石井紘人のFootball Referee Journal

[鹿島アントラーズ×川崎フロンターレ]審判DVDシリーズ第三弾『トリオ セクステット』鈴木優磨選手、小林悠選手との舞台裏でのエピソード【笠原寛貴インタビュー】

Jリーグ担当審判員の舞台裏を追ったDVD『トリオ ~セクステット』は、シリーズ最初で最後となる緊迫感あるJリーグ終盤戦に潜入となった。

四部作で構成される本シリーズ。

第一弾『審判』ではJリーグ担当審判員たちの一年間を追い、

第二弾『レフェリー』ではレフェリーの選手とのコミュニケーションに特化し、レフェリーの個性を描いた。

第三弾では、第一弾や第二弾のルヴァンカップ決勝という華やかな舞台ではなく、シビアなJリーグ終盤戦、チームの一年を決めてしまうミスを起こさないための

レフェリー、アシスタントレフェリー、4thオフィシャル、VAR、AVARの六重奏(セクステット)の『納得感あるゲームの着地』のための努力、舞台裏に迫り、一試合にかける情熱を映し出している。

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スタジアム到着時の選手同様の人間味あふれる表情から、プロの姿勢を感じる試合前の濃密な打ち合わせ。そして、アスリートさながらの試合中のレフェリングと試合後の安堵感。

DVDのメインとなるのは試合中にセクステットがフットボールというスポーツを、競技規則を駆使して円滑に進める中で多用するコミュニケーションシステム(ボケイロ)の音声だ。

収録された現場感溢れる音声は、お世辞にもクリアとは言えないが、テロップフォローによって逆に臨場感、ピッチのリアルが感じられる。

そんなドキュメントの主人公の一人が笠原寛貴プロフェッショナルレフェリー(PR:日本サッカー協会(JFA)と契約するプロの審判)である。DVDを御覧頂く前に、笠原PRがどのような方なのか知って貰うためにインタビューを行った。

 

>>>前編はこちらから

 

――学生時代、Jリーグは見ていましたか?

 

「もちろんです。私が物心付いた時にはJリーグも開幕しており、地元にはアビスパ福岡もありました。アビスパ福岡のホームスタジアムは自宅から30分程度だったので、部活の合間をぬって、月に一回くらいは行っていました。」

 

――印象に残っている試合はありますか?

 

「高校生の時に観に行った満員の試合は覚えています。育成年代の試合は、土のグラウンドが多いじゃないですか?勝ち進むと芝生でプレー出来るようになりますよね。ですから、芝生のスタジアムへの憧れがありましたし、その芝生に満員の観客という素晴らしい雰囲気は鮮明に覚えています。」

 

――その高校時代の思い出の試合同様に、DVD『トリオ』の撮影があった試合には20,887人が詰めかけました。Jリーグの舞台で笛を吹くご自身の試合に、舞台裏にまで撮影が入るというのを伝えられ、どのように感じましたか?

 

「まず、有難く受けさせて頂きました。その中で、二つの緊張感がありました。一つは、カメラが入るという初めての経験への緊張感。もう一つは、Jリーグ終盤という試合そもそもの緊張感です。ただ、試合が始まると、撮影の事は忘れていました()試合よりも、控室に緊張感がありましたね。」

 

――スタジアムに入る前に「これから撮影だ」みたいな話はされましたか?

 

「それはなかったです。ただ、試合以外はカメラを意識していたと思います()

 

――撮影を終えての感想は如何でしょうか?

 

「私は三級審判員や二級審判員になってからも、Jリーグをよく観に行っていました。選手の方が少しエキサイトしそうになった時に、レフェリーの方が寄っていて、何かコミュニケーションをとられて、選手の方が受け入れたり、納得する姿を観客席から見ていました。

「いま、なんて言ったのだろう?」とか、レフェリーチームがどのようなやりとりをしているのか気になっていたので、このような作品があるのは凄く良いと思います。

私もDVD『トリオ』を観させて頂きましたが、第一弾、第二弾よりも舞台裏が収録されていました。ボケイロ音声が全て拾えていれば、さらに良かったですね。私の音声が拾えていない箇所もあり、冷たく見えるかもしれませんが、実際はやりとりをしています()このような機会に関われた事を非常に光栄に感じています。」

 

――審判を目指す方、審判として活動されている方、審判ファンの方以外に観て欲しい層はいますか?

