川本梅花 フットボールタクティクス

藤枝MYFC戦で見せたヴァンラーレ八戸の勝利のための8項目【試合分析】明治安田生命J3リーグ 第3節 2022年3月27日 ヴァンラーレ八戸 1-0 藤枝MYFC【無料記事】

目次
第2戦のフォーメーションとスタメン
第3戦のフォーメーションとスタメン
両チームのフォーメーションを組み合わせた図
藤枝MYFC戦で見せたヴァンラーレ八戸の勝利のための8項目

明治安田生命J3リーグ第3節 ヴァンラーレ八戸 1-0 藤枝MYFC

省略記号一覧

第2戦のフォーメーションとスタメン

第3戦のフォーメーションとスタメン

J3第2節の鹿児島ユナイテッドFC戦からメンバーの変更は2人だけだった。WB小牧 成亘を丹羽 一陽に替えて、CH相田 勇樹を新井山 祥智に変更してきた。開幕してから前線の選手と後ろの選手の交代がないので、現状でのスタメンは固まりつつあるのだろう。

両チームのフォーメーションを組み合わせた図

同じフォーメーションの両チームは「3-4-2-1」のミラーゲームになっている。

藤枝MYFC戦で見せたヴァンラーレ八戸の勝利のための8項目

ピッチの芝生の状態と強風によって、ボールコントロールに悩まされた試合となった。両チームに言えることだが、普段なら決められるシュートが風の影響でわずかにズレてゴールポストやクロスバーに当たって跳ね返されるシーンが何度もあった。選手にとっては悩ましい状態だった。そうした中で八戸は、ホームゲームでの勢いを試合開始から発揮していた。この試合は、八戸の今後の戦い方を記したゲームになったと言ってもいい。今後もしも、戦いに迷いが生じたときは、藤枝戦のやり方を振り返ればよい。それくらい、チームの基本となる戦い方であった。

八戸の得点は相手のオウンゴールからだったが、八戸がゴール前にボールを入れて攻めていた結果の得点だった。では、この試合で見られた八戸の戦い方を整理してみたい。

  1. 試合開始から前線の選手がハイプレスを仕掛ける。
  2. 20分過ぎから無理にプレスに行かないで、ハーフウェーライン近くまで相手にボールを持たせる。
  3. 要所要所で前線の選手がプレスに行って、CHの選手も前進してプレスに行く。
  4. 中盤でのプレスに数人が参加して、サイドに追いやって、相手にプレッシャーをかける。
  5. 最終ラインとなるDF陣も前線のプレスに合わせてラインを上げる。
  6. WBが高い位置をとって、ゴールライン近くまで切り込んでクロスを上げる。
  7. SPが攻撃に参加してロングボールを入れる。
  8. CFがクサビのパスを受けて、STが相手DFの裏に抜ける。

簡単に記しただけでも8項目の利点が挙げられる。具体的に説明していこう。

1.の「試合開始から前線の選手がハイプレスを仕掛ける」は、CF萱沼 優聖とST島田 拓海の前澤 甲気が藤枝の3バックに順番にプレスに行く。藤枝は、WBにボールを出してプレスを回避しようとするが八戸のCHがケアしてSTが下がってパスコースを遮る。藤枝は、簡単にボールを前線に運べない。この「簡単に」が大切なことなのである。

2.の「20分過ぎから無理にプレスに行かないで、ハーフウェーライン近くまで相手にボールを持たせる」は、前半だけをみても、ハイプレス45分間通してやり切るのは無理な話である。試合開始の15分から20分の間は、激しくプレスをかけても相手の出鼻をくじくことは大切なことである。八戸は、20分過ぎから、相手 DFを敵陣ハーフウェーライン近くまでボールを持たせて、そこからプレスに行くようにした。

3.「要所要所で前線の選手がプレスに行って、CHの選手も前進してプレスに行く」は、4.の「中盤でのプレスに数人が参加して、サイドに追いやって、相手にプレッシャーをかける」と関係している。ハーフウェーライン付近で相手を待ち構えてからプレスに行くときに、CHの新井山も参加して2、3人で相手を挟み撃ちにタッチライン方向に追いやる。「中を切って外に出す」というプレスの原則に習ったやり方だ。逆に「外を切って中に出す」というやり方もあるが、八戸は前者でボールを持つ相手を追い込んでいた。

5.の「最終ラインとなるDF陣も前線のプレスに合わせてラインを上げる」は、前線の選手がプレスに行って前に進むと、当然、前線の選手と中盤の選手と最終ラインにいるDF陣との距離が開いてしまう。したがって、前線の選手がプレスに行ったら、同時に中盤の選手も追順して、さらにその後ろにいるDF陣もラインを上げないとならない。そうしないと、相手にスペースを与えてフリーでボールを持たれることになってしまう。

6.の「WBが高い位置をとって、ゴールライン近くまで切り込んでクロスを上げる」は、右WB國分 将と左WB丹羽 一陽が相手陣内の高い位置までボールを運んで攻めていた。それによって、藤枝のWBは高く上がれずに低い位置でのプレーを強いられた。こうしたWBの働きは、「3-4-2-1」の攻撃の際の優位性のポイントになる動きである。

7.の「SPが攻撃に参加してロングボールを入れる」は、SPの近石 哲平と下堂 竜聖がハーフウェーラインを越えて、ボールを相手DFの裏に入れたり、ペナルティエリア内に配給したりした。3バックシステムの場合、攻撃の人数が少なくなるので、SPが攻撃の手助けをするのは大きな力になる。

8.の「CFがクサビのパスを受けて、STが相手DFの裏に抜ける」に関しては、1トップの萱沼 優聖が、STの場所に降りてきてボールを受けて、ST島田 拓海が相手DFの裏に抜ける。そこにタイミングよく萱沼がパスを出す。島田は、相手の裏に抜けるプレーを特にしているので、こうしたやり方は、島田の特性を生かすためにも重要である。もっと何度も反復してもいいやり方だ。

以上の8項目が流れるように展開されていた試合であった。藤枝戦での戦い方が八戸が勝利をつかめるやり方である。今後の試合においても、この戦い方を基本にして相手チームを撃破してほしい。

川本梅花

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