石井紘人のFootball Referee Journal

無料レフェリー記者ブリーフィング前編①今季の基準であるフットボールコンタクトとラフプレーの境目とは?【審判批評コラムJFA Media Conference on Refereeing 2018】

今回の隔週コラムレポートは先月、Jリーグ開幕前に開催された『JFA Media Conference on Refereeing 2018』(参照リンク)をレポートしたい。

まずは日本サッカー協会(JFA)小川佳実審判委員長の挨拶から始まった。

「皆さんこんにちは。本日はスタンダード説明会にお集まりいただき、ありがとうございます。明日から2018シーズンが始まります。昨日、スタンダードを全クラブに説明を終えました。関西でもメディアの皆様に説明させて頂きました。

この後の懇親会では、そちらにおりますレフェリーたちに根掘り葉掘り聞いて頂ければと思います。

彼らが今の日本のトップのレフェリー、アシスタントレフェリーとしてJリーグを担当しています。

彼らの人となりを聞いて貰えればと思いますし、事象について答えるのは難しいかもしれませんが、どんな考え方を持ってレフェリングに取り組んでいるのかは聞いて貰えればなと思います。

昨日、マスカットでACLAFCチャンピオンズリーグ)のイランのエステグラルとサウジのアルヒラルの試合がありました。いま、両国の関係でホーム&アウェイではできないので、ニュートラルなオマーンで行われ、彼らが割り当てられました。佐藤隆治、相楽亨、そして山内の三名がワールドカップにトリオとしてノミネートされていて、おそらくですけど三月の最期のセミナーで(ロシアワールドカップの審判団が決定する)。今までは一月の末くらいにはワールドカップの最終リストは発表されていたんですけど、今回はドバイで三月の末くらいになりました。そういった意味でも、彼らの話を聞いて頂ければと思います。」

 

また小川委員長はビデオアシスタントレフェリー(VAR)についても言及し、三月に国際サッカー評議会のテクニカルダイレクター同席のもと、メディア向けに説明会が行われることもリリースされた(参考記事:日本のVARへの取り組みは?)。

 

そして、上川徹JFA審判委員会副委員長S級インストラクター(トップレフェリーグループシニアマネジャー)から今季の基準について説明が行われた。

 

「選手の皆さん、審判サイド、メディアの方々。日本のサッカーに関わる全ての人たちが同じような考え方を持つことが日本のサッカーをフェアにしていく、多くの人たちに愛されるようになると思います」と趣旨の後に、昨年のデータが公開された。

 

まず【反スポーツ的行為】がJ1J2J3と減少。

その中でも【相手の大きなチャンスとなる攻撃を妨害、または阻止するためにファウルを犯す】が減り、

昨年、「選手同士の対立を引き起こすようにもっていった選手は警告になる」と説明のあった「選手同士の対立を引き起こす行為」も減った(参考記事:退場となった清水エスパルス松原の乱暴な行為を誘発した?ジュビロ磐田高橋にカードは?)。

 

一方でJ1J2J3共にラフプレーの警告が増加した。

「デュエルという言葉も出ていますし、もっとタフに逞しくというのが求められているというのは選手の皆さんも理解していますし、我々レフェリーサイドも『それがなければ世界では戦えない』というのは分かっています。

ただ、ラフプレーは求めているタフさや逞しさとは違います。ボールに行こうとしているのは分かるんです。ただ、そこには相手競技者がいるんです。

ボールに行けば相手競技者はどうなってもいいという考え方ではなくて、タフさや逞しさにはフェアプレーがあって、成り立つものだと思います。

あとはハンドリングの考え方。私も7クラブ回ったんですが、選手の考え方も皆さんにお伝えできればと思います。どうしても腕にボールが当たるとハンドの声があがります。」

 

ハンドリングだけでなく、オフサイド、【オフサイドポジションから移動した、あるいは、オフサイドポジションに立っていた競技者が相手競技者の進路上にいて相手競技者がボールに向かう動きを妨げた場合、それにより相手競技者がボールをプレーできるか、あるいは、チャレンジできるかどうかに影響を与えていれば、オフサイドの反則となる。】、特にゴールキーパー(GK)の視界を妨げる、GKのプレーの可能性を妨害するといった映像も選手たちに説明を行ったという。

これは戦術的に採用しているチームが増えたからだろう(参考記事:戦術としてオフサイドポジションに一人置く)。

 

ちなみに、スタンダード映像はJFA審判委員会だけで作成している訳ではなく、毎年JFA技術委員会にも映像を見て協力して貰っている。

さらに今年は選手協会にも見てもらい、選手目線での意見も交換したようだ

そのスタンダード映像の前にキャプテンの映像が流された(参考記事:柏レイソルの強化担当者に伝えた大谷選手のキャプレンシー溢れる対応に感謝)。

 

「対立が起きた時に、審判だけでコントロールするのは難しいんです。それを選手の皆さんにもお話しをしまして、個々が落ち着いてくださるのが一番良いのですが、エキサイトしていたりします。そういった時に我々の助けとなるのがチームのキャプテンです。」

 

互いのリスペクトが感じられる映像(参照リンク)に続いて14のスタンダード映像が流れる。

「スタンダードの映像の中にはレフェリーが正しい判定を出来なかったシーンもあります。またファウルをした選手を批判するものではなく、理解を深めるための映像です。ちなみに、僕は7クラブ回って、一人だけ全問正解の選手がいました。」

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 「引いた映像だと後ろからトリップしているように見えますが、この映像を見ると相手にふれる前にボールに触れています。その後にコンタクトが起こるのは、サッカーでは起きることです。コンタクトも相手競技者に対して、危険ではありません。」(参考記事:池内明彦主審のナイスジャッジ

 

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