石井紘人のFootball Referee Journal

【石井紘人レポート】2014 開幕前審判員合同トレーニングキャンプ

2 7 日(金)から11 日(火)の5 日間にかけて、清水ナショナルトレーニングセンター(J-STEP)で「2014 開幕前審判員合同トレーニングキャンプ(主審)」が開催された。

 

 

2 7 日(金) 15001700 フィールドテスト

詳細はこちら→http://www.jfa.or.jp/coach_referee/topics/2014/5.html

 

 

2 8 日(土) 09001100 ストレングスセッション

15001700 持久力セッション

 

 

2 9 日(日) 10001200 スキルセッション

 

私は9日の朝から午後まで取材を行ったが、合宿が行われた清水は、関東地方を直撃した大雪の影響はまったくなし。トレーニングへの支障なく合宿は進んだ。

 

今年の合宿は、自由参加という形式がとられた。というのも、プレシーズンマッチの割り当てやアジアチャンピオンズリーグ、講演などがあり、プロフェッショナルレフェリー全員を招聘するのが難しいからである

とは言え、20名以上の主審と、副審の相樂亨と名木利幸が参加した。

 

そんな今年のトレーニングは、ピッチを二面使って行われた。

 

一面全体を使ったのは、JFA審判委員長の上川徹、トップレフェリーインストラクターの岡田正義、レフェリーフィットネスインストラクターの山岸貴史の3人だ。

 

GK1+DF3人対FW4人という状況を、両ハーフコートに作る。

上川・岡田、そして主審たちはハーフウェーラインに集まる。

主審がラダーを踏んだ後に、上川・岡田がどちらかのコートにボールを蹴ると、通常の試合同様に選手たちが動き、主審も走る。

基本的には、上川・岡田からボールを受けたFW陣がシュートまで持っていき、GKがキャッチし、そこから上川・岡田に再び展開。受けた上川・岡田は同サイドのFWにパスすることもあれば、そこからカウンター形式でアザーサイドに展開することもある。

かなりハードで、実践的なトレーニングだ。

 

「俺ら(上川・岡田)にボールが入った時、俺らの位置、中盤を見るのももちろんだけど、その先も見ないと。」

 

「ボールも見ないとダメだぞ。予測し過ぎて、同サイドにボールがきたのに、アザーサイドに入り過ぎだ。」

 

「体の向き、考えないと。串刺しになるよ。」

 

「入る方向、そっちじゃないだろう。何であっち(にポジショニングをとった)?センタリングを予測した?」

 

GKがキャッチする時、入りすぎるとカウンターについていけなくなるぞ。」

 

GKがファンブルするかもしれないから、最後まで見ないと。」

 

「(対角線審判法でアタッキングサードにボールが入るとき)広がりすぎだぞ。」

 

「その位置では。もっと寄らないと。」

 

さらに山岸は「走っている時に頭揺れているぞ」とフォームを指摘する。このフォームは、アイパッドで山岸が撮影し、その日のうちに各審判員のPCのフォルダに共有される。

 

頭が揺れない走り方は、審判員にとって非常に重要で、夏嶋隆も家本政明や名木に推奨している。頭をTVカメラと考えれば一目瞭然で、TVカメラが揺れれば、当然、映像は見辛くなる。同じ原理だ。

 

 

もう一つのピッチでは、ハーフコートを使い、JFA審判副委員長である小幡 真一郎がアドバンテージの指導を行った。

ハーフウェーラインのサイドに立った主審が、近くにいるオフェンスにパス。オフェンスはDF11の状況から、アタッキングサードで22の状況で待っているFWにパスをする。

このパスを出した瞬間や、22の状況でボールが入った際にファウルが起こり、アドバンテージを取るべきだったかが議論される。さらに、主審が走る時に、センターサークルで数字を出すスタッフがおり、その数字が何番だったのかも答えなければいけない。

広い視野はもちろん、パスが出た後のオフサイドの確認、ロールバック、アドバンテージなど様々な要素が詰められている。

ここで若手に積極的に指導を行ったのが、吉田寿光や相楽である。

 

「ファウルがあっても、一回待って、その後でアドバンテージのシグナルでもいいよ。じゃないと、プレーオンってシグナル出したのに、すぐにロールバックになるでしょ。それよりは、ファウルがあって、一旦待つ。そこでチャンスにならなければ、笛を吹けばいいし、繋がればシグナル出してもいいし、繋がったかフィフティになったら、ロールバックも出来る。見ている人たちも分かりやすいでしょ。」

 

若手審判員たちにアドバンテージ、ロールバック、笛を吹くタイミングを徹底的に指導した。

 

 

残りのハーフコートでは、JFA審判委員会育成部会長である黛俊行が、クサビが入ってからの判定を行った。

 

センターサークル付近で主審がステップを踏み、終わるタイミングで33の状況にクサビが入る。ここで、ファウルかノーファウルか、はたまたシミュレーションか。さらに、PKFKかというラインを主審と副審でジャッジした。毎年行われるトレーニングである。

 

 

 

今回の合宿を取材して感じたのは、上川らしいなということだ。

 

観客目線では、審判員の『ポジショニング』。

選手目線では、審判員の『アドバンテージ』。

 

この二つを徹底することで、観客には「主審のポジショニングを見て、受け入れて欲しい」と語りかけられるし、チーム側には「笛が鳴るまでプレーして下さい」とアナウンスできる。この二つが改善されれば、審判員は試合をスムーズに進めることができる。

それだけに、『ポジショニング』は厳しく指導されていた。

 

トレーニングを見ていても、ポジショニングは経験がモノを言う部分がある。だからこそ、徹底したトレーニングが必要だ。

吉田寿光は、見事なポジショニング、ステップをみせていた。逆に、ポジショニングは的確でも、それ以外に問題を抱える主審もいる。たとえば、トレーニングをみて、「こんなにポジショニングが良い若手主審がいたんだ」と驚き、JFAスタッフに名前を訊くと、FBRJで採点が低いことが多い主審だったりする。ポジショニングは大事だが、それだけでは主審は務まらない。

 

審判界全体の話をすれば、やはりインストラクターの質に差があるとも感じる。この辺は監督同様に、年月が解決していくとは思うが。

 

 

その後、2014 開幕前審判員合同トレーニングキャンプは、9日はリカバリー、

 

2 10 日(月)09001100 ストレングスセッション

15001700 持久力セッション

 

2 11 日(火)09001100 トタルセッション

 

というスケジュールで終わった。

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