【連載:Jリーグ紀行第1回】2011J1第30節 横浜FM×浦和 山本雄大審判団評
アジアチャンピオンズリーグ出場へ負けられない横浜FMと、敗れるとJ2降格へのカウントダウンが始まってしまう浦和。そんな難しい試合を任されたのはJ1担当最年少主審である山本雄大だ。
立ち上がり40秒、アドバンテージのシグナルをしっかり出す。2分、宇賀神のホールド、7分にもキッキングをしっかりとる。3分のセルヒオのスライディングタックルのノーファウルの見極めは、体の向き、そして抜群のステップの踏み方からの判定だった。10分、足を高く上げた中澤のファウル。11分の山田直のチャージのファウルの見極めも的確。20分の中村俊の山田直に対するスライディングタックルは、フィフティにも見えたが、立ち上がりの基準からファウルとした。25分には、中村が痛む素振りをみせたため、一旦試合を止めてドロップボールの判断をする。浦和のビルドアップだったために、試合を止めても問題ないという判断をしたのだろう。37分のセルヒオへのスライディングタックルもボールにいっているためノーファウル。38分、梅崎に抜かれた所をホールドで止めた渡邉に反スポーツ的行為で警告。良い位置にカードの基準を置いた。45分の平川へのチャージは、ボールにプレーできる範囲内での、ショルダーへのチャージのためノーファウルということに。背中にチャージしているようにも見え、ギリギリの判定か。この競り合いで負けた平川が、兵藤を引っ掛けて止めたため、反スポーツ的行為で警告に。
46分の判定は微妙で、ノーファウルでも良かった気がする。逆に51分の梅崎へのチャージは、手も出ておりファウルのような気がする。足のコンタクトは厳しく取り、上半身のチャージには寛容という基準のようだ。54分の渡邉へのチャージも同様にノーファウル。
迎えた48分、大きな判定が起こる。
PA内に入ってきたクロスボールに、ボールにプレーできる範囲外でお尻から不用意にチャージした小林のファウル。
PKに。小林としては「20年間のサッカー人生ではじめてとられたファウル」だというが、現象として
基準を考えると、PKを取られる可能性もある。
一方で、60分のファウルは、柏木を押さえたということだろうか。今日の基準なら、ノーファウルでも良かった気がする。わかりづらい判定からゴールが生まれたため、横浜FMとしては納得いかなかったようで、中村俊は主審に身振り手振りで異議を唱えていた。TV映像では、そのようなシーンがなかったため、主審の判定に選手が不満をもっているのは伝わってこなかったが、スタジアムには不満が蔓延していた。PKへの不満が、この判定で爆発したのだろう。67分の高橋のキッキングも、確かに足に影響しているが、相手がファウルを貰いにもきている。そのため、鈴木啓太が異議を唱えてしまい警告に。
とは言え、72分の中澤に対するセルヒオのファウルや、77分のセルヒオのボールにプレーできる範囲外でのチャージなどはしっかりと見極める。80分には、交代で入ってきた高崎に、最初のファウルの際に注意をする。空中戦での競り合いが予想されるため、先に大きな判定が起きないようにするコミュニケーションだろう。84分、繰り返しの違反で山田直に警告。87分、高崎に競り負けて、抜かれそうになったところをファウルで止めた栗原に警告。89分の原口と小林の競り合いのノーファウルの見極めも良い。90+2分、ジャンプした坪井の足が、ジャンプしなかったキムに当たってしまうが、アクシデンタル的なもののため、ファウルはなし。これにも横浜FM選手たちはストレスをみせる。
前半はほぼパーフェクトなレフェリングだったが、後半、60分の判定をはじめわかりづらいものが多くなってしまった。山本主審なら、もっとフットボールコンタクトの多い試合になると期待したが、期待以上のレフェリングではなかったというのが正直な感想である。
ただ、批判が採点:0のようになっていたことには驚いた。
記者会見場に向かうと、「あれがPKになるというのは、浦和をJ2に落としたくないんじゃない」という声も聞こえた。「あれは、ボールにプレーできているでしょ」という議論ならわかるが、事実に基づく仮説の提示が行われていた。
そんな空気のなか、木村監督が会見にあらわれる。
「はー。ああいう流れを変えられる選手がほしいですね。今日はそれがレフェリーだった」
会見場は同調するような笑いに包まれた。
「ほんとに、ああもピーピーピーピー笛を吹いて。」
この言葉を聞いて私は質問を決めた。
山本主審がベストだったとは思わない。ただ、木村監督がどのような審判員を求めているのかを聞きたかった。
一つ目への質問が終わると、私は手をあげた。
「Football weeklyの石井と申します。レフェリーですが、いくつかの判定に問題があったと思われているのか? それとも、基準全てに問題があると感じているのでしょうか?」
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