川本梅花 フットボールタクティクス

【インタビュー】#小幡純平「一選手で変えられることには限界がある」【無料記事】輝かしいシーズンの後に待っていた、つらい3年間 #ラインメール青森

【インタビュー】輝かしい3年間の後に待っていたつらい3年間…小幡純平「一選手で変えられることには限界がある」

目次
3年間チームが低迷した理由
優しすぎた望月達也前監督の言動とチームの緩み
規律がないチームは低迷、一選手の限界を痛感

3年間チームが低迷した理由

日本フットボールリーグ(JFL)ラインメール青森FCの中心選手・小幡純平に、昨季を振り返ってもらった。まずは2020シーズン開幕前にインタビューした記事を読んでもらいたい。

【インタビュー】#小幡純平「意識改革をしないと、昇格は難しい」【会員限定】#ラインメール青森 #reinmeeraomori

ここからの小幡の話は、望月達也前監督の3年間で味わった苦い経験と言い換えてもいい。小幡はコバルトーレ女川で現役復帰した奥山泰裕と同じく、2017シーズンのJFL年間通算2位を経験するなど、常にレギュラーでチームを引っ張ってきた選手だ。

東北社会人1部時代、ぬるま湯体質のラインメールを生まれ変わらせたのが、当時現役で現在は札幌大学サッカー部で監督を務める河端和哉だ。河端はラインメールに戦うスピリットを植え付けた。河端イズムとも言える「戦う姿勢と精神」。小幡はその最後の継承者だ。

3年間で全く違うチームになってしまったラインメールを、小幡はどう感じてきたのか。小幡に思うところを語ってもらった。

――どうして3年間かけて、チームは低迷してしまったのか?理由を教えてほしい。

小幡「これがダメだった」「あれがダメだった」とか、これといった理由ではなく、いろんなことがかみ合わなかった結果と言うしかありません。3年間、望月監督がチームの指揮を執られて、僕自身感じていたのは、厳しさを選手に求めてくれなかったことです。それが、強いチームになれなかった一番の要因だと思っています。

――厳しさを求めないとはどういうこと?

小幡 練習中に、僕は「これはまずいな」と若い選手のプレーに対して感じていた時でも、監督は「ナイス、ナイス、よくやれているよ」と伝えてしまう。そうした結果、若い選手は本当に勘違いしてしまった。ぬるい空気のまま練習をやっていて、ちょっとうまく行っただけで監督が褒めてしまう。そうしていくうちに、勘違いがどんどん増長してしまった。またベテラン選手に関しても、走れていない選手や戦えていない選手がいたとしても、そこをとがめず、監督が知っていて話しやすい選手を起用した。若い選手は「ベテランばかり優遇されて……」となってしまった。一方でベテランからしたら「若い選手は全然やってない」となる。

普段の生活に関しても戦い方についても、チームとしての軸が全くなかった。昨季は、いろいろな戦術を取り入れました。新しいコーチが守備のやり方を細かく指導したのですが、いくら良い話をしても、良い戦術を取り入れようとしても、軸となる部分が本当になかった。チームの指揮官は本当は誰なのか。誰の話を聞けばいいのか。そうしたことも含めてチームの軸となる規律が全くなかった。

これではチームの成熟は望めないと思っていた。そういう部分が改善されないまま試合に負け続け、メンタル的にもどんどん落ちていった。好不調に関係なく使われる選手は決まっていて、選手の入れ替えもなかったため、踏ん張り切れない試合も多かった。

優しすぎた望月達也前監督の言動とチームの緩み

――山崎真ヘッドコーチが、実際の指導をしていたの?

小幡 そう見えました。事務所でチームの話をしていた時に、何か決めるのはコーチでした。そうした話は選手たちにも伝わっていたため、選手は「なんで?」と思っていました。

――太田康介や神山竜一が1シーズンで引退したけど、彼らはチームにプラスになったの?

小幡 康介さんは若い選手と積極的にコミュニケーションを取って、若手とベテランの橋渡し役になろうとしてくれました。康介さんは、チームのために働こうとしてくれました。それは僕も見ていて、実感していました。ただ康介さんも一選手。変えられる部分にも限りがあります。現場の雰囲気作りは、監督やコーチングスタッフの力が大きなウエイトを占めています。そこを変えるのは、いくら康介さんが声かけをしても、難しかったと思います。

――中田仁司チームダイレクターはどんな役割だったの?

