石井紘人のFootball Referee Journal

無料:何のための、誰のために応援ルールを守らなかったのだろうか?各ジャンルの先鋭化問題「新しい層を『知らないのに入ってくるな』と邪魔する」のではなく、Jリーグ開幕時の初心に

誰のために『応援ルール』を守らなかったのだろうか。

710日から5,000人までの観客入場を解禁したJリーグ。安全のためにも、また世論の理解を得るためにも、新型コロナウイルス感染防止ガイドラインが策定された。

5,000人という限られた人数だからこそ順守されると思っていたが、期待は裏切られる。

コロナに関しては様々な見解があるのは理解している。テレビにて専門家が危険性を主張する一方で、堀江貴文氏や何人かの専門家は死亡者数から現在の対応に疑問を呈している。未知のウイルスだけに、どちらが正しいかは歴史が証明することになるため、ここでは置く。

いまサッカー界全体で議論すべきなのは、なぜ策定した『応援ルール』を守れなかったのか?ということだ。

現在、チーム内のコロナ陽性の可能性で試合が中止になっているクラブもある。選手たちがセンシティブな状況の中で、新型コロナウイルス感染防止ガイドラインをやぶってまで声やブーイングを起こすことが応援になるのだろうか?

いや、なると思っているのだろう。

そういった先鋭化された思想は、どのジャンルでも問題になっている。

たとえば、EXITの兼近氏は『ワイドナショー』(フジテレビ)にて、お笑いというジャンルに新しい層・若い子が興味を持つようにチャレンジをすると、「お笑いファンが『知らないのに入ってくるな』とか邪魔する」と嘆いていた。それを東野幸治氏が「村があんねや」と評したが、今回の問題からも似たような空気を感じる。

「応援はこうやってするものだ!」

とにかく急進的、自らの主義主張のみで動いている。選手、クラブ、そして彼らが所属するリーグが見えていない。ネガティヴな報道に繋がり、スタジアムから人が離れる危険性があってもなくても構わないのだろう。

では、どうすれば理解を促せるのだろうか?FBRJのポリシーはオルタナティヴある議論である。ということで、対応策を記したい。

以前、SNS上で審判員への誹謗中傷を書き込んでいた方がいた。同意見以外には耳を塞いで議論をせず、知ろうとする姿勢も感じなかった。その方の耳に届いたのは、応援していたクラブのOBからのたしなめる声だった。先鋭化している方こそ、応援するクラブのレジェンドからの声は聞かざるを得ない。

今回の件も、各クラブの選手やOBがサポーターへのメッセージを発信すれば、ルール厳守に繋がると思う。

先日、Jリーグメモリーズという27年間のJリーグのベストゴールズとベストシーンを119分に詰め込んだDVDを発売したが、そこには当然サポーターがいた。とにかく多くの美しく、時には悲しいシーン、フットボールの喜怒哀楽があった。

昔が良かったではなく、Jリーグ開幕時の初心を忘れてはいけない。人の振り見て我が振り直せ、と自戒した。

愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む。

 

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