石井紘人のFootball Referee Journal

レフェリーは謝らないし、罰を受けない?「自分でやったことがない人は、それがどれだけ大変なことか分からないため、痛烈な批判をしてしまいがちです」【審判批評無料コラム】

「審判員はミスしても謝らない」

「選手にはペナルティがあるのに審判員にはペナルティがない」

そんな意見を目にするが、はたして審判員を知ろうとしているのだろうか?

一昨年あたりから、審判員とメディアが触れ合う機会が増えている。企画書が必要な取材申請をせずに、日本サッカー協会スタッフの目を気にすることなく取材できることで、審判員の素顔がメディアに伝わり、苦悩なども報じられるようになった。最たる例が家本政明主審のエピソード(参考記事:炎上した“させられた”家本政明レフェリーがSNSと心を閉ざした理由)だろう。

話を戻して、「審判員はミスしても謝らない」と言うが、そんなことはない。たとえば、山本雄大主審に、2015ゼロックススーパー杯(参考記事:オフサイドのミスと遠藤への微妙なジャッジ)について聞くと、「オフサイド後の森脇選手への異議。あれは、僕がオフサイドの誤審をしなければ起こらなかった。なので、森脇さんには、後で謝罪しました」(参考記事:山本取材記)と教えてくれる。そして、ミスを防ぐために、どうすべきかも付け加える。また、そういったミスジャッジがあれば、割り当てが変わることだってある。

選手にドラマがあるように、審判員にもドラマがある。あとは、それを知ろうとするかどうかだ。

「自分でやったことがない人は、それがどれだけ大変なことか分からないため、痛烈な批判をしてしまいがちです」(福沢諭吉)という言葉を、私は肝に銘じている。批判するならば、知ること、知ろうとすることが必要だと思う。誤った情報を拡散させることは齟齬を生む。

「選手にはペナルティがあるのに審判員にはペナルティがない」という意見だが、審判員も割り当ての停止もあれば、Jリーグ担当審判員から外される審判員もいる。それは調べればわかることだ。

もしかすると、「クビにした審判員に会見させろ」という暴論なのかもしれないが、Jリーグクラブが、敗戦後にミスした選手のプレーを糾弾し「ミスしたのでクビにします」と会見を開くだろうか?

「審判員を知れば大変さが分かるから誤審を許そう」ではなく、跋扈する中身のない感情的なバッシングで審判員はレベルアップすると思えない。そうではなく、現状を分析したうえで、要求すべき。「謝れ」「処分を公開しろ」でどのように技術が向上するのだろうか?

無料:なぜ浦和レッズ×湘南ベルマーレの杉岡の幻のゴールに?審判団は副審の情報を覆せる確証がなかった。「『審判はミスしても処罰されない』というが、選手より厳しくて表には出ていないけど数か月試合を担当できない」(原氏)

ということで、山本主審のターニングポイントとなった誤審の原因や世界のレフェリーから学んだことを取材した(2017レフェリーブリーフィング山本雄大インタビュー)。

 

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