石井紘人のFootball Referee Journal

【無料/連載⑤種をまく指導者:坂本康博のN-S式トレーニング】1-1(PK3-5) 流通経済大学「ぬかるんだピッチでのPKはカカトからいくな」

―流通経済大学(流経)戦を終えて、如何ですか?

 

「インカレにも最終で滑り込んで、ここまで来られたという意味ではよしとしないと。」

 

―力の中では、良く頑張ったと。

 

「トーナメントっていうのは、強いから勝てるというものではないし、色々な要素があるんだけど、今日であれば先制した時に、どう戦うかっていうのをトレーニングしていたんです。にもかかわらず、ああいう形で失点してしまった。これもサッカーです。」

 

石井:二回戦とは違って、守備がだいぶ整備されていた様に見えました。どのようなトレーニングを?

 

「一年坊の(太田)賢吾が、ちょっと落ち着いたっていうのがあります。それと、坂本修(佑)が、周囲に声をかけながら、安定してやってくれた。今まではバタバタしてしまっていたけど、一年生のセンターバックをよくカバーしてくれた。」

 

石井:おっしゃるように、修君のところが本当に良かったと思うんですけど、そこへの指示というのは?

 

「ステップワークです。“大股”になるなと。刻んだステップワークで動くようにと。」

 

石井:村上(昌謙)君も凄く良かったと思います。それだけに、PKは止めるかなと。

 

「村上、(PKの時に)読みすぎちゃいましたね。力みが出て、いつものような反応が出来なかった。」

 

石井:(澤上)竜二君も、延長後半から“らしさ”が出てきたなと。やはり、スペースが生まれれば、竜二君はあれくらいやる。

 

「なかなか前を向かしてもらえないからね。でもね、このレベルで前を向かなかったらダメだと。このマークくらいなら、シュートまで持っていく力をつけないとね。」

 

石井:リオ五輪候補の練習を取材に行っていたんですけど、レベルが上がると、まさに先生がおっしゃるような課題が竜二君にありました。

 

「そうです。ボールの持ち方、競り方です。「逃げるな」という指示をしました。前でボール触ろうとすると、相手は絶対にスライディングしてくる。だから、体を寄せていけと。それは出来ていたと思うんですけど、寄せていっても、次から次へと来るからね。」

 

石井:その寄せ方が、“大足”でいかず、お尻から入って、相手をコントロールしていた。これは、二回戦から修正されたのでは?

 

「昨日は一日、そればっかりやらせました。」

 

石井:今日のチームの出来は?

 

「まぁ、今日はフルタイム覚悟していました。PKに行けば、村上がいただけにね。PK戦の前に、落ち着いてボールを置いて、コースを決めて、ピッチが雨でぬかるんでいるから、かかとから踏み込むなよっていう指示はしていたんだけども、外した選手はかかとから入ったよね。で、ボールが上にいってしまう。」

 

―山口(幸太)君は、今大会のヒーローになりそうでしたけど。

 

「そこまでの選手にはなれていないと思うけど(笑)でも、本当に大会に入ってから、冷静になってディフェンスしてくれました。」

 

石井:話を戻して、ダブルボランチへの指示っていうのは?

 

「ちょっとメンバーが変わるだけで、不安定な時と、今日みたいな出来になるときがある。だから、ずっとここのポジションをどうするかを悩んでいた。このポジションは、無駄なカードを貰ってはダメだし、プレーを冷静に考えて、無茶なプレーを選択しなくても出来ないと。遠藤(保仁)のプレーを見ないと。遠藤は、そんなに動いている訳ではない。でも、貰う角度が良くて、スっと動いて、ポンと良いプレーする。来年は、相当メンバー入れ替えて、一年生を3人から4人使うと思う。今年はなかなか難しかったけど、インカレの出場権を拾って、三試合も出来たんだから。

でも、「それでも負けたら悔しいよな」って(笑)」

 

石井:相手は名前のある流経じゃないですか。試合前に、どのような話をされたんですか?

 

「体を当ててくるし、クロスもバンバン入れてくる。そこのところで、接触する際に、ちょっと遅らせるとか考えて寄せていけと。ガチャガチャくるタイプが多かったので、競りの段階では負けない。ただ、うちも巧さというのはないから、延長までは考えていました。」

 

石井:流経は、試合開始と同時に、大体大を飲み込んでやろうと、一気に出てきましたよね?失礼ながら、大体大は慌ててしまうのではと思って見ていたんですけど、逆にそれをいなして、大体大がペースを握った。予想していたんですか?

 

「そう。3分くらいからね。あの中で、両サイドがえぐっていって、クロスというのが少なすぎた。流経のセンターバックは縦に強いんだから、えぐって、速いクロスを入れないといけない。なんだけど、ずっと合わせるようなボールばかり入れて。そうではないって指示するんだけども、そればっかりやってしまう。こういったピッチコンディションなら、オウンゴールを誘発だってする。合わせるのではなくて、強めのボールだよね。

でも、ウチの力からしたら上出来ですよ。前半も、後半も問題ない流れで、このグラウンドならば、何かが起こるだろうと。だから、ディフェンスをしっかりしようと。」

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