石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事/連載:Jリーグ紀行第3回】2012J1第5節 川崎フロンターレ×FC東京 扇谷健司審判団評

 

20,996人が詰めかけた多摩川クラシコを割り当てられたのは、中村憲剛がコイントスに来るのを待つ間、森重と談笑していた元JSL選手の扇谷主審だ。

1分、体に競った矢島のファウル。2分にも足を引っ掛けたということでファウルをとるが、微妙なものだった。当然、川崎ベンチ前のため、相馬監督がリアクションするが、しっかりとコミュニケーションをとる。この辺は扇谷主審にテクニックがある。試合は、互いにミスがなく、フェアな立ち上がりとなる。18分のシーンは、矢島が自分から間に入っていってぶつかったということでノーファウル。扇谷主審らしい基準だ。

21分、CK時、谷澤が煽るように中村に体をぶつけたため、中村がストレスをみせる。扇谷主審は、それを見逃さず、中村とコミュニケーションをとり、中村もこれで安心した素振りをみせる。同様に27分にもジェシと森重の間に入り、“私が見ている”と示す。38分のコンタクトも基準通りノーファウル。41分の小林と太田への介入も良い。43分、アフターでチャレンジした長谷川に警告。川崎ベンチ前だったため、相馬監督が長谷川のプレーに怒りをみせるが、ここでも早めの介入をみせる。直後のルーカスが倒れたシーンはファウルを貰いにいくような格好ということでノーファウル。45+2分、カウンターを防ぐため、体をぶつけて止めた高橋にアドバンテージ後に警告。

48分、遅れてスライディングタックルした長谷川に当然の警告。二枚目で退場となるが、スタジアム全体が納得の判定だった。49分、あきらかに笛が鳴った後にシュートを打ったレナトに警告。61分にも笛が鳴った後に、小林がシュートを打つが、これはレナトほどあきらかではないため、カードはなし。ポポビッチ監督は、「警告を出すべきだった」と不満顔だったが、ギリギリだろう。62分のレナトが倒れたシーンも基準通りノーファウル。また、この前の矢島のユニホームを引っ張った谷澤に対して、注意を与える。声をかけるタイミングなど絶妙で、フォーカスしてほしいシーンだった。

さらに71分、裏に抜けた小林がボールを取ったGK権田とぶつかってしまう。これにもポポビッチ監督は「これも警告を出すべきだった」と指摘するが、スローで近くから見ると、名波氏のいうように「互いによけた方向が同じでぶつかった」のがわかる。77分のレナトが倒れたシーンも、貰いにいった格好だったため、基準通りノーファウル。80分の森下のトラップは、手が不必要な位置にあったようにも見えたが、ギリギリか。88分の實藤が倒れたシーンのノーファウルも妥当。この際、倒れた實藤をよけようとした太田が足を怪我してしまうが、アクシデンタル的なものだ。90+5分、FKからのボールを矢島が高橋に引っ張られたとアピールするが、これは難しい。確かに腕に手があるように見えるが、引っ張っているという程度には見えない。妥当な判定だ。アディッショナルタイム6分にスタジアムは騒然としたが、実は私も4分だと思っていた。ただ、太田の怪我があってから、アディッショナルの表示を変えたようにも見えた。そう考えると、負けているチーム側からすれば、信頼できる対応で、理解できなくもない時間である。非難される材料にはならないだろう。

そんな採点:4の判定をみせた扇谷主審に対し、試合中、幾度となくポポヴィッチ監督がリアクションを起こしていた。そんなポポヴィッチ監督が、どのように審判を評するか。記者会見後、真っ先に話しを聞きにいった。

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