川本梅花 フットボールタクティクス

最終ラインの崩壊が失点を招いた【試合分析】明治安田生命J3リーグ 第16節 2022年7月9日 Y.S.C.C.横浜 3-1 ヴァンラーレ八戸

目次
両チームのフォーメーションを組み合わせた図
最終ラインの崩壊が失点を招いた

明治安田生命J3リーグ第16節 YS横浜 3-1 ヴァンラーレ八戸

ヴァンラーレ八戸は、4勝1分け10敗で勝点13の16位。Y.S.C.C.横浜は1勝2分け12敗の勝点5の18位。両チームとも成績不振によって新監督を迎えて戦っている。八戸はJ3第15節の松本山雅FC戦[0●1]を見れば、少しだけ選手とシステムが噛み合ってきた様子がうかがえる。一方のYS横浜は、前節・カマタマーレ讃岐戦で惜敗[0●1]を喫して5連敗となってしまった。不調の両チームが、どの試合でチームの流れを変えるのか。まれに、下位チーム同士の戦いがキッカケで、勝ち運を引き寄せてくるケースがある。それが八戸なのかYS横浜なのか。それでは試合を見ていこう。

両チームのフォーメーションを組み合わせた図


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八戸は前節・松本戦に続いて最終ラインを4バックにして「4-4-2」を組んできた。YS横浜の最終ラインは3バック。アンカーを置いた「3-3-2-2」のフォーメーションである。4バックの八戸は、両SBが高い位置を取った際の、背後のスペースをどうやってケアしていくのかがポイントになる。3バックの時はWBの背後をSPがスライドしてケアした。4バックの場合、リスクマネジメントを考えれば、どちらかのSBが高い位置を取ったなら、もう一方のSBは上がらずにステイして守備に重きを置くようなやり方ができるのかどうか。あるいは、CHがSB背後のスペースを埋めるのか。いずれにせよ、YS横浜は、八戸のSBの背後にボールを出して攻撃を組み立ててきた。

最終ラインの崩壊が失点を招いた

前節・松本戦は敗れたものの、リズムよく攻め立てた場面があった。ではなぜ、YS横浜戦は、3失点をして敗れてしまったのか。不思議に思うだろう。答えは簡単で、YS横浜が八戸からボールを奪った時に、八戸の最終ラインがバラバラになっているからである。その典型的なシーンが、39分の松井 大輔によるYS横浜の先制点である。

左SBの佐藤 和樹が高い位置を取ろうとして駆け上がる。YS横浜がボールを奪うと、疾走するFW林 友哉にパスが出される。八戸はボールサイドに全体を寄せている。この時の八戸の最終ラインには、本来いるべき場所にきちんとポジショニングされていない。

上記の図は、39分の得点場面となったシーンである。林から松井にボールが渡る時に、カバーに行っているのは右SBの小牧 成亘である。「4-4-2」のゾーンで守っている場合、ボールサイドの逆サイドは「捨てて」考えると言われている。つまり、チーム全員がボールサイドに寄せていくので、逆サイドは手薄になっても仕方がないのである。ただし、このシーンで問題なのは、最終ラインがバラバラになっていることである。右WBの菊谷 篤資にボールが渡った時に、左SBの佐藤が菊谷にプレスに行く。菊谷は佐藤をかわしてドリブルしてサイドを駆け上がる。ボールをもらいに林は下がってくる。林をマークしていたCB藤井 航大が振り切られて後追いすることになる。この時点で、最終ラインにはもう1人のCBの板倉 洸しかいない。つまり、藤井は、林が下がったのでついていきポジションを空けてしまったのである。なおかつ、林に一瞬で置いていかれてしまう。テクニックでもスピードでも凌駕されてしまう。藤井は、無理に林についていく必要がない。ついていくとしても、林に簡単に振り切られてはいけない。激しくプレスに行って前進するのを阻止するべきだった。藤井がポジションを空けなければ、少なくとも板倉と2人で最終ラインを形成できた。そうすれば、板倉のポジションももっと右寄りに位置できた。松井をフリーにさせることがなかったのである。

追加点となった2点目は、SB小牧の背後にボールを送られて、FW河辺 駿太郎がゴールラインまでボールを運んで、ニアサイドへマイナス方向からパスを出す。そこに林が飛び込んで得点を決めた。この失点も藤井が絡んでしまう。河辺がドリブルして深くまで切り込んでくる前にケアしないとならない。奪えなくてもボールをラインの外に蹴り出さないといけない。しかし、河辺のスピードについていけない。

八戸は、ディフェンスラインを再整備しないとならない。「4-4-2」のシステムの利点は、カウンター攻撃に向いていることである。しっかりと3ラインを形成して、ボールを奪ったら相手の「裏」を狙って手数をかけないでゴールを目指す。今後も「4-4-2」のシステムで臨むなら、トレーニングでも、カウンター攻撃の準備をしていくことが大切だ。相手の攻撃陣のスピードについていけるDFの選別が求められる。

川本梅花

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