「football fukuoka」中倉一志

フットボールな日々/地元の名店・こくぶ

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宮崎キャンプの目的が、チームがどのように変わっていくのかを取材することにあることは言うまでもない。しかし、一定期間、宮崎に滞在するのに取材だけではもったいない。併せて、宮崎を体ごと感じることも私の目的のひとつだ。そのために、町を徘徊し、食事処を覗く。原則として観光地や観光客目当ての店にはいかない。宮崎の人たちの日常を感じるために、地元の人たちが通う場所や店を選ぶ。

今年、最初に暖簾をくぐったのは「こくぶ」。宮崎最大の繁華街である「ニシタチ」から歩いて5分程、繁華街から少し外れたところに、その店は存在する。選んだ理由はただひとつ。「みそおでん」と書かれた赤ちょうちんが「おいしいぞ」と教えてくれたから。いかにも地元の人たちに愛されそうな店構えも気に入った。実は昨年も暖簾をくぐったのだが満員で入れず。1年越しに願いを叶えた。

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宮崎の新鮮な刺身、名物の地鶏のモモ焼きにチキン南蛮、ひと通りのものが揃う。どうやら遅い時間でも食事が出来るようだ。本日のお勧めが書かれた黒板に、朝獲れの刺身に交じって「ポテトサラダ」と書かれているのもいい。そして、私のチョイスは目の前のおでん鍋で程良く煮込まれている「みそおでん」。関東のそれとは異なり、おでんの出汁に味噌を溶かして煮込んでいる。どれも、ひとつ110円。リーズナブルなのもいい。

「みそおでん」ではあるが、味噌は決して強く主張せず、程良い風味が口の中に広がり、冷え切った体を芯から温めてくれる。優しく、懐かしさを覚える味は、体だけではなく心も温めてくれるようだ。合わせるのは当然「日向木挽」。焼酎そのものの味を楽しむためにロックで流し込むと、胃の中に染み渡っていくのを感じる。思わず「旨い」とつぶやく。ちなみに、宮崎では焼酎は量り売り。一杯、二杯ではなく、一合、二合の単位で供される。二号でおよそ三杯。これで810円なのだから、酒飲みには嬉しい限りだ。

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店の雰囲気もアットホーム。カウンターの隣の席では、常連らしき人が大将と女将さんと談笑している。一見の客である私には適度な距離感を保ちながら、温かく見守ってくれている感じがいい。あとから聞いた話だが、某局のディレクターも、地元TV局の職員から、この店を紹介されたそうだ。「みそおでん」6個と焼酎二合で1470円。某局のディレクターによれば、刺身も、地鶏も味は文句なし。地元の人たちに愛されるはずだ。

「福岡にあれば、毎日通うのに」。そんな想いを胸に店を後にした。

【中倉一志=文・写真】
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