石井紘人のFootball Referee Journal

無料コラム:ブラウブリッツ秋田「本状況下(立ち位置や距離など含め)において審判団のノーゴール判定は、否定されるものではない」町田ゼルビアGKウィリアム「レフェリーも自分も誰も責められない」

サッカーの競技規則は、他の多くのチームスポーツのものと比べ、比較的単純である。しかしながら、多くの状況において「主観的な」判断を必要とし、審判は人間であるため、必然的にいくつかの判定が間違ったものになったり、論争や議論を引き起こすことになる。

人によっては、これらの議論が試合の楽しみや魅力の一部となっている。しかし、判定が正しかろうと間違っていようと、競技の「精神」は、審判の判定が常にリスペクトされるべきものであることを求めている。 

「これは誰も責められるべき事象ではありません。審判団の方々も自分もです。こういうことを防ぐにはJリーグにゴールラインテクノロジーか追加副審またはVARを導入してもらう以外に方法はありません」(GKポープ・ウィリアム)

懸念していたことが起きてしまった。

前回のレフェリーブリーフィングで、私はJ2VARか追加副審を導入する議論はあるのか?と日本サッカー協会(JFA)審判委員会に質問をした。

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質問をした理由は、この日の町田ゼルビア×ブラウブリッツ秋田戦のようなスピーディーな試合がJ2にも増え、トリオ(レフェリー+アシスタントレフェリーの二人)だけでは見極められない事象が生まれると感じたからだ。

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表題のシーンも、会場で試合を見ていた解説の坪井慶介氏が、「実況席から見るとどっちか分からない」と初見を語ったように、流れで見ていて100%ゴールと断言するのは難しい。もちろん、リプレイで見たり、7分に事象が起きるのを知っていて見れば、ゴールとジャッジできるかもしれないが、フィールド上はそうはいかない。

ゼルビアGKポープ・ウィリアムが自身のInstagramに投稿した「まず判定についてですが、どう見てもゴールですし、自分も気づいてました。ハーフタイムに主審の山本さんにはゴールでしたと伝えました。判定が覆らないのはルール上仕方がないです。かといって試合中に自らゴールですと認めるわけにはいかないですし、そんなことはできません。白々しくプレーを続けたことに後悔はありませんし、プロの選手として当たり前のことをしたまでです」というのは選手の本音だと思う。

また「次にレフェリーの方ですが、シチュエーション的にあの距離からボールに追いつくことはできませんし、遠くて分からないです。見え方も違うので難しい判断」で映像と違って平面でジャッジする難しさもある。

ブラウブリッツ秋田のJ2リーグを戦う上で、「J2リーグにはビデオアシスタントレフェリー(VAR)やゴールライン・テクノロジー、追加副審といった仕組みが導入されていない以上、本状況下(立ち位置や距離など含め)において審判団のノーゴール判定は、否定されるものではないと考えております」というスタンスはリスペクトそのものであり、「前半8分のシュートが、映像上ではゴールラインを割っていると確認できるにも関わらず、ゴールとして認められない事象が起こりました」「クラブとしては本件について、マッチコミッショナーを通じて申し入れを行っており、また後日、正式に文書にてJリーグに提出も行う予定です」も当然だろう。

そのうえで、再度、「サッカーファミリーの皆様におかれましては、フェアプレーの精神の下、審判団の判定を尊重し、審判員や相手チーム・選手への批判や誹謗中傷は行わないよう、お願いいたします」と締めくくっていることを、この判定について語る人は念頭に置いてほしい。

 

審判やその他の試合参加者に競技規則を教育する方々は、次のことについて強調する必要がある。

  • 審判は、フェアで安全な試合が行われるよう、競技の「精神」に基づいて競技規則を適用するべきである。

  • 誰もが、審判は人間であって間違いも犯すことを想い起こし、審判とその判定をリスペクトしなければならない。

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