妻木充法トレーナーのメンテナンスで52歳までJ1担当主審基準のスプリントとスタミナを維持できた【西村雄一レフェリー会見🈡】
12月19日、JFA(日本サッカー協会)ハウスにて、トップリーグから勇退する西村雄一レフェリーの会見が行われた。私の質問に対して「引退ではなく、トップリーグを担当しないだけで、二級審判員として活動を続けていく」と答えられ、「二級?」と扇谷健司JFA審判委員会委員長も驚いていたように、現場への情熱は変わらぬようだった。
――記者として西村さんを取材させて頂いた期間が短くて、観客目線の素人みたいな質問なのですが、ブラジルW杯の開幕戦の判定でいろんな議論が起こったりしました。そういう時って、ご自身の判断が正しいって思う反面、なんか色々葛藤があったんじゃないかと外から見ていると思うのですが、どうやって心の中で整理していたのですか?
「私自身が 1番大切にしている所が『すべてを受け入れる』ことを大切にしています。私も人なので、自分としては責任を持って一つの判断をするんですけれども、それが必ずあっている、もしくは必ず皆さんに納得いただけるとは限らないと思っています。
ということは、おそらく違うんじゃないかっていう、そういったご意見も絶対出てくる。で、それも含めて、一番、こうみなさんが納得していただけるのに近い判定っていうのをしようという風に心がけているのがスタートにあります。
ですので、例えばブラジルW杯の開幕戦であれば、私はPKという判断をしました。
なかなか納得は得られなかったっていう事実もあると思っています。それもちゃんと受け入れてまいす。
で、もし、じゃああれをPKと判断しなかったということに仮に置くと、 多分おそらく見逃されたっていう批判を受ける形になるわけですね。
ということで、どちらにしても結局レフリーの判定を完全に納得してもらうって難しかった。
あとはもう一つ、よく皆様に言われているのが、あのシーンでシミュレーションではないかという議論があるんですけども、サッカーのシミュレーションっていうのは、本当にわかりやすく言うと何の接触もないのに装って倒れるっていうことなので、 あの場面でいくと手がかかっているという事実は映像でも確認できるとなると、僕がもしシミュレーション判定をすると、確実な間違いをした。これは私の能力がそこに至ってないっていうことになる。
それぐらいな所を、近しいことをもう他のゲームでもたくさんあって、で、その中で、自分自身としては、自分を納得させる判定ではなくて、
皆さんが納得していただけそうな判定っていうところに基準を置いて判定してきた
っていうのが、私が取り組んできたことですね。ですので、 批判等もやっぱりもちろんあるよね。でも、その中でも、それがなるべく少なければ いいなって、そんな形の思いが一番多いですね。」
――レフェリーは選手と同じ、もしくはそれ以上走らなければいけないと思うのですが、この長いキャリアの中で、ご自身の体力維持や体のケアみたいな部分で、何かこれだけは続けている、こだわってやってきたみたいな所があれば教えて下さい。
「私は、体のメンテナンスに関しては、鍼灸治療をベースにしていて、 国際大会でもFIFAのメディカルの一員として活躍されていた妻木充法さんという方がいらっしゃいますが、その妻木さんにメンテナンスをして頂いて、この(トップリーグ担当)期間を無事に走り切ることができたっていうところはありますね。
妻木さんは、私だけじゃなく、ワールドカップ3大会ですかね、行かれて。レフェリーたちのコンディショニングを担当されていて、もう世界中にファンがいるような方なんですけども、審判員もそういったメンテナンスはしっかりすると、おそらくある程度長く活動ができるんではないかなっていう。」
――これまでの経験を踏まえて、若くてレフェリーを目指そうかなと思っている人に対して、こんな素晴らしい世界があったんだよというのを伝えていただけませんか?
「私自身、経験してみてわかったことは、審判活動を通じて自分の人生を豊かにすることができたっていうことなんですね。大きな大会もありますし、華やかな舞台もあるかもしれないですけれども、審判活動を続けるっていうことが、今振り返れば僕自身の人生を本当に豊かにしてくれた。例えば審判が取り組んでいることが、実は生きていく中でも、実は皆さんも同じで、いろんな決断をされてると思うんですね。
レフェリーの決断の仕方と、おそらく人生においていろんな決断をしていく仕方は結構リンクしていて、考え方なんていうのは共有できることがいっぱいあるんじゃないかなっていうふうに思っているんです。ですので、審判活動を通じて社会に貢献したいって先ほどちょっとお伝えしたんですけども、 僕自身レフェリーをしていたからこそ、そういった考え方、捉え方をすることができた。で、それは自分の人生を幸せなものにしてくれる、豊かなものにしてくれる、そんないいきっかけとなったって置き換えられることがいっぱいあったので、 そういった意味でも、審判活動というものを通じながら、人として 素晴らしい、成長していくっていうことであれば、ぜひレフェリーやってほしいな、続けてほしいな、その中から自分の人生を本当に豊かなものにしてほしいということで、若い次世代のレフェリーたちはこの審判活動に夢中になってもらいたい。そういう風に思っています。」(了)