 

「先月、福岡県サッカー協会のキックオフミーティングに、福岡県サッカー協会審判委員会テクニカルアドバイザーとして参加し、情報交換をしました。

技術側からはテクニカルやタクティカルのトレンドの情報を頂いて、我々審判側からは近年の傾向から選手のプレー選択のリスクの説明など。たとえば足裏でのチャレンジには世界的に厳しくなっていますよね?そういった有意義なコミュニケーションがとれました。

近年、技術側と審判側が互いに魅力あるサッカーを目指す関係性が出来ているように感じます。凄く良い事ですよね。DVD『トリオ』も、我々審判側を知って頂く機会になったり、トップリーグでの審判と選手の関係性などがサッカーに関わる全ての方々に伝わり、相互理解が深まればと思います。」

 

――コミュニケーションですが、DVD『トリオ』でも、たとえば鈴木優磨選手と互いにリスペクトを感じられるコミュニケーションが描かれています。近年の選手とのコミュニケーションに変化はありましたか?

 

「前節の試合を分析していた時に、鈴木選手が怪我に繋がりそうな倒れ方をしたシーンがあったのです。私はトレーナーを目指す理学療法学科を出ているので、そういったシーンはやはり心配になります。何もなくて本当に良かったです。

そういったコミュニケーションは、特に今シーズンはとりやすいです。顔を覚えて頂いたのかもしれませんが、選手の方が「レフェリー!」ではなく「笠原さん」と名前で呼んで下さったりします。選手の方から挨拶に来て頂けることもあります。

この間、こんなこともありました。試合前のウォーミングアップ時に、下を向いてアキレス腱を伸ばしていたら、小林悠選手が下から「笠原さん、こんにちは」と覗いて挨拶してくださったのです。驚いたリアクションになってしまいましたけど()有難いですよね。」

 

笠原さんは「良いジャッジがあったとおっしゃって頂いても、それはすぐに忘れてしまって、覚えているのは巧くいかなかった判定です。失敗は、選手の方には申し訳ないのですが、必ず次に繋げます。成長に繋がるチャンスと捉え、目を背けずに、逃げずに立ち向かってレフェリングを向上させます」とプロフェッショナルとしての覚悟を教えてくれました。

そして、「DVDに収録された試合も忘れられない試合になります」と続けられたのですが、ネタバレになってしまいますので、その理由はDVD『トリオ』を御覧頂ければ伝わるかと思います。

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【収録内容】120

CHAPTER.1

2023明治安田生命J1リーグ 第33節 川崎フロンターレ vs. 鹿島アントラーズの舞台裏

笠原寛貴、西村雄一、大塚晴弘、和角敏之、先立圭吾、唐紙学志

 

〇試合前の舞台裏

日本のトップリーグである明治安田生命J1リーグ、終盤戦というシビアな試合にレフェリーがどのように臨んでいるのか。舞台裏にカメラが潜入する。

・スタジアム入り ・審判団控室の様子と打ち合わせ

・ピッチインスペクション ・ウォーミングアップなど

 

〇ピッチでのコミュニケーション

笠原寛貴、西村雄一、大塚晴弘、和角敏之、先立圭吾

レフェリーチームが使用するコミュニケーションシステム「ボケイロ」の音声を独自収録(音質は聞き取り辛い部分があります)。

レフェリーチームと競技者とのコミュニケーションをテロップフォローで追いながら、試合全体の映像とレフェリーやアシスタントレフェリーを追った二画面映像で、普段は見られないレフェリーの世界をご覧いただけます。

 

CHAPTER.2

2023Jリーグアウォーズ舞台裏

中村太、野村修、越智新次、蒲澤淳一、佐藤隆治、野田祐樹

 

CHAPTER.3

Jリーグレフェリングレビュー

佐藤隆治

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