川本梅花 フットボールタクティクス

日本代表の失点と敗退の理由 アジアカップ決勝トーナメント 日本 1-2 イラン

日本代表の失点と敗退の理由 アジアカップ決勝トーナメント 日本 1-2 イラン

目次

失点の場面を振り返る

左サイドバックの伊藤 洋輝の個人戦術は正しかったのか?

ロングボール対策と選手交代

アジアカップの決勝トーナメント、日本対イラク戦が2024年2月3日の20時30分にエデュケーションシティ・スタジアムで行われた。試合は1-2で日本が敗れた。この記事は、日本の直接的な失点となったセンターバック板倉 滉のプレー、右サイドバックの伊藤 洋輝の個人戦術、ロングボールへの対処や選手交代など、筆者が疑問に思っている点を簡潔に説明するために、ディフェンダーとしてシンガポール・アームド・フォーシーズンFC (現在はウォリアーズFCに改名)で活躍した新井 健二に話を聞いた。新井は現在、高校のコーチをしている。

失点の場面を振り返る

—失点の場面を振り返ると、冨安 健洋と板倉が衝突したよね。ペナルティエリア内のあのような混戦状態では、あってもおかしくない出来事、まあ、事故と呼んででもいい。

新井 確かにあのような場面は試合の中で起こりえることなんですが、最初にセリに行ったのは板倉なんですよ。それをセリ切れなかった。冨安も急に来たのでセリに行かざるを得なくなった。本来なら、板倉がボールに触ってくれさえすれば、なんの問題もない場面だった。

—ディフェンダーの板倉はボールを見ていたので、自分の背後にいる冨安が見えていなかったのかな。

新井 冨安を見えていなかったことも問題ですが、板倉が考えていたよりもボールが伸びたんですよ。

—あのような競り合いの場面は、ディフェンダー同士で当然声かけするよね。

新井 板倉は自分がいけると思ったから行ったんで、冨安からしたら板倉のポジションが見えていたので、自分がセル方がいいと考えたと思うんです。おそらく、冨安は「OK」と声かけをしていたんじゃないでしょうか。でも板倉がセリに行ったけどボールに触れなかったから、冨安としては不意打ちのような状態だったんでしょう。

—イランの選手に板倉が足を出したよね。それでPKが与えられたんだけど、あそこはディフェンダーの習性としてクリアしないといけないとなって、とっさに足が出るのものなの?

新井 板倉は冨安とかぶってしまっていたので、相手の選手が見えなかったんです。ボールに触られずにピッチに落ちたことがわかっていたから、ボールを外に出さないと、と考えて足を出したんです。

—経験豊富な新井くんは選手時代に似たようなことはあった?

新井 混戦状態になった時に、後ろを向きで味方とかぶってしまうと、その後にクリアしないといけないと思うので、ガムシャラに足を出したがためにPKを与えたことはありました。ディフェンダーからすれば一種の事故のようなものだと思います。

—逆転されたあの場面をまとめると、ディフェンダーはボールを見るから周りの状況が視界に入らないことがある。さらに思ったよりもボールが伸びたので触ることができなかった。それによって結果的にPKを与えてしまった。

新井 ファーストディフェンスの板倉が、ボールの落下地点を誤ってしまったことが事の始まりです。

—板倉のミスと言えるの?

新井 セリに行った板倉が触らないとダメだったと言うことです。冨安のポジションからクリアするのは難しくないので、冨安が板倉に「OK」と言っているなら、板倉は冨安に任せればよかった。

左サイドバックの伊藤 洋輝の個人戦術は正しかったのか?

—左サイドバックの伊藤が相手の右サイドの選手に置いて行かれていたよね。

新井 フィジカル面の差もあるし、個人戦術の問題もあります。どのように相手に前に行かせないディフェンスをするのか。そこがポイントです。

—サイドの選手として、相手がボールを持って突破しようとした時に、「ボールを奪いに行った方がいいのか」あるいは「ディレイさせるプレーをした方がいい」のか。どっちがいいのかな。

新井 ボールを蹴ってくるチームが相手の場合、日本が攻めていたらラインが高くなるので、どうしても背後が気になってしまう。だから、ディレイさせるとしても、どこの場所でやるのかは、状況によりますよね。どこの場所でボールを奪いに行くのか。チーム戦術としてみんなが共有していないとできないことです。代表の中でそういう打ち合わせがあったのかどうか。それに、相手の圧力が強くて「行けなかった」から後手に回ってしまったように、僕には見えましたけど。