小幡 現場の選手と監督やコーチを評価する立場にあって、現場の意見を会社に要求する掛け橋になる役割だったと思います。

――機能していたの?強化だよね。

小幡 練習には毎日来ていて、遠征にも参加していましたが、肝心の契約の席にはいなかったです。何をしていたのかは、評価が難しい。中田さん自身も中途半端な立場だったと思います。ただ、中田さんだけは、チームとして守らなければならない、基本的な規律を若い選手に厳しく言ってくれました。

――例えば?

小幡「グラウンドには靴を履いてきましょう」とか。

――え?ああ、そうなの?車で来てそのままサンダル履いたままグラウンドに入るの?なんだそれ。そんなだらしない選手がいるの?

小幡 若い選手は「そんなことどっちでもいい」と思っているのですが、僕なんかは、そうした態度や考え方がピッチに現れると思うタイプです。

――若いとかベテランとか関係なく、そんな態度で厳しい試合に勝てると思っているんだ。

小幡 望月監督は全くとがめないので……。「ピッチでできていればいいじゃん」というタイプでした。それでできればいいですよ。でも実際は、そんなことする選手は、できないタイプの選手なんですよ。「ここ」という場面で腰が引けて戦えない。「自分はできない選手なんだ」と謙虚に自覚してプレーしないといけない。ところが望月監督はできていないのに「よしよし」と言うから、選手が勘違いをしてしまう。とにかく勘違いせず、やらないといけないのですが……。

――小幡くんは若い選手に話していったの?

小幡 もちろん、しました。近い選手には特に強く言いました。でも、ここが一番難しいところだと思います。僕とか康介さんが「そうじゃないよ」と言っていったとしても、結局、監督が「OK!OK!」と言ってしまう。そうなると僕とか康介さんが持っている「厳しさ」を、ほかの選手に求められなくなります。だから、その……正直、むなしさを常に感じていました。

規律がないチームは低迷、一選手の限界を痛感

――昨季は勝点16で、順位は15位。3年前のラインメールとは全く違うチームになってしまったね。

小幡 チームのスタイルとかやり方うんぬんは、一選手が口出しできる部分ではないですが、チームに浸透させるための持っていき方はあったのかなとは思います。例えば戦うスタイルに関してですが、ボールをつないでいくスタイルは良いと思います。ただ「ボールをつなぐ」と「ボールを大きく蹴っていいよ」の判断基準が難しい。J1レベルの選手ならば適切な判断ができると思いますが、JFLに所属するレベルの選手だと、もう少し明確に型にハマる方法が良かったと思います。

実際、後ろの選手は最善の判断として「ボールを蹴る」。だけど前の選手は「なぜボールをつながない」となる。昨季の試合でずっと起きていた悪循環でした。悪循環を断ち切るため選手間で話し合っても、監督が「いいよいいよ」と言ってしまう。そうなると僕が話す言葉の真実味がなくなってしまう。個人個人が自分勝手なプレーの連続で、連係なんてありはしない。厳しい状況の時に、立ち戻れるやり方があれば良かったと思います。

――小幡くん自身、昨季のプレーはどうだったの?

小幡 僕自身は、いろいろなポジションをやらされました。4バックのサイドバックをやったり、ボランチをやったり、いろいろポジションが変わり、その中でうまくできなかったり、試合にも勝てなかったり、プレーしていて「しんどいな」と思うことがありました。まあ、でも、やるしかないし、試合に勝ちたい。そう思って必死にプレーはしたものの、力が及びませんでした。

全体を変えることがいかに難しいかを痛感したシーズンでした。人の考え方を変えるのは、本当に難しい。一選手が何かを変えるのは難しい。3年前、良い形でシーズンを終え、これからというタイミングだっただけに、本当につらい3年間でした。

――新シーズンに向けて、思うことは?

小幡 新監督(安達亮)も決まってコーチングスタッフも一新されたので、新たな気持ちで望みたいです。なんとしても頑張ります。

――厳しいシーズンを終えて、本当にお疲れさまでした。2021シーズンは期待しています。

川本梅花

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