「football fukuoka」中倉一志

アウェイの旅2015 札幌編(その2)

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札幌に来たからには美味しい海鮮は外せないところ。安く、気軽に食べられる大衆店はないかと足を運んだのが「さかなや金ちゃんの店・魚平」。店内は大きなカウンターが広がる、まさに吉田類の世界だ。システムも面白い。お通し(300円)はカウンター横に並べられている4~5品を小皿に盛り放題(1人1回限り)。この日はアラ汁の無料サービスもあった。値段は、海鮮中心のメニューながら、手ごろと言うよりも明らかに安すぎる。なるほど、酒好きの親父の1人飲みの姿が多いのにも納得だ。

まずは60分飲み放題880円(サッポロクラッシック付き)を選択。肴には思いきって「さしみ五点盛合せ(1000円)」をオーダーする。ほどなく運ばれてきた大皿を見てびっくり。つぶ貝、まぐろ、水たこ、カレイ(縁側付き)、カンパチのぶつ切りが豪快に盛り付けられいる。とても1人で食べる量ではない。さらに新鮮さにも感激。さすがは北海道だ。絶品は「つぶ貝」。貝特有のにおいは全くなく、口の中に広がるのは甘み。新鮮でなければ、この味は出ない。

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このままビールを飲み続けると、お腹が膨らんでしまいそうなので2杯目から焼酎お湯割りに切り替える。すると「ワリッカでいいかい?」とおばちゃんが札幌弁で尋ねてくる。ワリッカとは、北海道で親しまれる甲類焼酎のこと。いまは北海道でも乙類焼酎は数多く揃えられているが、特にオーダーしなければ甲類が出てくるのが北海道のデフォルト。かつては、甲類焼酎を番茶で割る「番茶割」がブームになったこともある。アルコールは全国どこでも楽しめるが、土地毎にたしなみ方が違うのは面白い。

さて、この時点で既にお腹はいい感じになっていたが、せっかくなので「イカ刺し」と「ホッケ焼き(半身)」を追加。この2品だけは北海道と、それ以外の土地で食べるのでは、別の食べ物ではないかと思うほど味が違う。北海道に足を運んだら絶対に食することをお勧めする。そして、運ばれてきたのは期待通りの絶品。つやつやと光り輝くイカ刺しの甘みを楽しみ、ほろりと崩れる油の乗ったホッケの味を楽しむ。これで、どちらも250円なのだから、もう驚きを通り越している。

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その他にも、活ほたて、活ほっき、コマイ、ザンギ(鳥の唐揚)、うす塩たらこ、そして通常の2倍はあろうかと思われる、おにぎり、手巻きずしなど、興味を引かれるメニューが盛りだくさん。どんぶりに盛られたご飯の上に刺身を盛り付けたどんぶり飯(各500円)や、海鮮丼(1000円)にも心が動いたが、さすがにお腹が一杯。後ろ髪を引かれながら店を後にした。サッポロクラッシックの生、お湯割り2杯と合わせて締めて2894円(税込)という安さだった。

店内にはテーブル席もあるが、その大半がカウンターで占められており、客層は、ほとんどが1人、ないしは2人。大勢で入るには無理がありそうだが、少人数で行けば1人単価は、おそらく2000円台前半。たらふく飲んで、食べても、2000円台を超えることはないだろう。観光地の飲み屋というよりも、近所のおじさんたちが毎日のようにやってくる地元大衆店で、いわゆる高級な品は置いていないが、飛び交う札幌弁を楽しみながら、新鮮な物を安く食べるのにはもってこいの場所。大衆酒場が好きな方なら、必ず満足できる店だ。
(その3「町歩き編)に続く)

【中倉一志=取材・文・写真】
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