—伊藤がボールを奪いに行けば、伊藤がいたポジションには誰かが埋めるわけだよね。状況とか場所にもよるんだろうけど、ああ言う時は「ボールを奪いに行った方がいい」のかどうなの? 僕は「ボールを奪いに行け」と思うんだけど。

新井 相手が蹴ってきたり、フィジカル面でパワーのある選手がいたら、サイドバックの背後を取られるリスクがあるので、抜かれた後のことを考えてしまうんですが、サポートがあれば「行った方がいい」です。完全に伊藤だけで守っているとなったらディレイするしかない。そうしたところも本来なら試合前に打ち合わせていないと行けないんですが。ただ、本当ならば「行った方がいい」と思います。仮に打ち合わせしていなくても、個人戦術を持って伊藤が自分の判断で「行って」しまったとしても、冨安なり守田 英正なりの周りの選手が伊藤のプレーを見て「カバーに入らないと行けない」となるので、もしかしたら、ディレイを選択したのは伊藤の個人戦術の判断ミスだったかもしれません。

ロングボール対策と選手交代

—アジアの中で日本とい戦うチームは攻撃パターンがある。ボールを日本に持たれるので、日本は必然的に前係になるから、日本の2人のCBの間にFWを1人立たせて、センターバックの背後を目掛けてロングボールを入れてくる。こうした戦い方に対する日本の対策は特に取られていなった。

新井 ポゼッション率を見れば、日本は60%以上で、そうするとボールを持っている時間が長いので、ラインが高くなります。前係になっている日本が、パスミスをしてボールを奪われるとマズい状況になる。センターバック2人でイランのワントップを見ている形だったので、フィジカルに強く初速が早い選手がトップに張っていたら、冨安も板倉も能力が高いですが、裏にボールを出された瞬間に一本のパスでやられていました。まあ、相手のフォワードの駆け引きのうまさを褒めるべきなんですが、冨安と板倉のどちらがワントップを見るのかルーズに見えましたね。どっちがワントップについていって、どっちがサポートなのかルーズに映りました。ディフェンスをやったことのある人ならわかると思うんですが、リスクマネージメントとしていつどこにボールが来てもいいように、チャレンジャーのカバーができる距離と、相手フォワードの位置を常に手元に置いておく必要があります。ラインを高くして、相手がオフサイドラインにいるから大丈夫なのか、と言う判断もありますけど、基本CBならばリスクマネージメントを優先して、ラインを上げたのならリスク管理を第一にしないと行けない。当然、冨安も板倉もわかっていることなんですが、同点にされて得点を奪おうとチームが攻め急いだ結果、そうした状況がディフェンダーの焦りに繋がって行ったんだと思います。

—ロングボールを上げさせない、つまり、ボールを蹴る前に相手選手に激しくプレッシャーをかけるのも一つの対処ではあるよね。

新井 確かに、プレッシャーがかかっている場合は、ボールを上げることはできませんよね。日本がロングボールを蹴られていたのは、ボールを失ってすぐなんです。だからプレッシャーをかける前に蹴られている。ボールの奪われ方が悪くて相手に蹴られた。

—後半になって、イランにセカンドボールをことごとく拾われていたね。そうした対策として、「フォーメーションを替える手があったんじゃないのか」と言う意見がある。具体的には4バックから5バックにする。後ろの2枚を3枚にして相手の勢いから守り切る。そうした意見をどう思う?

新井 攻め急いで前係になってしまったがために、ディフェンスが疎かになってしまった。相手が1トップでいたので、日本はセンターバック2人で対処できると考えていたとすれば、ディフェンダーを3枚にするよりも、ボランチを3枚にしてセカンドボールを拾えるような状態にした方がよかった。日本の戦い方はボールを保持することが前提になっているので、中盤の人数を増やした方が、相手が蹴ってきても対処できる。相手は1トップだから後ろを2枚から3枚にするよりうも、真ん中を3枚にして、攻め急いでいたやり方を落ち着かせるようなシステムの変更はあってもよかったかなと思います。

—同点にされてすぐに、前田 大然と久保 建英と三笘 薫と南野 拓実の2枚替えをしたけど、前田は替える必要がなかったと思う。プレスバックして相手からボールを何度も奪っていたからね。

新井 相手のパワーが強かったので、早く逆転しようと勝ち急いだ交代でしたね。大然がよかったので替える必要はないと僕も思いました。もし替えるとしても、ディフェンスができる選手を入れて、攻め急がずにまず守備から入ろうと言う選択もあったのではと思います。

—なるほど、すごく参考になる意見をありがとう。

川本 梅花

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