「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【レポート 天皇杯3回戦 清水-福岡】互角の戦いも一瞬のプレーの差が勝負を決す。天皇杯3回戦で姿を消す

天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会 3回戦
日時:2019年8月14日(水)19:00キックオフ
会場:レベルファイブスタジアム/2,265人
結果:清水エスパルス 0-1 アビスパ福岡
得点:[清水]楠神順平(25分)

アビスパ福岡は14日、天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会3回戦で、レベルファイブスタジアムで清水エスパルスと対戦。リーグ戦を含めて3連戦の中日での試合は、互いにゆったりとしたリズムで進んだが、一瞬の隙を突いた清水が25分に先制。アビスパは後半に入ってメンバー交代からリズムを刻んで攻撃の形も作ったが、J1との力の差は否めず0-1で敗れた。アビスパは残りのシーズンをリーグ戦に集中して戦う。

互いの間にある力の差
3連戦の中日の試合となった天皇杯3回戦。清水はJ1リーグ第22節の先発メンバーから10人を、アビスパはJ2リーグ第27節のメンバーから9人を変えて臨んだ。猛暑の中で行われる3連戦でより良い結果を残すための最善の策。そして出場機会を与えられた選手にとっては、リーグ戦に向けて自らの力を示す機会でもなる。そんな両チームをサポーターが熱い声援で後押しする。特に台風の影響が心配される中、清水から足を運んだ多くのサポーターを見るにつけ、改めて清水がサッカーの街であることを感じさせられる。

「試合はまったりしたような感じで入ってしまった」
篠田善之監督(清水)が話すように、試合はどちらのリズムということもなく、ゆったりとした展開で進んでいく。トーナメントは負けたら終わりの一発勝負。ましてリーグ戦の先発メンバーと大きく違う状況では、それもある程度予想されていたこと。互いに守備ブロックを敷いて相手に隙を与えず、相手の様子を窺うような展開で時間が流れていく。

それでも、細かな部分ではJ1とJ2の違いは感じられた。ボールを持っている時間だけを見れはアビスパの方が長いが、清水はアビスパが縦に入ることを許さない。そして最も大きな違いがか感じられたのがボールを奪った後の「守」から「攻」への切り替えの早さと、チャンスと見るやゴールに迫るスピードの速さ。清水の前への意識がそれほど高くなかったこともあって、ゴールを脅かされることはなかったが、いわゆるスイッチが入った時の動きには大きな違いがあった。

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25分の失点シーンは、まさに両チームの差が凝縮されたものだった。

その直前の23分には喜田陽のミドルシュートがクロスバーを直撃。続く24分には中へ切り込んだミコルタがシュート。アビスパに流れが傾きかけたかのように見えた。その直後のプレーで清水がスルスルと右サイドの深い位置までボールを運んだが、この段階では3対2。そして1人ずつが加わって4対3。アビスパは数的優位を保ってボールホルダーを囲い込んでいた。とりわけ、ピンチのようには見えなかった。

だが、一瞬のプレーで清水が決定機を作り出す。ゆったりとしたパス回しから中村慶太がスピードアップ。そのボールを受けた滝裕太が一瞬のスピードでターンしてマークに付いていた三國ケネディエブスをあっさりとかわす。あとは滝の独壇場。そのままゴールラインを横切るようにドリブルをしてペナルティエリアへ入り込んでDF陣を引き付け、その動きでペナルティスポットでフリーになった楠神順平にラストパス。楠上の右足インサイドがゴールを捕らえた。

90分間を通してゲームが動いたのは、このシーンだけ。その後もお互いが相手の様子を窺うような展開は変わらず。アビスパはミコルタに代えて石原広教、村田和哉に代えて城後寿、さらには木戸皓貴に代えて前川大河を投入。縦への動きが生まれたアビスパはリズムを刻めるようになったが、守備ブロックを崩さない清水の前にゴールチャンスを作れずに0-1で敗れた。久藤監督は「やはり精度のところ。クロスの精度を含めて、中に入る精度というところ、もう少し高めていかないといけない」と試合を振り返った。

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「難しい試合になったが、そういうところできっちりと0に抑えられるか、あるいは2点目、3点目を取れるかというところが次に進むところの条件」とは篠田監督の試合後のコメント。両チームが放ったシュートは清水の3本に対してアビスパの2本。後半はお互いにシュートが打てず、エキサイティングなゲームとは言えなかったが、トーナメントでは勝利という結果を得たチームが強いチーム。現時点では互いの間にある差は認めざるを得なかった。

アビスパについては、もうすこしチャレンジしてほしい想いもあったが、久藤監督が「プレスラインはJ2の時とあまり変わらない。ラインを設定し、そこから行くという部分で言うと、今までと特に変わらない戦い方をした」とコメントしたように、決して構えていたわけではない。どちらかと言えば、清水の技術の高さの前に高い位置からボールを追うタイミングや、カウンターを繰り出す機会を見いだせなかったということだろう。むしろ、自分たちのサッカーを表現した結果だったと言える。

それは田邉草民のコメントにも表れている。
「守備は安定してきているので、1点取られたからといって変えることはないし、0-0で行けば後半にチャンスがあると思っていた。選手の中ではそういう話をしていた」
力の差は否めないが、その言葉は、自分たちが取り組んでいる戦い方に手応えを感じている証拠。天皇杯での戦いは終わったが、それをリーグ戦で結果につなげることが、ここからのアビスパがやらなければいけないことだ。

[中倉一志=取材・文・写真]
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