石井紘人のFootball Referee Journal

「45歳でもまだまだ動きますし、どこか悪いわけでもありませんし、荒木(友輔PR)や彼らに負けるつもりはない」佐藤隆治氏にベストマッチを訊いてみた【レフェリーブリーフィング2023スタンダード説明会】

本日、日本サッカー協会(JFA)審判委員会による2023年の第1回レフェリーブリーフィングが行われ、最後には昨シーズンで勇退を発表した佐藤隆治氏への質疑応答の場が設けられた。

 

―VARとして試合に関わることもありませんか?

 

「VARとしても試合に関わることはありません。」

 

―(佐藤氏のレフェリングを褒める言葉を述べた後で)また戻って復帰して欲しい。

 

「審判員って褒められること慣れてないので、ちょっと驚いていますが、嬉しいです。ありがとうございます。」

 

―Jリーグアウォーズの時に「胸をえぐられるようなこともあった」とおっしゃられていました。おそらくカタールW杯の事かなと思ったのですが、そのことについて。また、選出されなかった部分には、AFCの審判や国の関係性(参照リンク)も作用したと見ているのですが、その序列を変えていくためにJFAとして、佐藤さんとしてやっていきたいことはありますか?

 

「あのーそうですね。コメントをしないといけないということで、どうコメントしようかなと思った時に、5月の中旬くらいだったと思います。何か発表された訳ではなくて、信頼している人から「見た?」って聞かれて「何を?」って返したら、「Yahooに出てるよ」と。それで(カタールW杯不選出)知ったんです。

そのリストを見て、「あーなるほどね」と思いました。色々な人が色々な見方をされるので、W杯というのはロシアW杯の時もそう思いましたけど、色々なものが複雑に噛み合ってセレクトされている。どの試合を吹くか・何試合を吹くかなど、色々なものがあるし、ロシアの時含めて身をもって体験してきたことなので、それはそれで素直に受け入れました。

ただ、振り返った時に、たとえば誰々がサポートしてくれなかったとか、あの試合がこうだったというのは正直ないんです。

コロナというとんでもない事態になって海外で笛を吹くという機会も、リスクがある中で、日本政府としてもそうだし、JFAとしてもそうだし、なかなか海外には行けない。その中でも、どうしてもW杯に行きたいという僕をJFAはフルサポートしてくれた。そして僕もそれに向かってやってきた。細かいことを言えばあの判定がというのはありますけど、自分が「やるべきこと」「こうだということ」はやってきた自負がある。みんなにサポートしてもらったこともあるし、その中で選ばれなかったのは、(自分の)落とし所は「力がなかった」ということと「縁がなかった」のかなと。

(不選出に対して)ネガティブはなく。当然、穏やかではなかったし、あのリストを見た時の気持ち、「自分は11月にカタールの地に立つことは出来ないんだ」と知った時の感情とか感覚は一生忘れないと思う。

でも、その時に、2022年のJリーグの最後の試合まできちっとやり切りたい。それが僕のモチベーションだった。W杯は大きな目標だったので、トレーニングなど色々な辛い事があっても、“W杯のためだから”と支えてもらえるものがあった。5月にそれがなくなった時、シーズンを最後まできちっとやり切るところがモチベーションだった。

その結果ああやってアウォーズで賞をいただけたことが本当に嬉しかったし、悪いことばかりではなかったな(笑)という思いです。

あとは、アジアの中での序列であったり、中東のレフェリーが巧くなってきたのも事実です。それは競争だと思うし、日本も当然あぐらをかいているわけにはいけない。

今回の結果を次に活かさないといけない。僕がこの立場で出来ることは限られているかもしれません。でも少なくとも、(国際審判員として)美味しい思いもしたけど、つらい思いもしてきて、次の世代や、次の次の世代が世界で戦う姿を僕も見たいし、そのためにできることは小さいかもしれないけど、生の声を伝えてやれることがあればぜひやっていきたいです。」

 

―勇退の決断というのは?

 

「皆さん、「なんで辞めたの?」「いつ決めたの?」と興味があるかもしれませんが、それも誰にも言わずに墓場まで持っていきます。ただ、アウォーズの時には、辞めることを決めていました。リーグが終わってから決めた訳ではなくて、シーズンのあるタイミングで、次のステップというか一つ決断をしようと。その翌週に、昇格プレーオフという、最も重いと言える試合が入ってくるという中で、そこをちゃんとやりきりたい、と。

これからは今までと違ったチャレンジで、本当に自分にとってチャレンジだと思う。さっき荒木(友輔PR)が自分は身体が動くほうだと言っていたけど、僕はいま45でもまだまだ動きますし、どこか悪いわけでもありませんし、彼らに負けるつもりはない。

それでも区切りをつけるという決断を自分がした。いま歩き出していて、後悔はしたくない。やっぱりやめなければ、あの時言われたように戻れば良かったと思いたくないので、自分で決断したことなので、振り向かないで前を向いていきたい。」

 

そう語り終えた佐藤氏には、自然とメディアから大きな拍手が起きた。

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