石井紘人のFootball Referee Journal

無料:レッドカードに値しない行為でも選手の大怪我に繋がってしまう事をどう考えるか【10/24レフェリーブリーフィング⑥】

1024日、日本サッカー協会(JFA)審判委員会が今年第五回目となる『レフェリーブリーフィング』をJFAハウスにて開催した。

佐藤隆治JFA審判マネジャーJリーグ統括の交換プログラムの振り返りに続いて、APP(Attacking Possession Phase、VAR介入の際に、どこまで遡ってチェックするかの起点)とハンドの反則について再度理解を促すための説明が行われ、

日本を代表して試合を担当した谷本涼レフェリー、西橋勲・聳城巧アシスタントレフェリーがミサイル攻撃による中東空路閉鎖の影響で帰国できなかった事について【10/24レフェリーブリーフィング⑤】

最後は質疑応答となった。

 

――接触プレーが起きた時に、選手の重傷という結果の重さとカードの色がイコールにならない事がありますよね?

 

「たとえば、今年で言えば、結果的に高く上げた足が相手の顔面に接触したケースがありました。その行為にはイエロー、試合後の診断結果は重傷でした。

試合中のそういった事象については映像で確認しています。

足が(相手の)顔に当たるというのは良いことではないんですけど、どういうプロセスで当たったのかを現場のレフェリーは見ます。

足が相手の顔に当たったら、全部レッドカードということではありません。

これはAFCやFIFAの基準でもそうですが、足を高く上げる行為が無謀な範疇に入るのか、ExcessFoulPlay・過剰な力と言えるのかをレフェリーは判断します。

ただ、そのプレーが大きな怪我に繋がったり、負傷した選手の現場復帰に時間がかかるという話を聞くと、我々としても心が痛いです。

ではこれらの見極めをどうするかを考えたときに、必ずしも判定と結果や感情は必ずしも一致しなくなってしまいます。

というのも、サッカーという競技は、接触プレーがある程度認められているからです。

たとえば、ボールが高い位置にあったときに、足を上げる行為を全部禁止にして良いのか。そうではないと思います。」

 

高い位置にボールがある時に足を上げられないと、バイシクルシュートが禁止になってしまう。また、見え方もあり、ジダンの芸術的なボレーシュートに頭で突っ込む守備側競技者がいれば、ルールは置いて心情的にどうだろうか。

その難しいコンタクトスポーツを担当するレフェリーたちは、試合後に必ず自身の試合映像を見返す。

選手が怪我をしたと訊けば、「違った判定はあったのでは」と考える。

しかし、やはり映像で見ても、ラフプレーでとどまる事もある。

もちろん、「コンシダレーションとして、レッドカードを出すべきだった事象も過去にはあります」(佐藤マネジャー)。

 

「選手の安全を守るというのが今のサッカーでは大事ですので、足裏でのタックルやスピードのあるタックルが、オレンジからレッドに厳罰化されている流れがあるのと同じように、足を高く上げる行為についても我々はフォーカスしています。

その中で、テクニカルはイエローカードで正しいけど、結果的に選手の怪我に繋がっている事象があるのも理解しています。ただ、その瞬間にそれ(怪我の重大さ)は分からない。

では、『大怪我に繋がっていたら厳罰、怪我が大きくなければレッドカードを出さなくて良い』という話でもありません。

たとえば、ファウルを受けた選手が、すぐに起き上ったり、負傷退場に至らなかとしても、チャレンジの仕方が選手の安全を脅かす、大怪我に繋がりかねないと判断したときはレッドカードになります。

逆に、お互いにボールへプレーした結果、足が相手の顔に当たって怪我に繋がることもあります。

そこの見極めをどうするか。難しいという言葉で片付けてはいけないと思いますが、レフェリーにはそこ(事象のプロセス)を見なさいと言っています。」

石井紘人の目【ヴィッセル神戸×柏レイソル戦の事象について扇谷健司JFA審判委員会委員長レフェリーブリーフィング前編】

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