。相手が大きい、強い、速い、上手い、そういう相手に対して自分たちはどうしていくのか。ひるまず向かいます。ひるまずに挑んでいきます。それができたんじゃないかと思います」

Q:これまで監督がずっと積み上げてきた守備力に加えて、今年加入した井手口選手、紺野選手が見事に融合した印象があります。その辺りの手ごたえはいかがでしょうか?
「時々良いと思います。というのは、今日のゲームを迎える前の公式戦3試合は、4失点、4失点、4失点しているので、決して堅守ではない、できていないと思います。なので、そこをもう1回見直してというところで今日の試合に挑んで、多少なりの修正をして挑みましたが、その辺はやはり継続して、守備のところも磨いて、攻撃のところも少しずつですけれども実力を上げていくこと、ボールを奪いに行くことが大事だと思っています。少しずつですけどれも良くなっていると思います」

Q:今年のシーズンの目標としてリーグ戦8位、ルヴァン4強という目標を掲げられていましたけれど、天皇杯、ルヴァンと勝ち進んでいって、新たにタイトルという目標を選手に対して敢えて口にされて、チームの士気も高まったと思います。その時の監督の心境というのはどのようなものだったのでしょうか?
「言葉というのは難しいと思うんですけれど、私はリーグ戦8位以上と言っています。8位から1位までです。カップ戦は4位以上、ベスト4以上と伝えています。なので目標を変えたというよりは、もともとの目標をベスト4進出でクリアしてしまったので、決勝ではなく『優勝しよう』というふうに見直しました。それに応えるというよりは、選手たちは最初から優勝、優勝と言っている、星を付けようと言っているので、これはいい雰囲気だなと、流れが来てるなと、そういういうふうに思っていました」

Q:戦術的な質問には答えられないというお話だったので、あまり細かくはお答えいただかなくても結構なのですが、今日の崩し方として、前選手、紺野選手のドリブルのコース、あの辺というのは、相手の分析で『今日はあそこを狙おう』というのがあったのでしょうか?
「どれぐらいのコースというよりも、常に分析をしてくれる分析班がいます。彼が相手の弱点、ウイークのところを提示しながら、それを選手ができるかどうかを私と話をして決定し、選手とともにトレーニングも含めて少しやってみて、『これはいいぞ』と、そういう中で実行しています。うまくいかない場合もありますが、選手たちは多少なりともやりやすいと思います、やることがはっきりしているので。それが今日はできた思います。けれども次はできないと思うので、もう防がれると思うので、次の対戦に関しては、また違う形を狙っていかないといけないというふうに思います。自分たちも分析される立場にやっとなってきて、今年、去年と、そういう意味では、そういうことも大事ではあるけれども、ゲームの中で起きてることに対して選手たちが即座に反応すること、これが一番大事だと思っているので、そういう力を高めていくことが一番大事だと思ってます。ただ今日のところは分析した人間と、実行した選手とが繋がったんじゃないかなと思います」

[中倉一志=取材・構成/写真提供=写真AC]

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