「football fukuoka」中倉一志

TRM 福岡 vs.福岡大学レポート

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【中倉一志=取材・文・写真】

【トレーニングマッチ アビスパ福岡-福岡大学】
日時:1月31日(土)13:00 45分×3本
1本目 1-0 得点者:坂田大輔
2本目 4-0 得点者:城後寿、平井将生、金森健志、中原貴之
3本目 1-1 得点者:中原貴之

トレーニングで取り組んできたことを試合でトライさせ、どこまで出来るようになったかではなく、現時点で何が出来るのかをチェックする。試合後の井原正巳監督の言葉からは、そんな意図が窺える。チームが始動してから、まだ2週間余り。1年間を通して90分間に渡って戦えるフィジカルコンディションを作ることを最大の目的としているこの時期では、それも当然のことだろう。それぞれの特徴を見極めた上で、実戦中心の宮崎キャンプでチームとしての形を整えていく。そのスケジュールに沿って、チームは開幕へ向けて準備を進めていく。

さて、「ひとつのシステムにこだわることなく出来るような形にしたい」と話す井原監督が選んだシステムは3-4-3。相手ボールになると、両WBが素早く下がって5枚のラインを形成。最終ラインを高めに設定してコンパクトなゾーンを保って相手が縦に入ってくるところを待ち受ける。基本的には相手を待ち受ける体制から、勝負所でプレスをかけて素早く攻撃に転じるという狙いがあるようだが、まだ本格的に取り組んでいないこともあり、プレスのかけどころや、ボールの奪いどころが整理されていない印象が残った。だが、縦に入れさせないという点については、及第点と言ったところだろう。

反面、攻撃面には課題の方が多かった。最終ラインがフリーでボールを持っても前へ運べず、パスも出せず、不用意にボールを持っているところにプレスを掛けられて、窮屈な状態からミスを連発。また、ボランチと3トップの間が広く空いてしまい、中原がボールを引き出しても、ボールの出しどころがないために相手のプレスにさらされるという、昨年の課題は残ったままだった。また、期待の亀川諒史は、この日は効果的な突破は見せられず。むしろ、背後のスペースを福大に徹底的に狙われていた。ビルドアップという点では、物足りなさが残ったと言わざるを得ない。だが、攻撃面での戦術練習をほとんど行っていないことを考えれば、それもやむを得ないと言えるだろう。

そんな中で目を引いたのは城後寿の躍動感。自身のゴールは相手GKのミスによるものだけだったが、タイミングの良い動き出しから相手の背後を奪うダイナミックなプレーを随所に披露。また、チームが効果的な攻撃を組み立てられない中、中村北斗との活きのあったコンビネーションから、何度もチャンスを作り出した。そのいきいきとした姿が強く印象に残った。そして、城後とともにチャンスを演出した北斗も上手さが感じられるプレーを披露。まだコンディションが整っていないこともあり、かつてのようながむしゃらなプレーは見られなかったが、ポイントを押さえて確実にチャンスを演出するプレーは、6年間の経験を感じさせるのに十分だった。

そして、話題の邦本宜裕は3本目に4-2-3-1のトップ下、そして4-4-2の2トップの位置でプレー。見学に訪れていたファン、サポーターを唸らせるシュートも放ったが、この日は明らかに体が重たそうで、全体を通して見れば、これと言ったプレーを見せることは出来なかった。随所に見せる球さばきに観客からどよめきが起こったように、非常に高い技術を持っていることは間違いないが、福岡U-18との試合の出来からは程遠いものだった。持てる実力をコンスタントに発揮できないのは、やはり若さ。才能だけに注目するのではなく、常に平常心を保てるようなメンタル面の強化も含めて大事に育てたい。

さて、この時期にチームに課題があるのは当然のこと。むしろ、いまの時期に課題を見つけ出しておくことが、これからチームを作っていく上で重要になる。しかし、敢えて苦言を呈すれば、3本目の内容、結果については物足りないと言わざるを得ない。全員が1からのスタートとは言え、日々、それぞれの立ち位置が決まっていく。そして、与えられた時間と場所で自分の特徴をアピールしなければ、チャンスが与えられることはない。次のトレーニングマッチでは、レギュラー格の選手を慌てさせるような気持ちのこもったプレーを見せてもらいたいものだ。

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